関西以外の人(在阪歴長くても)に言っても、特に女性にはマッタク通じない。
単に風俗街と言ってしまうと、タダのハコモノとは明らかに一線を画するし。やはり一言で言い表すとすれば「遊郭」と言わざるを得ない。
そうすると、大方の反応は「えー、現代日本に遊郭なんてあるわけない」というような感じになる。
しかしあるのだ。
道頓堀・新世界あたりはかなり「観光用大阪」になってるけど、新世界から程近いこちらは観光マップには載ってないし、ましてやキャラクターなんかもない。
本書で知ったが、公式サイトに類するものも全く作らないらしい。
その他の風俗はかなり充実したサイトを作ったり宣伝に務めてるけどね。
そんな女人禁制(というのも変だが)の禁断の場所に、12年もフィールドワークを行った力作です。
いつも思うんだけど、こういう取材とかって良い加減な所で発表しないと、先を越される恐れもあると思うんですけどね。
男でも冷やかしだけでは行きにくい所。
実際、かなり筆者も罵倒されたり怖い目にもあったとのこと。
同性から好奇の目(?)で見られるオネエサンの立場も当然理解して臨んでいるとは思うんだけど、最初から最後まで作者のジレンマを感じる。
売買春は当然違法であり、いけないこと。
しかし、必要悪(敢えてこの場ではこのように書くが)としての存在も安易には否定できない。
本書の冒頭ははフェミニストの感情論がにじみ出るような書き出しなので若干「ん?そういう切り口か?」と鼻白んでしまったのであるが、読み進めていくとそのような皮相的な調査ではないことがわかってくる。
多分、平松前大阪市長の仕業だったと思うが、大阪のその手の案内所で一切案内をしなくなってしまった。キャバクラレベルのご案内。
て、言っても、案内所の中のパソコンで検索できると思うんだが。
そんな中途半端な規制をしてどうなるというのか。どういうビジョンで規制するつもりなのか。
管理もせずに規制だけかけるとどうなるのか、思い至らんのだろうか。
当然、裏風俗として地下に潜り、オネエチャンたちが犯罪被害に巻き込まれる可能性が高くなる。
事実に本書のレポートとしてホテヘルで怖い目にあって飛田に鞍替えしたという内容も出てくる。
人類最古の職業とも言われる買春そのものが、そう簡単に廃絶できるわけもなかろうに。
しかし、だからと言って飛田(松島も今里もだが)に問題がないかというと、おおありである。
未だに人身売買の温床になっている側面もなくはない。
その反面、性産業として自発的にポジティブに働いてるオネエサンたちも少なからずいるようだ。
飛田のオネエサンたちになんとか取材を行うのだが、ほんの数人なので、サンプルとしては少なすぎる。
学歴や生まれ育った境遇面で大きくディスアドバンテージを付けられている子達が多いという書き方。
本当のところはわからない。
変な喩えだが、本書はまずいサンドイッチみたい。
3分割すると、真ん中が飛田の歴史が数字などを交えて淡々と書かれている。
本来はこれも面白い内容ではあるのが、それを挟む現在のレポートである前後の内容が面白すぎる。
筆者はボクと同じ豊中市の北部に住んでいると書いている。
駅で言うと桃山台。大阪北部のかなりお上品なところである。
そこから大阪南端の飛田まで通い続けたらしい。
事実なんだから仕方ないけど、どうしても上からになってしまいそうなポジショニングである。事実そのような描写も出てくる。
しかし、そうならないのも作者の人徳か。
なんだか普通のオバちゃんm(_ _)mがドキドキ腰が引けながら取材しているのが手に取るようにわかる。
すぐにぺこぺこ謝るしw。
言いたいことはあるけど、ここは頭下げといた方がいいよな・・・的な。
その割には飛田料亭組合とか、ジャーナリストとかを受け入れないややこしそうなところに食いついて行ったり、なんのコネもなく暴力団事務所に突撃かけたり\(◎o◎)/!、命知らずというか凄い行動力。
本当にページをめくると飛田の空気があふれだすような力作。
飛田新地という遊郭がどうなっていくべきなのか。知っている人も知らない人も、読者がそれぞれ考えていける内容です。
1 thought on “読書レビュー:さいごの色街 飛田”