「カトウワタルの本棚」カテゴリーアーカイブ

読書レビュー:殺人鬼フジコの衝動 限定版 【徳間文庫】


ジャンルでいうというとミステリーなのでしょうが、いわゆる推理小説というものではありません。

作者は後味の悪い小説を書くということでは定評があるとのことですが、後味というよりは冒頭からずっと気分の悪い題材とディテールでした。
にもかかわらず、読み進んでしまうというのは作者の技量と言って良いと思います。
嫌なんだけど。

時代設定が昭和ですが、発行部数からして若年層読者ターゲットにはそれほど問題ないようです。少なくともボクには違和感はありませんでした。

特に女と子供のエグい部分を濾過してみせるように描き出しています。一方男はエグいと言うよりはひたすらセコく情けない部分を。
性善説など鼻で笑い飛ばしています。

ホントになんでこんな小説を読み続けているんだろうと思いつつラストへ。

週末近くになると物語の進行が転調し、狂ったジェットコースターのように加速度を増します。

そしてエンディングへ。

読書レビュー:バーという嗜み


漫画「BAR レモンハート」のチーフバーテンダーを務めていた著者のエッセイのような入門書のような著作。

一つ一つの章が短く、長さもバラバラであり、いかにもプロのライターの手によるものではないという感じ。
しかし、文章表現などは上手く読みやすい。ある程度添削などはされているのかもしれないが。

さまざまな知識は本物で、おそらくはほんの小出しにしている程度なのだろう。
是非著者の手によるカクテルなどを味わってみたいという気になる。

カクテルやウイスキー等の酒だけではなく、シガーや凝ったフードもコンパクトに濃密にまとめてあり、この一冊でまさにオーセンティックなBARにいる気分にさせてくれる。

読書レビュー:コップのフチ子のつくり方


「コップのフチ子」も「ココは俺が食い止める、お前は先に行くニャー」もインパクトは結構あった記憶があります。

購入するまでには至りませんでしたが。

単純に販売していたならば買ったかも知れませんが、逆にガチャガチャだったから二の足を踏んだのかもしれません。

購入に遊びの要素があるということ自体、変に大人であると照れてしまう、恥ずかしいという感覚が出てきます。

それらの商品の軽さ同様、いい意味で軽くスカスカな構成です。

筆者はこれらのガチャガチャの仕掛け人である、奇譚クラブ社長の古屋大貴さん。

やはり、本書執筆時現在社員10名の会社です。もっと大人数であった時もあるそうなのですが、10名というのがベストであるという考えがあるそうです。

それは京セラの稲盛和夫さんの提唱する「アメーバ経営」に通ずるものがあるのでしょうか。

最も奇譚クラブの場合は単細胞生物止まりを良しする傾向のようですが。

思った通り、この会社は慰安旅行に学生服とセーラー服着用のようなぶっ飛んだ楽しい会社のようです。
Googleの福利厚生を思い出しますが、さりとて勿論楽しいだけで会社は成り立ちません。
楽しさの分だけ厳しさもあるのでしょう。その証拠に社員は独立を含め、入れ替わっています。安定感は犠牲にしています。

本書の最後に、この本はアイデアの出し方よりもそのベースとなる組織論にウエイトを置いて書かれた、という説明がありました。

真剣に遊んでいる大人たちには憧れます。

読書レビュー:未来ちゃん


※佐渡ヶ島に暮らす幼女、未来ちゃんの日常の写真集。
写真集なので、読書というのもおかしいですが。

著者 : 川島小鳥
ナナロク社
発売日 : 2011-03-22
表紙にやられますね。
つぶらな瞳にふっといまゆげ。お約束の鼻たらし。

撮れそうで撮れない日常の連続をよくここまで集めたものです。

あえて笑顔が殆どないのですが(少しあざといか)、そこはかとない可愛さに充たされ、癒されます。

読書レビュー:日本懐かし自販機大全


以前からYouTubeでよく観ていました。

ミュージシャンでもあり映像クリエイター・ウェブデザイナーでもある作者の、レア自販機サイト。
YouTubeはオリジナルのギターもすごく良いのです。

自分としては、富士電機の天ぷらうどん自販機がひたすら懐かしい。

自販機の神としてネットにも度々出てくる田中さんを大フィーチャー。ネットで観る以上の発見はありませんが、丁寧に作られた良い本です。

YouTubeサイトはこちら  http://bit.ly/1NjbtFE
オリジナルサイトはこちら  http://jihanki.michikusa.jp/

読書レビュー:古都


一応、郷土の超有名人なので常に意識はしていましたが、これまでに読んだのは
「伊豆の踊子」「雪国」くらいのもので、それもはるか昔のことでした。 続きを読む 読書レビュー:古都

読書レビュー:あかんやつら 東映京都撮影所血風録


力作です。10年以上の取材に基づき、日本映画愛・時代劇愛・東映愛にあふれています。
清濁併せのむというか、ほとんど濁ってる感の東映映画ですが、松竹はじめ、他社もえげつない歴史があったようですね。
「東映京都撮影所血風録」という副題はえらい大げさだなあと思っていたのですが、読みすすめると決して大げさではないと思えてきます。

大川博、岡田茂と言った東映の歴史を作っていった人たちは、とかくダーティなイメージを持ちがちだったのですが、特に岡田茂にという人については、新たな認識を持つことができました。

スター達の伝説については、これまでにあちこちでエピソードが語られてきているのですが、わりと初見のものもあり新鮮でした。
そして、スターの影に隠れることの多かった裏方たちの、それに優るとも劣らない武勇伝の数々も飽きさせません。

牧野省三から始まる東映という会社の流れが、今ひとつ分からなかったのですが、本書では非常にわかりやすく赤裸々に描かれます。

素晴らしい創造も多々ある中、昨今の中韓をパクリだなんだと言ってる人たちにも認識してほしい、どこも一緒だよというようなパクリ体質。バイタリティの発露と一言で片付けられない赤面事。薄々気付いてはいましたが、ここまでだったとは。
「宇宙からのメッセージ」とか、今見てもかなり恥ずかしい映画です。

私は昔一度だけエキストラとして東映京都撮影所に行ったことがあります。
俳優会館で衣装をもらって、ロケバスで京都の山の中に連れて行かれました。
その件の詳細は割愛しますが、その当時は当然時代劇も任侠路線・実録路線も過去の栄光であり、テレビ時代劇がそこそこ作られていた時代です。

しかし、あの独特の雰囲気は忘れられず、はまってしまったら抜け出せない麻薬のような空気を感じたことは覚えています。

東映と言えば、あの泥臭さしかイメージできない世代としては、昨今の良く言えば洗練された、悪く言えばボツ個性的な「相棒」シリーズとかは違和感しか感じません。とても「温泉みみず芸者」を作っていた同じ会社とは・・・。

映画好きはぜひ一読を。電子書籍化と望みます。

読書レビュー:赤目四十八瀧心中未遂


以前、映画になりました。小説としてではなく、まず映画としての認識がありました。

車谷長吉の作品ということは知らなかったのですが。

ただ、彫師役の内田裕也のインパクトだけが残り、なんとなくそういう映画・そういう話なんだなという曖昧な記憶のみでした。

そういう映画というのは、内田裕也がマンモスコングみたいな風貌でそのまま登場しても成り立つ映画っていうこと。

ちなみにずっと「チョウキチ」さんかと思ってたら「チョウキツ」さんだったのですね。奥付にルビがふられてました。

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「赤目四十八瀧」というタイトルからとりあえず一回は奈良が出てくるのだろうと思ってはいました。実際の舞台は殆ど尼崎。あの、ダウンタウンと勝谷誠彦。そして中島らもを輩出した尼崎です。

その中でも尼崎そのものでもなく、個人的にいろいろと思いのある、出屋敷界隈。

ニオイのある小説という感じ。

香りではなく、あくまでもニオイのある小説です。

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最近は西村賢太のアウトロー的私小説が評価されてます。

以前、西村賢太の事を暴力的なつげ義春と形容しましたが、こちらは関西のつげ義春という感じ。

「心中未遂」とタイトルでいきなりネタバレしてる感もありますが、まあ、それほど重要な部分でもありません。

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主人公は明らかに作者であり、非常にわかりやすい私小説。

新聞の人生相談などもやってましたが、なんか必要以上に年寄り臭い言い回しとかが少し引っかかる感じ。

西村賢太といい、最近の私小説はなんか尾籠な描写や性的描写をことさらミクロ且つ生理的に表現することによってリアリティを出そうとしてるのでしょうか。

荒唐無稽だけど、妙にリアルな話ってありますね。どちらかというとそういうものの方が好みではあります。

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登場人物がやたら出てきて、エピソードも沢山。それが全部投げっぱなしジャーマンなので、なんとかして欲しい感じ。それが作者の狙いなのかも知れませんが。

で、この続きはどうなるのよ。

退屈しないで読めましたけど。

読書レビュー:勝ち続ける意志力


 

著者のことは全く知りませんでした。もしかしたら、ゲームの好きな人にはかなり有名なのかもしれません。なにせ、ゲームの世界チャンピオンでギネスブックに載ってるくらいですから。

ボクはゲームの類は全くやらないのですが、(むか〜しに少しだけアーケードゲームをやったことがあるくらい)何故か惹かれて読んでみました。

ゲームとしてのマーケットはもちろん恐ろしい規模になっているということは知っています。

今現在ではスマフォでしょうか。極端に知識がないので、敢えて調べて書くことはしません。

知らないなりにこの本も読んだのですから。

一つには著者がゲーマー⇒雀士⇒介護ヘルパー⇒プロゲーマーという興味深い人生を歩んでいるというところに食いつきました。

福祉介護の経験がなければそれほど魅力には感じなかったかも知れません。

人生、振り幅の大きい方が楽しいですから。


無知なりに、ゲームの世界をわかりやすく読ませてもらいました。

  • ボードゲームのようにマーケットが確立されていない。
  • 多分、バグやコントローラーの不具合にも左右される。
  • ゲームのヴァージョン自体によって、個人的な向き不向きなども左右される。

じゃないの?とかもひっかかったりしました。

おそらく、ボクが想像するよりもはるかに競技ジャンルとしては確率されているのでしょうね。

本書の内容によって、薄々はわかったように思います。


なかなか文章は読みやすいですね。

かなり特殊な職業(除く介護)なのですが、主張はかなり普遍的です。

やってることは最先端?ですが、正確はどちらかというと不器用で古風です。というか、「古風」なのかもしれません。

ゲームを辞め、麻雀を辞め、介護を辞め、現在はプロゲーマー。

なぜそれらを続けることができなくなったのか。どうもその辺りがはっきりと書かれていません。著者ははっきりと書いたつもりなのかもしれませんが、門外漢であるからなのか、ボクがそんなにギリギリの生き方をしたことがないからなのか、結局わからない・納得できないのです。

多分、「イチロー」とかに近いのでしょうね。とことん追い込んで、勝ち続ける。

本来、ゲームは楽しむためにするのであってそれが本分かと思うのですが、著者は気軽にゲームセンターに誘う友人に語ります。「おれにとってゲームは遊びじゃないんだけど」。

世界チャンピオンから抜け殻のようなどんぞこへ。そしてまたギネスブックに載るような人生。

中学生に読ませたいですが・・・それもひとつのギャンブルかもしれない内容です。

読書レビュー:最強のNo.2


著者 : 曽山哲人
ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 : 2013-04-13
サイバーエージェントの人事担当者・役員・ナンバー2が書いた本らしい。

以前読んだ藤田晋氏の本は、本来氏が作家志望であったこともあり?普通にヨメた記憶がある。

本書はレイアウトにメチャメチャ凝っている。

にしては、内容がどうもひたすらマジメで凡庸で・・・。

2/3ほどで、イヤになってやめました。

鱗は瞳に張り付いたままです。