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映画レビュー :「ヴィクトリア女王 最期の秘密」 女王、名演だと思います。


ヴィクトリア女王 最期の秘密
オフィシャルサイトより加工転載

格式に囚われ周りに心を閉ざした頑固で高齢な女王が、純粋で明るい異邦人(低身分で被差別側)に心を開く。
基本プロットからしてそそられる映画です。

これが全くのフィクションならば、ちょっと観てられない展開なのですが、一応、史実をベースにしているということで。

英国女王と植民地化されたインドの青年という関係です。

植民地化されたインドの下層階級の青年が80歳を過ぎた英国女王に記念品を持ってくる大役を任されます。
その席でで女王はこの背の高いハンサムなインド人(アブドゥル)を痛く気に入ります。
極端に気に入り、周りの困惑も構わずどんどんと出世をさせ、自信の師としてヒンディー語を熱心に教わったりします。

それらの寵愛の数々ががあまりに極端で露骨なので、リアリティに欠ける嫌いがあったりもするのですが、そこがノンフィクションの強み。
ヴィクトリア女王はわがままな権力者であったのだと納得せざるを得なくなります。

それに答える如く、件のインド青年は益々女王に対する純朴な忠誠心をつのらせていきます。

インド人的にはOKなのでしょうか。

これがもし日中韓の関係であれば、ブーイングの嵐になりそうな気がするのですが。

いくら権力者の覚えめでたいポジションを手に入れたと言っても、双方は戦争により、多大な犠牲者を出しています。
まして、青年は女王の側近たちからは未開の野蛮人のように思われ、周りからは嫉妬と差別と憎しみをもって接せられているのです。


さて、最終的に女王はインド青年に「ナイト」の称号を与えようとします。
さすがに驚いた側近たちは、なんとか女王に思いとどまらせようとクーデターに近い行動を起こします。

ここからがクライマックス。

気になったのが「最期の秘密」というタイトル。
「最後」ではなく「最期」です。最晩年ということでしょう。
「秘密」とは何を表しているのか。
80歳を過ぎたヴィクトリア女王は、異邦人の青年アヴドゥルに恋をしていたのでしょうか。それはなくとも、異性に対しての好意は強くもっていたでしょう。
しかし、「最期の秘密」とはそれだけでもないように思います。

是非、映画を観て考えてみてください。

★★★☆☆

映画レビュー:「バジュランギおじさんと、小さな迷子」 ひたすらかわいい!


バジュランギおじさんと、小さな迷子
オフィシャルサイトより加工転載

ここのところ、インド映画を観る確率が高い。
別に故意に選んでいるわけではないのですが、公開されるラインナップに惹かれる作品が多いのだと思う。

しかし、「バーフバリ」「ガンジスに還る」と必ずしも満足度の高いものではありませんでした。

今回は当たりです。

不勉強で内容をよく知らないのですが印パ戦争を下敷きにしています。
非常に根の深い深刻な内容をお馬鹿なコメディに仕立て上げた快作です。

さらにロードムービーの要素もあります。

しかし、なんと言ってもこの映画の主役はムンニー(シャヒーダー)を演じた子役の可愛さ。もう、奇跡の可愛さです。
特に唖者を演じており、肯定を伝える際の手を上げて何度も頷くところが最高に可愛い!
よく、子供と動物には勝てないと俳優が言いますが、そのとおりですね。


インド(ヒンドゥー)・パキスタン(イスラム)の宗教対立。
そしてインドの根深いカースト制度。貧困問題。

これらを包括して、物語は進みます。

しかし、そこはインド映画なんで、随所に歌と踊りが盛大に繰り広げられます。
この内容でそれは必要なのかな?ま、必要なんでしょう。インド映画だし。

関係ない話。
前から思ってるんですが、マサラムービーって、昔の市川右太衛門の「旗本退屈男」のシリーズに似てますね。とことんエンタメで歌と踊りがあって、細かいことは気にしないご都合主義ってところが。


お話は、

喋れない障害を治してもらえるよう祈るため、パキスタンから母親とインドに来た6歳の少女がインドの国境で母親とはぐれしまいます。

そしてインドの正直だけが取り柄の青年と出会い、青年は少女をなんとかしてパキスタンの親元に返してやろうと二人で旅に出ます。
途中、これも正義感の強いTVレポーターの青年との三人旅になり、珍道中を繰り広げつつ・・。

最後はやっぱりそうくるかという感動のフィナーレです。

2時間半を超える映画ですが、飽きさせず惹きつける展開演出と絵力は素晴らしく、観客も選びません。

★★★★★

映画レビュー:「宵闇真珠」  きれいな映画


宵闇真珠
オフィシャルサイトより加工転載

よくわからず、オダギリジョーが好きなので観に行きました。

ファンタジーですね。

いろいろとリアリティがないので。
きれいきれいな映画です。

どこかで観た映像だと思っていたら、ジェット・リー主演の佳作「海洋天堂」で撮影監督をしたクリストファー・ドイルが監督と撮影監督を兼ねていたのでした。

舞台は香港ですが、よく出てくる超高層ビルやジャンクなどは出てきません。
香港のどこかにある寂しい漁村で起こるお話。

なんの説明もなく旅人であるオダギリジョーが現れて、生活感のない色の白い美少女と交流します。この美少女は今どき日光に当たると死んじゃうとかいうのを信じてて、日が暮れてからしか屋外に出ない。

だから「宵闇真珠」。
原題は「白色女孩」。
英題が「THE WHITE GIRL」。そのままですね。
それを考えると邦題は良く出来てる。

物語としてはさしたる盛り上がりもないまま淡々と進んでいきます。

最後にはありがちな、取ってつけたような事件も起こるのですが・・・。

オダギリジョーと白い美少女アンジェラ・ユンと情景をひたすら愛でるのなら、それはそれで良い映画かもしれません。

*それとオダギリジョーのダウンコートの着こなしが格好良かった。もちろんオダギリジョーだからだけど。
あんなペラペラのロングスリーブTシャツにでかいダウンコートなんて着ることないでしょうが。

★★★☆☆

映画レビュー:アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング


アイ・フィール・プリティ
公式サイトより加工転載

トレイラーを観てそそられました。

これを日本でリメイクするなら、主役は渡辺直美だよなあ、と漠然と思ってたら日本語吹き替え版はやっぱり渡辺直美でした。

非常にありがちなプロットです。
なので、どう演出してくれるのかなあと、ちょっと期待。

容姿に全く自身がもてない主人公が突然絶世の美女に。
特殊メイクやCGIを使って見せることもできたでしょうが、本作ではそういう演出はありません。
言わば観客の想像力にまかせています。ここが一番のポイントでしょうか。
トレーラーにも出てきますので書きますが、実は美女に変身したというのは本人だけの思い込みで本当は何も変わっていない。

まあ、非常にアメリカ映画的にまとまっていました。

一見なんの欠点もなさそうな美女・セレブたちも実はコンプレックスの塊だというのがポイントなのですが、いまいち陳腐でこころに響かない。
そのまとめがラストシーンの演説に収斂されるのですが、これがまた陳腐。
アメリカ的にはこれがいいんでしょうね、みたいな。
ちょっと納得できないかな。

それ以外はリラックスして楽しめる映画でした。

★★★☆☆
なにか・・・そう、昔の東宝喜劇「無責任男」の成功譚みたいに感じました!

読書レビュー:「ITビッグ4の描く未来」


非常にまとまっていると思いました。
所謂ITビッグ4とはGAFAのことなのですが、その呼称は出てきません。
ここのところ、新聞各紙等で見ない日はないバズワードですが。
初版が2017年中盤なのですが、まだその呼び方はなかったのでしょうか。
プラットフォーマーという呼称も登場しません。

しかし、2018年の終わりに読んでも、見晴らしの良いまとめです。

日々関わるプラットフォーマーGAFAのうち、ボクはFacebookだけは数年前に決別しました。何か違和感を持ったからだと記憶しています。
結果、昨今Facebookの個人情報漏洩が喧しく言われるようになったので、結果オーライだったかもしれません。

使っていないFacebookですが、正直他のプラットフォーマーと比べて、その収益方法がピンときませんでした。
傘下のインスタグラムも含めて、PPC広告枠を提供しているだけでしょ、という認識しかなかったので。
しかし、問題はその規模でした。
Facebookが14億人、インスタグラムが10億人のユーザ数。単純にその数だけでもすごいですね。
そして個々のFacebookページの濃密さが強みなのでしょう。

今日の新聞で、GAFAを始めとするプラットフォーマーにIT税を課する案が現実味を帯びて報じられました。
なんだか、企業努力によって開発された発泡酒に安易に税加算する手法みたいに感じます。

外と交わらず、国内で完結する中国のプラットフォーマーは涼しい顔です。
今後、米中のIT競争はどうなるのでしょうか。

映画レビュー:「マイ・サンシャイン」


マイ・サンシャイン
リーフレット

何の気なしに観に行った映画でした。

トレーラーに釣られて。

ハル・ベリーが好きだったので。

もっとほんわかしたコメディかと思ったら、全然違ってた。

一応、ハル・ベリーとダニエル・クレイグがダブル主演という感じなのですが、主演というか狂言回し的な感じでした。

ダニエル・クレイグについては完全に007のオーラなく、普通のおっさんでした。普通以下のアメリカのおっさん。
ある意味新境地か。

本作はロスアンジェルス暴動に材をとったものらしいです。
でも制作はフランスとベルギー。ふーん。

暴動といえば、西成・あいりんが唯一日本で暴動が起こる地域とか言われてましたが、今はもうそんなエネルギーはないですね。

日本でこのような映画を作ろうと思ったら、幕末まで遡らなければならないのでしょうか。

その点、韓国は先日観た映画「タクシー運転手」でリアルな暴動を描いていましたし、「シュリ」を始めとして北との関係で緊張感のある映画が作られています。

本作は原題を「Kings」といいます。L・A暴動の銃爪となった黒人被害者の名前です。
これでは私達にはピンときません。なので、マイ・サンシャインと改題したのでしょうが、これもまた今ひとつピンときませんね。

★★☆☆☆

読書レビュー:「AI原論」 むずかしー、give up!


ギブアップしました。
先日同一の著者の「ビッグデータと人工知能」を読んで、大変に面白かったので選んでみたのですが、こちらはハードルが高すぎました。
「ビッグデータ・・」と同内容でかなりかぶるのですが、すべてが専門的でテクニカルタームが多く、いちいち理解できません。
もう少し勉強したらわかるようになるのだろうか。
理解できないものを無理して読んでいても時間の無駄なので、ひとまずおきます。

読書レビュー:「ビッグデータと人工知能」


著者の作品は記憶にあるだけで、過去に2冊読んでいた。
「マルチメディア」「IT革命―ネット社会のゆくえ 」
多分そのときにはそれほど印象に残らなかったのだが、今回は非常に感銘を受けた。

80年代からAIをタイトルにした著作があり、コンピュータの専門家である。
本作は比較的平易に書かれわかりやすい。

最も興味深かったのが、シンギュラリティを含め、AI・ロボットの可能性をほぼ否定しているところだ。

一般的には近い将来AIに人間が取って代わられる、所謂「シンギュラリティ」が問題としてメディアを賑わせている。
どちらかというと、それは決定事項として語られる。
しかし、著者はそんな心配はしなくても良いと説く。
AIと人間には決定的な違いがあり、それは理論的に超える事ができないのだと。
マインドアップローディングやシンギュラリティなどSFの世界のおとぎ話であると。

思えば「2001年宇宙の旅」でHAL9000に宇宙飛行士は殺される。
鉄腕アトムは人間の指示を無視して太陽に突っ込んでいった。
両者はAIについて逆の可能性を見ているが、早くからシンギュラリティを夢見ていたということか。

映画レビュー 「斬、」 ううmmu


斬、
リーフレットより

 

なんか、やっちまったなあというのが鑑賞後の印象。

いや、自分の選択が。

限られた時間と金を考えると、満足度が低い。

塚本晋也も池松壮亮も好きなんですけど・・・

何を訴えたいのかわからない。

塚本晋也なんでそこは明確にあるんでしょうけど。

音響効果が印象に残りました。

音はいい。

抜刀納刀の「シュリーーん」ていうハリウッド的な誇張された音は気になるけど。
それがエンターテインメントならいいんですが、あんまりそういう展開でもないし。

多分、「野火」からつながる生と死に関するテーマとかあるんでしょうね。

★★☆☆☆

※鑑賞映画館はシネ・リーブル梅田。
初日の塚本晋也監督の舞台挨拶に行きたくてあせって予約してしまったけど、直後にスケジュールが合わないことに気が付きました。
急いでシネ・リーブル梅田に電話を掛けて事情を話すと、丁寧に日延を提案してくれました。
でも、予約した日はすでに購入済みなので、その席は空席のまま。
非常に申し訳ないと重い、謝罪したのですが、快くOKしてくれました。
その後も電話したのですが、皆気持ちがいよい。
ちょうど年会員が切れたので、今度更新に行きます。 

落語 四代目桂春団治


桂春団治
春さんも風格が出てきました

ピースおおさか 開戦の日平和祈念事業 落語と平和~ピースおおさか平和寄席~

一度は聴いておきたかった三代目春団治はなくなってしまったので、元春之輔さんの四代目。

若いイメージがあったけど、もう70歳なんですね。

事故の後遺症でしょうか。舞台を降りる時にかなり時間がかかって足元がおぼつかなかった。

演題は「幸助餅」。
上方にしては珍しい人情噺だ。

偶然、この間聴いた講談の一龍斎貞寿の「夫婦餅」と同じ話だった。

なぜこの演目なのかはわからないけど、あまり笑いのない噺。

春団治という名前がかなり重いのだけど。
ちょっと今日は期待しすぎてしまった。

掘り出し物は桂文三さん。

なんか豆タンクみたいな感じで底抜けに明るく賑やか。
多分十八番なんであろう「転失気」がかなり良かった。
どこでやっても滑り知らずだと思います。