読書レビュー:「路地の子」 「路地」とは・・・


著者 : 上原善広
新潮社
発売日 : 2017-06-16
本書の「路地」とは被差別部落を指す。
著者は被差別部落の出身者であることを公言し、多くの路地を題材とした作品を著している。

主人公は著者の父であり、物語の中盤から主人公の三男である著者も名前が出てくる。

導入部の屠畜の詳細な描写は読者を選ぶかもしれない。

舞台は羽曳野市など、大阪のどちらかというと南部に近いところである。

ボク自身は大阪北部で生まれ育っているが、やはり、西日本は大規模な被差別部落が多く、大なり小なり身近に感じることは度々あった。

中でも、かつてボクの自宅の近くに市場があり、隣接して大きな精肉店とういよりは精肉工場があった。その入り口には巨大な肉牛を縦に二つに断ち割った枝肉がいくつも吊るしてあった。
その近くでは牛の大きな骨を野良犬が取り合っていたりした。

それを奇異にも思わず日常的に見ながら登下校していた思い出がある。

近くには地名からそれと分かる地区もあったが、関係はわからない。

登場人物は戦中戦後を生きた世代から主人公のように高度経済成長期から今日までの食肉業界の内幕を裏社会とのしがらみを交えて展開していく。

ノンフィクションではあるが、まるで花登筐の描く物語のように見事にドラマチックに展開して行く。
又、時代背景が未整備な行政と同和問題(利権)が絡み合った戦後からの闇社会なので、まさに仁義なき戦いの同和版と言える。

特に後半は同和・暴力団・右翼が利権を巡って複雑に絡み合い、銭儲けの才覚だけはあるが狂犬のよう(作中では何度も気違いと言われている)な主人公や、一人任侠路線を貫くヒロイックな脇役なども登場して盛り上がりを見せる。

とてもフィクションとは思えない展開ではある。
あとがきの中でも、著者は自分の父親に取材している時に誇張しているのではと思ったらしいが、むしろ控えめに物語っているらしいことを語っている。

主人公にはほぼ感情移入することはできないが、自分にはまったくない人格であり、ある意味魅力的でもある。

また、あとがきでも書かれているが、著者もずっと自分の父親を忌避しつつ、実は愛しており、同様な道をたどってきたとのこと。
佳品ではあるが、今のところ著者にもシンパシーを感じることはできない。

✳︎実はこの主人公に似た食肉会社のたたき上げ社長を知っているのだが、リアルすぎてこの文章に書くことが憚られる。


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