
東映空手映画路線(ほぼ千葉真一のためのジャンル)で、このような一本があったのを最近知り、探していたらGyaOで見つけました。
GyaOは画面が小さくてイマイチなんですが、割りと濃い映画を揃えているので妥協せざるを得ません。多分この映画はソフト化されていないみたいなので。
合気道開祖・植芝盛平の若いころを描いてるのですが、あくまでもモデルにしているということで、「この物語は史実を素材とした、創作である」との但し書きがあります。
グラップラー刃牙等で有名になった塩田剛三の養神館とは別のメジャー系合気会がバックアップしてるんですが、この映画の内容ではさすがに現在では広告にもできないでしょう。
映画そのものがだめなのではなく、あまりにも合気道の技術からは乖離してしまってるので。この頃の「カラテ」ブームの中にあっては仕方ないと思われます。
極真のマス大山を演じ、少林寺拳法創始者・宗道臣を演じ、さすがにネタ切れになってきたのでしょうか。
今回、主役の植芝盛平を演じるのは千葉真一の実弟千葉治郎(矢吹二朗)です。
仮面ライダーの相棒的存在のFBI捜査官(!)滝和也でおなじみです。
千葉治郎は、この映画からしばらくして引退してしまったようですが、残念です。
結構イイカンジだったんですけどねえ。この映画でも。
しかもお化け番組「仮面ライダー」のレギュラー共演者ですから、認知度も相当なもんだったと思われます。
☆☆☆
今回の主役である植芝盛平は小柄なことで有名です。
さすがに筋トレガンガン派の千葉真一では無理がある。そんな感じで千葉治郎にお鉢が回ってきたのでしょうか。
でも、やっぱり千葉治郎だけでは弱いと思ったのか、ライバル役で千葉真一が出てくるんですよね。
そりゃあ、千葉真一が出てくれば、千葉治郎は霞んじゃいますわ。
ただでさえ、千葉真一アメリカンっていう感じなのに。
なんとかチバちゃんも弟に花を持たそうとは思ったんでしょうが、文字通り役者が違うので。
盛平達が北海道の開拓を行いながら、武道修行に励んでいるところから始まります。
最初の方で千葉治郎が弟子を相手に稽古をするのですが、なんとか関節決めて投げたり、合気道的なムーブは見せますが、それ以降はなんだかわからん、結局カラテ?みたいな感じになってきます。
最も、タイトルでは「合気道」となってますが、まだ肝心の「合気道」が確立されるまえのお話なので、仕方ないかな。あくまでも、モデルにしたフィクションですし。
しかし、ストーリー自体はこの手のプログラムピクチャーの中ではよくできてます。凝ってます。
あきらかなヒール対ベビーフェイスではなく、いろいろとどんでん返しが用意されてます。
最初はわからなかったのですが、なんか守銭奴の嫌なやつな空手の先生が出てきます。
これを演じるのが本当に大きな空手団体を率いる鈴木正文という人。
あまりの肥満短躯でわからなかったのですが、植芝盛平の師の武田惣角を演じていたのです。
本業は空手家(法律家でもあるらしい)なんですが、ネイティブの東北弁で、それはそれでふさわしい配役なのかも知れません。
その他にもライバルの薩摩の剣術家を演じている人も、本業は武道家です。
しかし、ふたりとも、俳優でもあるらしく、非常に達者な演技を見せてくれます。
あれ、東映にこんな俳優いたっけかな、と思わせるような。
あと、特筆すべきなのは、金田龍之介演じる大本教中興の祖、出口王仁三郎。
今はそれほどではないでしょうが、この時代の大本教と言えば隆盛を誇り、国家からもおそれらた宗教団体。
決して出口王仁三郎に金田龍之介が似ているわけではないのですが、よくぞ演じたキャスティングした、という感じです。
金田龍之介、本作ではちょいと出ですが、存在感はさすがです。
若い植芝盛平の精神的支柱という役柄が非常に説得力あります。
そして、東映悪役に欠かせない汐路章。
オーバーアクト気味の演技で入れ歯外して老け役チャレンジ。孫娘の志穂美悦子を引き連れて。
仁義なき戦いの広能の恩師役より老けてます。
その正体は・・・・・・・。どっちみち、悦っちゃん同様、ストーリーにはそれほど絡みません。
さらにその志穂美悦子に至っては、とりあえず出しとけみたいな感じですね。
このジャンルで悦っちゃん出しとかないとおさまらんだろう、みたいな。
ラストは当然、治郎・真一の兄弟対決。
映画の最初で治郎は兄にボコられてるので、さて、どれくらい修行の成果が出たか。
相変わらず、合気道は出て来ませんが、仮面ライダーのお約束採石場みたいな所でラストの立ち回り。
当然主役なんで治郎は勝たないといけません。さてどうやって無理なく勝たそうか。
兄貴は強いぞー。