
何度か松竹新喜劇の舞台で観ています。
この映画と同じく藤山寛美主演で。
上方落語の爆笑王・横紙破りとして有名な初代桂春団治の物語。しかし、実は初代ではなく、二代目なのですが、その名を大看板にしたということで、初代といわれているらしいです。
当代は三代目ですね。
初代とは逆の端正で上品な芸で、かなり好きな落語家さんです。
知らなかったのですが、この原作は本作よりも前に森繁久彌主演で映画化されているようです。こちらも観てみたい。
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さて、岡千秋と都はるみの大ヒットデュエットでも知られる通りの「芸人バカ一代」記
どこまでが史実かは知りませんが。春団治の元祖だめんず物語(w。
劇中には小文枝・染丸など、代替わりをして実在する落語家が出てくるのでややこしいです。
映画冒頭のキャストには《藤山寛美 松竹新喜劇》と書かれているので、追い出される前でしょう。
しかし、松竹勢は出ていないような感じです。
東映専属俳優と吉本新喜劇の俳優がワキを固めます。
藤山直美によると寛美は吉本新喜劇が大好きで、自宅ではモノマネまでしていたそうなので、寛美自身の御名指しかもしれませんね。
藤山寛美と平参平のからみというのも貴重かと思います。
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このお芝居は春団治とお抱え車夫の掛け合い(友情)がかなり見せ場になっています。
舞台では千葉蝶三郎の車夫が有名かもしれません。
ボクの年代では現在もテレビ・映画でも活躍している曾我廼家文童の車夫役が記憶にあります。
春団治とは主従関係で気の弱い役どころですが、この映画では一昨年亡くなった長門裕之が演じています。
いい男ですね。二枚目だ。
春団治の最初のヨメはん役が長門裕之の奥さん南田洋子なので、微妙な空気です。実際は長門裕之自身がだめんずだったようで。
長門裕之演じる「リキ」は春団治に対してはすごく従順なのですが、それは男として認めて惚れているからであって、立場は全くの互角です。
ヘタしたら春団治に手を上げます。
観ていて思ったのですが、どうもデフォルトでアクの強い春団治役の寛美がそれほど目立たないのですね。
途中まで長門裕之の「リキ」が持って行ってます。
シャイなお芝居がホントにかっこいいです。
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生誕百年の織田作之助原作で辰巳柳太郎主演の名画「わが町」でも、明るく可憐な大阪娘を演じていた南田洋子ですが、本作では一皮むけた姉(ねえ)さんを演じています。
で、可憐さは初々しい富司純子が担当。
田中春男の劇場主ははまり役。ほんと、この人ミスター大阪ですね。若い時の写真を見るとめっちゃ男前なんですけど。今回、役名「エビス」なので大きな耳たぶをつけてます。
東映京都作品なので、ネイティブ俳優には事欠かない。
京都に住んでいる富司純子のご近所さんのおかみさんは一言だけのセリフですが、微妙に京都弁。
あと、遠藤太津朗・山城新伍の京都勢もイイカンジです。
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しかし。
結果、このストーリーってこんなにひどかったかな、という印象です。
もお、クズとしか言い様がない。
遊びは芸の肥やしとは言いますが、やってることがちょっとひどすぎて看過できません。
それを諌めるのが長門裕之の「リキ」でラストはあの有名なシーンなのですが、全然バチが当たったとかないし。
それなりに幸せな一生で、周りの女子供が辛酸を舐めまくる。
「憎めない」的な感想の人もいるみたいですが、結構シャレにならない所業ですよ。
どうも、釈然としませんね。
それとラストシーン。
上記のように舞台と一緒。
演出が舞台用そのままなのですが、もう少し映画用に練った方が良かったように思います。