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読書レビュー:知の仕事術


著者 : 池澤夏樹
集英社インターナショナル
発売日 : 2017-01-12
敬愛する(といってもまだまだ良く知らないニワカですが)池澤夏樹さんの仕事術公開本。

SNSの話から始まりますが、ご本人は自身の事を語るなど、こっ恥ずかしくてできないそう。少し前からFacebookをROMっている私も同様です。

ただ、自己の記録として、WordPressによるブログのみは続けて行こうと思っています。それと、そこそこのフォロワーのいるツイッターは。

こういう知的生産の技術書というのは、昔から有名な書籍が何冊も出ています。知の先達たちが後輩のために親切にノウハウを公開してくれているのですね。

でも、わかっちゃいるけどついてけねー。というのが本音のところ。
それができれば苦労はない。継続は(天才)力である・・・と自己弁護で解釈しています。

それでも良いから、格好だけで良いからついていきたい。というので、同様な本にまたもや手を出してしまいます。

そしてもう一つ。基本は実践者の脳髄に帰結するのでしょうが、その時に応じたツールが出てきます。
本書は発行日が読書日と1ヶ月ほどしか違いません。まさに湯気の出ている新刊書でしょうか。なので、現在進行系のツールの解説も適切に行われています。
特筆すべき事として、著者は最初にワープロ原稿で芥川賞を受賞した人。創作のIT化に最初期に取り組んだ人でもあります。現在使用しているデバイスもiPhone6sPlusだったりして、ボクとおんなじ。

でも、あまり具体的に手取り足取りという紹介はありません。執筆にどんなソフトを使っているかとか。まあ、Wordのネタとかは出てきますが。

仮にアプリケーション名を挙げたところで、すぐに淘汰されてしまう(ドッグイヤー)運命ですから。私達自身がそこはさがしていくところでしょう。

最新の技術状況を踏まえつつ、外堀の埋め方をレクチャーしてくれます。
古典の読み方。紙の本と電子書籍の使い分け。等々。

フィールドワークのノウハウはまるでハンティングに行くよう。
で、シンプルイズベストですね。

日々身を削るように仕上げる執筆作業が目に浮かぶようです。膨大な資料を選択し、読破し、必要な部分を抽出し、作品に仕上げていく。産みの苦しみ。

そして脱稿した暁の爽快感・カタルシスは癖になると語っています。

私も掌編で良い(とはなんだ!)ので、創作チャレンジしてみようと思わせてくれる一冊です。

 

映画レビュー:沈黙 サイレンス


沈黙 サイレンス
オフィシャルサイトより加工転載

沈黙 サイレンス ※ネタバレあるかも・・・

かなりヒットしているようです。

2週間ほど前に観ました。

その前に公開されると聞き、原作小説を読んでみました。

私の中学時代には、「どくとるマンボウ」派と「狐狸庵先生」派がいたように思います。

といっても、北杜夫については、中学生時分なので「白きたおやかな峰」や「楡家の人びと」などの純文学は手が届きませんでした。
読んでいたのは、もっぱらどくとるマンボウシリーズその他の滑稽小説。

狐狸庵先生・遠藤周作はネスカフェのCMの印象しかなく、映画化された「海と毒薬」などは気になっていたのですが、全く未読の状態でした。

で、今回始めて狐狸庵先生ではない、遠藤周作の代表作とも言うべき「沈黙」を読んで、打ちのめされたわけです。
はい、こんなに凄い小説家だったんだ。

隠れキリシタンへの迫害については、「青い空」などその他の作品に多数出てきます。

胸のムカつく所業の数々。

為政者にとって、「宗教」は諸刃の剣。コントロール不可能に陥れば、己と己の築きあるいは護るべき既得権が脅かされる存在です。

それは分かるのですが、ローマ皇帝ネロの時代から、なぜここまでキリスト教のみが迫害されるのでしょうか。迫害体質?
キリスト教同志の内紛もありましたが。

大体日本人の宗教観はファジーです。
神と仏をごちゃ混ぜにして、怪しまない。適当。
だからそれほど問題も起きない。
坊主がキャバクラに行っていようと、あまり咎める人もいない。

そこに一神教たる(シャレの通じない)キリスト教が入ってきたもんだから、当然のごとく排斥されるわけです。

この物語の舞台は長崎県。そして五島列島。

行ったことないけど、キリスト教徒の多い土地柄みたいですね。

寅さんが五島に行ったときも、教会が出てきたし。

この映画は原作を読んでから観たほうがいいやつだと思いました。

結構小説を忠実に再現しており、緻密な臭うような描写の原作を体験した方が映画がわかりやすいと思います。

迫害されて食うや食わずの日本人キリシタンは、メイクなどでリアルに汚している部分は多いのですが、なかでも凄いのが塚本晋也の大減量。
アメリカで栄養士についてもらって痩せたそうです。
監督の副業かとも思っていた塚本晋也ですが、俳優としても命削って挑んでます。
映画に掛ける情熱を考えればそれもむべなるかな。
最近、「シンゴジラ」といい、俳優として大活躍ですね。

主役はスパイダーマンのピーター・パーカーを演じたアンドリュー・ガーフィールド。マッチョじゃない派のハリウッドスター。

キーパーソンだけど、あまり出番のないのがリーアム・ニーソン。長い間日本にいて日本名もあるのに、日本語のセリフは一切なしというのもどうなのか。

ほぼ主役に近いポジションにキチジローという貧しい漁師(?)がいます。転びまくっている信者で、演じるのは窪塚洋介。

存在としては、鬼太郎のねずみ男にそっくりです。

原作を読んだイメージとしては、キチジローはもっと貧相で小柄なブ男かと思っていたので、窪塚洋介ってどうよと思ったのですが案外はまっていました。

一瞬しか映らない中村嘉葎雄。エンドロールでやっぱりそうだったかと確認。

それいるか?という帝王・高山善廣。

中村嘉葎雄にセリフがなく、一言だけとは言えセリフのあった高山。

しっかりとした俳優にはセリフがなくても演技をまかせられるということでしょうか。

当然ちゃあ当然なのですが、ヘンな日本描写はない。日本人スタッフの頑張りもすごい。

一箇所だけ気になったシーン。

ハリウッド映画で剣(特に日本刀)を鞘から抜く時。
刀同志を合わせる時はともかく、抜刀・納刀の際にも”シュリーン”という効果音が入ります。
明らかに金属同士がこすれる音。鞘は木製なので、そんな音がなるのはおかしい。
というか、多分無音でしょう。
どうしても効果音を入れたいのでしょうね。一箇所そんなシーンがありました。
・・・よ、マーティン。

アメリカも日本も出演俳優が凄く良いです。

二時間半、まったくダレずに観ることができました。

★★★★★

戸川純LIVE!!


11月16日。少し前ですが、戸川純ちゃんライブにいってきました。ゲルニカ時代から好きだけど、ライブに行くのは初めてでした。
場所はOSAKA AKASO。昔のバナナホールですね。

私はパニック障害で人、の多い狭い空間は全くダメだったのですが、最近は大分とましになってます。

戸川純ったって、今日日はそんなに集客ないだろうと思ってたのですが、豈図らんや、どんどんと入ってきております。
結果、かなり前の方で鑑賞することができました。もちろん、オールスタンディング。

客層は当然結構年齢高めですが、20台前半ぽい女の子なんかも結構いるようです。

余談ですが、LIVEの最終近く、前にいた若い女の子が急に貧血かなにかで倒れて、間一髪後ろから支えました。
その後、大丈夫ということで笑顔もみせてくれてたので一安心です。

登場した純ちゃんは、ネットの噂通り、かなり増量しておりました。
でも、やはり戸川純は戸川純。滑舌の悪さに磨きがかかっているにも関わらず、MCもたっぷり。長州力レベルではあります。

腰も悪くしているらしく(なんとかその情報は聞き取れた)、ほとんど座ったままのパフォーマンスでした。
にも関わらず、オーディエンスを引っ張っていく力はさすがです。

最近の活動はそんなにチェックしていない(あまりない?)ので、知らない曲ばかりかなと思っていたのですが、ゲルニカ時代の曲や昔の楽曲を多く演やってくれたので大満足。
まさかの「眼球綺譚」に始まって「バーバラセクサロイド」「蛹化の女」「諦念プシガンガ」などノリノリでした。

アンコールは「パンク蛹化の女」。
このときだけは純ちゃんもさすがに立ち上がってくるくる回っておりました。
これをやられた日には、満足して帰るしかないですわね。

全体的にお腹一杯になった好ライブなのでありました。

まもなく35周年ライブもあるみたいです。

読書レビュー:~遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白~ 飛田で生きる


飛田新地。最後の遊郭と言われる場所。
橋下さんが顧問弁護士を勤めていたとも言われる。

この地のルポとして、かつてこの本「さいごの色街 飛田」の書評を書いた。

しかし、飛田は取材など基本的に受け入れない。
本当の姿は描かれない。
これだけ海外からの旅行客を受け入れるようになっても、ネット発信なども拒絶している。
中国人客はここでも相変わらず嫌われているようだが。

この秘境とも言うべき飛田新地をなぜここまで具体的に赤裸々に描くことができたかというと、それは著者が元飛田の店舗経営者で、現在も女の子のスカウトマンであるということ。
つまり、昨今攻撃されている飛田の防衛に立ち上がったということ。

飛田遊郭(料亭組合)は、著書によると、厳然としたルールがあり、それに基づいて働く女の子を守っているのだとか。

人類最古の職業であり、どこまでいってもなくならないであろう風俗産業。

大阪府に関しては1990年の花博を機にソープランドが廃止された。

しかし、何故か飛田・松島などの風俗街はそのまま。

本書のあとがきによると、隣区・阿倍野再開発で建築されたタワーマンションの高層階から飛田遊郭が見渡せ、ネットの書き込みなどで悪所として攻撃されているのだとか。
併せて2016年11月現在、2025年に誘致予定の大阪万博開催に伴って、またもや危機に直面しているのかもしれない。

遊郭存続の危機に向けて牽制する意味での本書出版なのかも知れない。というか、当然その意図はあるでしょう。

それらを考え合わせても、よくできた本であると思う。

飛田で遊郭を経営するための段取り(資金など)であったり、女の子確保のノウハウなどが余さず書かれており、遊郭経営入門のような内容でもあります。
良くあるカフェやカレーハウス開業のノウハウ書みたいです。

しかも文章がうまい。私が関西人であるためかも知れないが、リアルな大阪弁でのやり取りもリズムよく進行していき、ダレさせない。

先述の飛田防衛意図があったにしても、悪所ならではの必要性。現在はかつての人身売買的な女郎屋とは一線を画し、働く女の子の将来や人権も考慮した「働く場所」であることを主張している。

勿論、身内や近親者がこのような場所で働くことを黙認できるかというと、確実に無理なので悩ましいところではあるわけであるが、一個の人格を有した成人女性が自らの判断で選択する場所としては存在しても良いのかなとも思う。

少なくとも個人的にはホストクラブにハマるよりは前向きかなと思うし。
と言っても、ホストクラブに入れ込んで、てっとり早く稼ぐために飛田にくる子も多いようだが。

著者は飛田での経験しかないので、他の五新地(松島・今里・滝井・信太山)や、その他かんなみ新地等については触れられていない。
他の新地が飛びたほど整備されているとは聞かない。飛田は段違いに生き残りに貪欲なようだ。

読書レビュー:サムライ 評伝三船敏郎


現在は渡辺謙や浅野忠信など、ハリウッドで活躍している日本人俳優も珍しくなくなってきた。

別にハリウッドを持ち上げなくても良いのだが、やはりマーケットや全体的な制作本数などでは特別な存在として良いだろう。

その中にあって日本映画=サムライという大きなイメージを作り上げたのは三船敏郎だった。

おそらく三船敏郎がいなければニンジャもサムライもこれほど大きなモチーフとはならなかったと思われる。
ケン・ワタナベもラストサムライもショー・コスギもタートルズもミフネが築いた礎に乗っかっている。

この本はほぼ三船敏郎礼賛と言ってもいい内容だ。
著者は松田優作の元妻。才能あふれる才媛だ。元女優でこのような評伝やルポでも良い仕事をされている。

で、女性なのに、三船敏郎の不倫や女性問題にはえらく寛容な筆だ。いいけど。

私などは後期のテレビ時代劇や東映への客演・ハリウッド映画への出演選択など、どうかと思うところもあるのだが、本書ではそれもミフネへの出演オファーウハウハのような書き方しかされていない。
「1941」などは当時愕然として観ていた記憶がある。
逆にやっぱり「STARWARS」には出てほしかったなあと。アナキン役らしいし、そうなったら、その後のシリーズも今とはえらく違ったものになってたでしょう。

最晩年の認知症のくだりは、当時写真週刊誌かなにかで見た記憶もあるが、痛々しい限り。
それを追いかけて誰が得するのでしょう。マスゴミなどといわれても致し方のない所業です。
そういう意味では最後までかっこよかった健さんと文太兄ぃは凄かったですね。

映画レビュー:健さん


健さん
「健さん」映画チラシ

健さん讃歌のドキュメンタリー映画。

ただそれだけ。これがNHKあたりの特番であれば良いのだが、劇場用映画としてはいかがなものか。

私も高倉健は大好きです。でなけりゃ観に行きませんわね。

この映画では高倉健ゆかりの著名人(でない人もいるが)のインタビューで構成されています。
ひたすらインタビューの編集です。たまに高倉健の生前の声も入ります。

私達ファンが雑誌やネットなどで知りうる高倉健像を上回るものではありません。

新たにジョン・ウーやマイケル・ダグラス、マーティン・スコセッシなどの社交辞令的な健さん称揚は若干目新しいですが。

映像としては、「ザ・ヤクザ」と「ブラック・レイン」の二本だけだったと思います。どちらもアメリカ映画ですね。
東映や東宝は許可出なかったのか。使用料としてはハリウッドの方が高いと思うけど。

健さんは勿論「高倉健」を演じていたのです。そんなことは分かっています。
この映画はそれを確認しただけで、それ以上のものはありません。

小田剛一ではない高倉健にだって、批判される部分はあったと思います。
それをこの作品では全く取り上げません。
別にそれはそれで良いでしょうが、物足りないのも事実だし、劇場に足を運ぶだけの価値は感じません。

個人的には多数演じたヤクザ映画の影響等をどう処理していたのか。
山口組のイベントに招かれたこともあったと記憶しています。

「健さん」を映画にするなら、もっとやりようもあったはず。

なぜ、あまり接点のないジョン・ウーなのか。チャン・イーモウは断られたのか。

もう一人、ほぼ時を同じくして亡くなった東映のアイコン菅原文太との対比は。

いろいろと言いたいことは出てきます。

★★

映画レビュー:あなた、その川を渡らないで


あなた、その川を渡らないで
公式サイトより転載

あなた、その川を渡らないで

まあ、そのままの意味なんですけどね。

トレーラーを観て惹きつけられました。

悪い映画ではありません。

90分ほど。これくらいでよかった、という感じ。

夫98歳、妻89歳。ん?なんか映画の中の説明と違うような?ま、いいか。それほど重要な点ではない。

韓国の田舎の超リアルがわかります。と言っても、日本の田舎と殆ど同じですね。

ドキュメンタリーですが、オモニ(ハルモニ)のセリフが殆どです。

まるで台本が用意されているみたいに。

なんだろう。いい映画だとは思うけど、今ひとつ。

半分ほど埋まっている劇場からは最後の方で鼻をすする音がやたら聞こえましたが。

私はどうも。

ドキュメンタリーに対して作為的などというのは失礼にもあたるのですが、この主人公(オモニ)がこのように雄弁でなければ、この映画はどうなっていたのか。
違う切り口にはなったのでしょうが、その点気になります。

★★★

映画レビュー:シン・ゴジラ 是非劇場で!


シン・ゴジラ
シン・ゴジラ

シン・ゴジラ の「シン」が何かはわからないけど。

これは凄い映画です。

すんません、庵野秀明監督ナメてました。脱帽です。

初のフルCGIゴジラですが、確実にハリウッドGODZILLAを凌駕しました。
これがゴジラなら。
いやゴジラです、やはり。
渡辺謙もこちらに出たかったのでは。

何を書いてもネタバレになりそうなので、言葉少なに宣伝します。
本作はネタバレが流布される前に観るべきです。
いろいろな面で。

しかし、出ている俳優の数が凄い。
今の邦画に出まくっている有名所も数多く出ていますが、これは誰?という人もそれ以上に出ていて、緊迫感のある名演技を魅せています。

石原さとみは好きだけど、ギリギリのラインで頑張っていました。

印象に残った無名の人では自衛隊員を演じてた人。どこから見ても自衛隊の人にしか見えません。これはむしろキャスティングの妙か。

二発目のトレーラーの最後にいかにも放射能火炎を吐く素振りのゴジラですが・・・これがすごいです。
これまでの伊福部昭をはじめとする曲も効果的に使われていて、血沸き肉踊ります。

どこを切り取っても凄い。凄いです。

凄いとしか書いてない己の文才のなさよ。

エヴァンゲリオンを観てませんが、同じようなBGM(ティンパニーのドンドンドンドンみたいな)が使われているので、多分絵的演出的にもエヴァンゲリオンに近いのでしょう。

セリフの量がすごくて、みんな早口。登場人物が基本、閣僚・政治家・自衛隊。
一般人が出てこない。
その登場人物達が一刻の猶予も出来ない状況下なので勢い早口+テクニカルターム。
多分中学生以下が話しの流れを理解するのは難しいでしょう。
完全に大人向けの怪獣映画。

庵野監督の初代ゴジラに対する敬意がヒシヒシと伝わってきます。
1954⇒2016。
これだけの時間が経過しているのだから、これくらいのアンサーは必要でしょう。

それに加えて、東日本大震災をはじめとする災害の実態を映像で嫌というほど見ている自分たちにはもっとその部分に時間を割いても良いようには思いました。

これ以上は今は書かないので、是非観に行ってください。

エンドロールの最後まで緊張感を途切れさせずに観た映画は久しぶりです。

★★★★★

映画レビュー:エクスマキナ


エクスマキナ
エクスマキナ公式サイトより部分転載

突然時間が空き、映画を観に行こうかと思った時、なぜか頭に閃いたのがこの映画でした。
なんか、トレーラーが印象に残っていた感じです。

開始からしばらく、こんなに眠くなったのは初めてかもしれない。

つかみもなく、抑揚もない展開に耐え切れず(体調の悪さも多少はあるけれど)何度か眠ってしまった瞬間のある自分にこの映画をとやかく言う資格はないかもしれない。
逆に言えば眠らせたのはこの映画でもあるんだけど。
いろんな賞も獲ったりノミネートされたりしてるし、映像は超キレイだし、佳作であるとは思います。

テーマは非常にわかりやすく、「2001年宇宙の旅」を彷彿とさせます。

登場人物が極端に少ない映画でもあり、メインに登場するのは3人だけ。

そのうちの一人、巨大検索エンジンシステム「ブルーブック」の創業社長ネイサン。ブルーブックは明らかにGoogleがモデルであろうけれど、この社長はラリー・ペイジでもセルゲイ・ブリンでもない、と思う。
彼の暮らすのはものすごく広大な大自然の中。スマフォの圏外。業務を考えると若干矛盾してなくもない。

そしてもう一人の「人間」がブルーブックで働くプログラマであるケイレブ。多くの社員の中から特に選ばれて、ネイサンの隠棲の場所に招かれます。

と、モウヒトリ、ネイサンの作り上げたアンドロイドの女子エイヴァ。エイヴァはつまり創世記のイブのことなんでしょうね。

世界中の情報を統合するシステムを作り上げたネイサンがその次に着手したのが、AIの開発。
そのAIを組み込まれたのがエイヴァをはじめとするアンドロイド達。(そういえばGoogleのキャラクターはドロイド君ですね)

巨大強力になった検索エンジンの危険性は日頃Googleに依存してしまっている自分も、常に心の何処かにはありました。
このところ話題になっている(まったくどんなもんか知らないけど)ポケモンGOもGoogleのデータに依存しているそうな。
中国などはめちゃめちゃビビっているみたいなので、この映画は非常にタイムリーであります。

世界中の情報をクラックしてさらにそれをAIに組み込むところがSFのSFたるところ。
クラッキングだけであればビジュアル的に面白みにかけるかもしれない。

そう、ビジュアルは一見の価値あり。

あと、これはやはりDVDでは多分すぐに挫折していたと思います。
BGMというか音響がすごい。これも「2001年宇宙の旅」へのオマージュなのかも知れません。

ちなみに「エクスマキナ」の意味はこちらを御覧ください。

★★★★☆

読書レビュー:トイレの話をしよう 〜世界65億人が抱える大問題


昔、「トイレット博士」というマンガがありました。当時はありえない下品なマンガだと思っていたのですが・・・。今考えると、あそこまで糞便に向き合えるって凄いことだし、貴重なことですね。

さて、本書の著者は英国の女性ジャーナリストです。表紙折り返しの著者近影で見る限り、結構チャーミングな女性です。この人がこの内容を・・・。ジャーナリストってアドベンチャーですね。

ボクは小さい頃から祖母に大阪弁?で「かんしょやみ(癇性病み)」と言われていました。標準語では潔癖症と言えばいいのでしょうか。

今も治らず(というか、本人はそれが普通だと思っている)電車のつり革を持たない派です。

そんな自分ですが、最も忌むべき場所であるトイレ・便所から目を背けたくないという二律背反(どちらにも価値がある)した価値観を持っています。

まず最初の章に出てくるのが我が国日本のウォシュレット(TOTO)・ハイテクトイレ。この章を読んで、あれ、この本は日本向けなのかな、と思ってしまいました。

しかし、これは後の章に出てくる便所後進国?と対比させるためのトイレの技術としてのレポートです。

良くネット等では訪日外国人の感想として、日本ハイテクトイレが取り上げられますし、近年の中国人爆買いの目玉商品としてハイテク便座があります。
一方、ハイテクトイレがアメリカに受け入れられていないのは、アメリカ人がそれを必要を感じていないという、非常にシンプルな答えが書かれています。

しかし、どちらにしてもそれは下水処理の入り口でしかありません。その先に高度な下水処理の仕組みがあるのです。
その点まで思い至らない自分を発見しています。
それが第二章です。

筆者自ら英国の下水道に降りていきます。映画「第三の男」を始めとし、良く見かけるシーンです。タートルズも下水道に住んでたんだっけ。

良く、台風や大雨で冠水するとマンホールから水が吹き出たりして、下水が溢れます。昔は汲み取り式の便所が大半でもあり、それって汚いよなあと、漠然と思っていました。
しかし、この本によると、通常下水に含まれる屎尿の割合は全体の2%程度なのだそうです。つまり、大量の雨水が流れ込んでくると、その割合はさらに低くなります。
でないと、映画のワンシーンで下水の中をバシャバシャ走るなんて嫌ですよね。

それ以降の章ではトイレ未開発の地域に多く紙数を割いています。

インド・中国・アフリカ諸国

映画「スラムドッグ・ミリオネア」の冒頭のシーンで、スラムの少年が公衆便所に閉じ込められ、肥桶の中に飛び込んで便所から脱出するという見たくないシーンがありました。

しかし、現実にはトイレが「有る」という状態すら少ないのだそうです。

インドを始めアフリカ諸国には下水どころか(上水道もないんだから当然ですよね)トイレそのものがない。存在しない。つまり全員野糞。

これが感染症の温床となり、慢性的に病気を引き起こし、経済活動に大打撃を与えていると報告します。
人類の絶対数ががもっともっと少なかった時代にはこれでもよかったのです(多分)。お天道さんが乾かしてくれました。

これは日本でも同じです。汲み取り式にしろ、水洗式にしろ、古来よりなんらかの設備があったから生活が送れていたのです。
トイレは本当に不可欠なものであるということが再認識されます。

これは経済発展を遂げている中国にも未だにあることで、経済特区以外の内陸部などでは改善すべき場所が多々あるようです。

スカートを履いた女性の身でありながら、描写したくない状態で取材を続けている筆者を尊敬します。

伊達や酔狂でできることではありません。これは目を背けず、世界的問題として、もっとクローズアップされるべきジャンルだと思います。

かと言って、これを映像化できるかというと、あまりにも厳しい。お茶の間に届けるにも十分に配慮を要する話題でしょう。

この問題は小中学校で取り上げるべきで、この本はそのテキストに最適かと思います。