「正直観たもの読んだもの」カテゴリーアーカイブ

だまし絵Ⅱ がっかり


兵庫県立美術館。もっともお気に入りの美術館です。

そろそろ寒かったけど、お弁当を持ってでかけました。

兵庫県立美術館
ミニライブとかもいい場所

↑ここは美術館の裏っかわで、海に面した場所。

この間まで、ただの白い場所だったのに、こんな感じに変身してました。

ここで海とランナーを見ながらお弁当で腹ごしらえ。気合を入れて展示に向かいます。

で、予想外の混雑。まずチケット買うのに並ばなければならない。嫌な予感。

広告過多なキャッチーな企画。

案の定、へんな客層。大混雑。

今、公開中の鳥獣戯画もひどいらしいですね。平日で普通に2時間並ぶとか。

数年前にフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」観に行ったときですら、普通に立ち止まってゆったり鑑賞できたよ。そんなに観たいか?鳥獣戯画。

子供が多いのはいいけど。ベビーカーは?だけど。

大体がヒネクレタ作品ばかりなんです。それは想定内でしょう?

それ以前に最低限のマナーはあるやろ?

普通に携帯鳴らしてそのまま会話してるバカおやじ。

作品に対して、いちいち「こんなの自分でもできる」と言ってるバカップル。君たちコロンブスの卵って知ってるか?その発想自体が私達にはできないんやろ?見たものを真似できるって声高に言うことに何の意味が・・・( ´Д`)=3

これはなに?これはなに?って一々「解」を求めるオバハン。芸術に正解はないねん。あなたが感じたままでええねん。「なんやこれ、わけわからん。」でも「しょうもない」でも。できれば感動できるにこしたことはないけどね。

少しは期待していったけど。Ⅲがあってもいかないね。

マグリットが観られただけで良いとしよう。

併設の図書館で、これまでの展覧会の図録を観られたのが、何より。

この間の民博の展示が良すぎたので、がっかり感が大きいハズレの巻でした。

兵庫県立美術館
午前中は晴れてたのに。この後三宮まで歩きました。

国立民族学博物館 特別展 イメージの力


ものすごく久しぶりに、万博記念公園内の国立民族学博物館に行ってきました。 先日、てくてく銭湯 神戸長田ツアーの時に、酒席で偶然一緒になった、民博副館長の田村克己先生から招待券を頂いておりまして、やっと観覧しにいけました。

国立民族学博物館
黒川紀章設計 だそうです。

11:00くらいに行きました。行楽シーズンで晴天なのに、びっくりするくらい人がいない。

警備のおじさんが複数いるのですが、どなたもえらくフランクで愛想が良い。いろいろと説明してくれる。気持ちいいです。

特別展はこの写真の建物で、常設展示は左正面の建物。

まず、特別展から。

こいつらが出迎えてくれます。

国立民族学博物館
元祖本家のゆるキャラ

いきなりコシがくだけそうになる脱力感。完璧です。

こんなヤツらが際限もなく出てくるのですが、その中から特に気に入ったのきになったのをピックアップしていきます。

イメージの力
世界の仮面がずらり

先ほどのゆるキャラ三兄弟を含め、かなり水木しげるテイストです。

国立民族学博物館
すごいインパクトなのに、このどぉってことねぇよ顔が

これはアフリカの呪術用の人形で、全身が釘だらけ。かなりの人数に呪いをかけたものと思われます。

丁度先日、中島らもの「ガダラの豚」を読了したところだったので、非常にタイムリーな遭遇でした。

 

民博
かなりかわいい

メキシコのフーダ人形というやつですが、子供が作ったはりぼてみたいで非常にかわいい。この他にも、謀らずにナチュラルな可愛さを持ったプリミティブな民族アートが沢山あります。

今回かなり可愛い系のものが沢山ありました。海洋堂がガチャガチャシリーズにしたらヒットしそうなんですけどね。

みんぱく
mask in mask

これは仮面の外側が閉じて、一粒で二度おいしい的なものなんですが、構造的にウルトラマン怪獣のガボラの元ネタだとおもうんすけどね。

国立民族学博物館
イースターエッグ

非常にタイムリーなイースターエッグです。なんか最近、巷は仮装メインのハロウィンですね。

国立民族学博物館
アップにすると・・・

ホンマモンのイースターエッグはすごいです。もう、細密な模様がすごい。右端なんか伊万里焼と見まごうばかり。

そんな感じで後付になりますが、こちらは博物館では珍しく、フラッシュをたかない限り、自由に写真を撮ってオーケーなんです。博物館の報告がこれだけ写真を使ってできるとかないしね。


 

この特別展示だけでお腹いっぱいの満足なんですが、実はこの後、本館へ。無料で案内用の端末とヘッドフォンを貸してくれるのだけど、もうすぐに嫌になる。これを丁寧に全部聞いてたら、博物館が閉館してしまう。

ということで本館はへとへとになって観きれてない状態です。

あまつさえその後、元鉄鋼館(EXPO’70パビリオン)で開催されている「時代が求めた 1970デザイン展」というのまで観たのでへとへとでした。

しかし、久しぶりに行きましたが、まったく!!! 変わっていません。

みんぱくはお勧めスポットです。

街あるき&銭湯ツアー 姫路・白浜温泉


台風が近づきつつある10月11日。

姫路まで出かけてまいりました。プチ旅行。大阪で阪神電車に乗り換えて、列車はそのまま山陽電車が乗り入れて「白浜の宮」駅へ。

阪神梅田駅ではデーゲームがあるのでしょう。お昼前に大勢の阪神ファンと乗り合わせました。なんで土曜日の昼間にラッシュアワー (;´д`)トホホ… と思ったのですが、やはり甲子園に着くと一気に降りて行きました。

その後はゆっくりと座って旅情を味わえます。

直通特急を大塩駅で乗り換えて各駅停車で3駅目。

白浜の宮駅の目の前の路地奥に、第一の目当て、「澤田店」があります。古い大衆食堂なのですが、ホームページを開設したら、日本中からお客さんが来ているらしいです。

実はこちらのご子息とはお仕事で少しご縁があったので、ホームページ作成の経緯なども伺っていました。その店にやっと来ることができたのです。

澤田店
澤田店店内、もう、これ以上なく・・・

こちらが澤田店ホームページです。

残念ながら、後1.2年で地域再開発の為立退きになってしまうそう。行くなら今のうち。

澤田店から南へしばらく歩くと第一のお目当ての「白浜温泉」の煙突が見えてきます。

白浜温泉
銭湯というよりは、ガラス工場みないな。ジブリさんどうですか?
白浜温泉
輝く格天井
白浜温泉
陽光差し込む女風呂
白浜温泉
昭和三十二年から掲示される注意書き・・・
白浜温泉
拡大すると・・・時代を反映

熱いのが苦手なボクにはぴったりの温度でした。

お風呂もさることながら、こちらのおかみさんがとことん優しくて気さくで、話も面白い。

やはり客の減少が食い止められない。さすがに姫路まで2時間かけて通うことはできんしなあ。


さて、14・15日は「灘のけんか祭り」。名前は聞いたことあるけど、どんなものか全く知らなかった。

その案内もツアーガイドのジモティの方にしていただいたのですが、想像を絶するものでした。

岸和田と同じく、街全体がこの祭りを基準に時空間が構成されいているようです。

けんか祭り
「屋台」と呼ばれる神輿を見せて頂いた

この屋台をぶっつけ合って勝敗を決するらしい・・・。

詳しくはWikipedia

こちらも細かいところを。

女人禁制
女人禁制

大相撲と同じ「伝統」ですね。婦女子はこの倉庫に入ってはいけないし、屋台に触れてもいけないそうです。田嶋センセイとか上野センセイには黙っておきましょう。限定された地域には、まだまだこのような風習が残っております。

折しもノーベル平和賞をマララさんが受賞したニュースと重なったもんで、少し微妙に考えたりしました。

マララさんの場合はジェンダーフリーも説得力が違うわけなのですが、その運動は全力で推進していくべきではありましょう。

この「女人禁制」を批判しても、仮に撤廃しても、何かが生まれるとは思えませんし、良いんじゃないでしょうかね。

これからの祭りにはギャル神輿なんかもあるわけだし。

「男子禁制」だってあったほうが良い。


けんか祭りのメインスタジアムは八幡神社前に会場があり、鉄骨でサッカー場みたいな観覧席が設けられていました。

それとは別に、そこから北の方に向かったお山にもさらに大きなスタジアムが。

国道を挟んで2つの丘が段々畑のように観覧席になっています。当日は桟敷席となり、結構な席料金ですが、当然なかなかとれるもんではないらしい。

灘のけんか祭り
段々畑にしか見えない

もう、これは祭りというよりはコロッセオですね。ラッセル・クロウとか出てきそう。

向こうの段々とこちらの段々の間を通っているのが国道なのですが、当然祭り当日は通行止め。

しかし、明日は台風が直撃っぽい。どうなるんでしょうかね。

 

見所満載の姫路ツアーでした。

 

生誕100年記念 タカハシノブオ☆


タカハシノブオ☆ 叫ぶ原色・ものがたる黒
タカハシノブオ☆ 叫ぶ原色・ものがたる黒

新聞の紹介記事で初めて知りました。

「(神戸)新開地のゴッホ」と呼ばれた画家です。

作品のイメージや、生涯不遇であったことが近似であるということでしょう。

阪神電車岩屋駅。ここはいつも兵庫県立美術館に行くために降りる駅です。駅の看板にも兵庫県立美術館前と書いていますが、決して「前」ではない。そこそこ歩きます。

震災復興の都市計画により、ものすごく綺麗な町になっているので、歩いているだけでも楽しい。

こんな寄生獣的なのもあるし。
こんな寄生獣的なのもあるし。

今回は兵庫県立美術館より手前にある「BBプラザ美術館」。ビルの中に入っている小さな美術館です。

スタッフ含め好ましい美術館でした。


 

作品群はゴッホよりも抽象的なものが多いように思います。

塗り重ねた絵の具やクレパスを金釘流に削りとって文字を書く技法が多く見られます。中にはタイトルそのものを同様に書き込んでいる作品もある。

パンや果物ではなく、焼き鮭や瀬戸内・大阪湾で穫れたであろう魚を多く描いているので親しみが増します。

彼も又、戦争によって散々に翻弄された画家です。そうでなければ又違った画業の人生を歩んでいたであろうことは想像に難くありません。

そういう点では映画「ひまわり」や「犬神家の一族」を連想させます。

戦後の新開地で沖仲士をしていたそうですが、それはそのまんま東映やくざ・実録路線と重なるヤヴァイ地帯シチュエーション。

その街の路上に座り込み、異常なテンション(この言葉は緊張であり、感情の高まりを表すものではないが、この場合は当てはまる気がする)を持って絵を描き続けた、情熱はゴッホに比して劣るものではないでしょう。

ほぼ、70年代以降の作品ばかりが展示されていましたが、古いものは売ってしまったり、散逸しているのかも知れません。

タイトルも半分くらいが「無題」。意識したものなのか、タイトルを付けるのが面倒だったのか。

神戸の街を描いたものは、暗い中にも深い神戸愛を感じさせます。


 

この画家は、1994年に明石の老人ホームで一生を終えるのですが、ゴッホよりもかなり長い年月絵に打ち込めたことは幸せなのでしょうか。

戦争により散々に地獄を見、又、阪神淡路大震災による地獄の前年に他界したことはせめて幸せだったかも知れません。

映画レビュー ルパン三世


オフィシャルサイトより転載
オフィシャルサイトより転載

限りある時間とお小遣いを後悔なく使うためには、観るべき映画を選択する力を養わなくてはならない。
何十年繰り返し心に刻んだ事か。

原作やリメイク作品をOriginal作品と比較して論じることには慎重です。
それほど意味があることとは思えません。

今回も期待はせずに観に行きました。

特に監督が北村龍平ということで。
…やっぱり今回も見事にスポイルしてくれました。


 

劇場は空いていたのに、ボクが真ん中あたりに座っている1列は全部埋まっているので、途中退席出来ませんでした。辛かった。

観終わってから気づきましたが、これが「今」のルパン三世なんですね。

ボクの求めているものは何も無かった。

少なくとも、ファーストシリーズのイメージしか持っていない、自分のような偏狭なファンは観るべき映画ではなかったということです。

そういえば、最近のテレビ?は名探偵コナンと共演(アベンジャーズ的?)してるんですよね。 ( ´Д`)=3

モミアゲのないルパン@小栗旬は悪くなかったし、キャスティングは特に云々する気はない。
頑張って胸を強調している黒木メイサもそれなりにいいです。

自分の中では浅野忠信の黒歴史になったくらいです。

やはり問題は北村龍平。確実に観に行かない映画のキーパーソンになったので、そういう意味ではひとつ賢くなった。

  1. やっぱ、ルパンなんだから、まずは欧州をメインにしてほしい。五エ門の設定が問題あるのであれば(Wikipediaにそのようなことが)、最初から企画として成り立ってないよ。
  2. なんだか・・・「ハリウッド風・アップのみ・編集・ぶつ切れアクション(技斗)」は何とかしてくれ。せめて五エ門の立ち回りくらいはロングで撮ってほしい。ロングで見せられる技倆のある俳優を。
  3. トレーラーでは英語喋ってたやん。なんで全編吹き替えなん?健さんの「ゴルゴ13」か?すごい騙された感。
  4. 台湾・香港・韓国の俳優多数出演て必要か?特にラスト近くに唐突に出てくる漫画みたいなヤツ。

 

全体的に最近のTVシリーズを無理やり実写化したようなイメージですね。全編吹き替えなんで、特にそういう印象です。

いっそ、流行りのダークヒーロー路線で作った方が良かったと思うよ。

ファーストシリーズの、軽薄な中にもキリキリするような緊張感を持った「劇場映画」が観たかった。
R15でいいじゃないの。

他に観たい映画いっぱいあるのに。後は己を責めるのみ。

★☆☆☆☆

映画レビュー:GODZILLA 2014


GODZILLA
公式サイトより転載

本日はハリウッドの「ガッズィーラ:GODZILLA」を鑑賞してまいりました。結果、「観てください」とも「観なくていいよ」とも言えません。
感想文を書こうかとも思いましたが、何を書いてもネタバレになるのでやめます。
純粋に怪獣映画というジャンルであれば、「クローバーフィールド」の方が上かな。
ただ、この監督の「絵ぢから」とも言うべきものはかなり凄いと感じました。
それにしても・・・渡辺謙てば、なにやってるなっしーっ!!!

続編が決まってて、それにはモスラとかキングギドラも出てくるという噂が・・・。そういうノリではなかったぞ。

どうも、最近のダーク演出流行りには乗れない。バットマンだけでいいよ。

笑福亭三喬独演会レビュー


日時:2014.6.28

於:兵庫県立芸術文化センター

演者演目:

笑福亭喬若 へっつい盗人

笑福亭三喬 借家怪談

笑福亭鶴光 試し酒

仲入り

柳家喬太郎 母恋いくらげ

笑福亭三喬 三十石

今、上方では一番好きな笑福亭三喬さんの落語会に行ってきました。

「独演会」上方の独演会は独演会といいつつ、全く独演会ではありません。大体こんな構成です。お得なんで全然問題ないですが。

先日の談春さんの独演会はほんとに(少なくとも落語は)一人だったので、逆にヘンな感じがしました。

 

しかも、上記の演目も予告なしで、終わってからロビーに書きだされるという趣向。昔のUWF系の試合って、そんな感じだったような。

会場は三喬さんの地元の西宮。落語会には巨大なホール。めっちゃきれいなところです。しかし、上記の談春さんがフェスティバルホールだったので、ハコの大きさは感じません。フェスを少し小ぶりにしたような、オペラ的なホールの作りです。

今回も2階席でしたが、チケットを押さえたのが早かったせいか、ど真ん中で良い席でした。

口開けは笑福亭喬若さん。三喬さんのお弟子さんですが、こんな大きなホールで演る機会はあまりないと思います。良いチャンスですね。

「泥棒三喬」のお弟子さんらしく、泥棒話しでした。熱演でそつなくこなしたように思います。

二番手の三喬さんは少し珍しい話。借家怪談。今回は泥棒話は封印のようです。

まくらの地元ネタが最高におかしかった。この後、阪急今津線で帰ったのですが、今津線といえば、小説・映画の「阪急電車」。笑福亭版の「阪急電車」を聴かせてくれました。そして、それがネタにリンクしていくという見事な構成。いつも何気ない顔をしてやってくれます。

仲入り前の鶴光はん。久しぶりに観ましたが、相変わらず。三喬さんにとっては師匠の兄弟子ですが、遠目にはまったく変わらず若々しい。ネタは東京土産の江戸滑稽話。

中入り後

申し訳ないけど、三喬さんより期待度上かもしれない柳家喬太郎さん登場。

同じ喬の字がつく仲良しのようです。そして喬太郎さんの師匠の名前も「さん喬」。

いよいよ髪の毛真っ白になってます。感性や演出が非常に若々しいんだから、染めても良いじゃないの、と思うけど、プロとして考えがあるんでしょうね。もしくは全く考えてないか。

今回もくすぐりの速射砲健在。しかし、トリ前の立場を十分にわきまえてか、短い新作ネタでした。

江戸も上方も、どうも、新作の人は新作、古典の人は古典というこだわりがあるような気がします。喬太郎さんのように軽やかに両刀使いというのは難しいのでしょうか。

大満足でした。

さて、トリが三喬さんの「三十石」。袴をつけての登場です。上方を代表する大ネタであり、大師匠の六代目の得意ネタでもあります。

ほぼ、余計なクスグリを入れず、忠実に演じました。米朝さんは最後まで演じていたようですが、大師匠の演出どおり、途中で切って余韻を残してサゲへ。

貫禄を感じさせる舞台でした。

今度は是非、三喬・喬太郎二人会が観たい!

20140628poster

宣伝写真だから仕方ないんでしょうが。喬太郎さん、いつの写真よ。

映画レビュー:太秦ライムライト 福本清三センセイが主役だから探さなくて良い映画


太秦ライムライト
オフィシャルサイトより

ほんとに裏切られました。

良い方に。ツイッターとかに全然期待してないとか書いてしまったのですが、全力で謝罪します。

この中途半端(?)なキャスティングと、「探偵ナイトスクープ」を始め、様々な特番などでいじられ尽くした感のある福本センセイなので、そんなノリだろうと。

トレーラー以上の感動はないであろうと高を括っていたのですが、ボクの期待を軽く超えていった。
(何度か書いている トレーラーを越える本編はない という持論はちょっと引っ込めます)

昨日が関西先行ロードショーで、京都のTジョイでは舞台挨拶があったようですが、それには行けなかったので、本日観てきました。

シネコンでワールドカップのパブリックビューも同時にあったようで、逆に空いてていいかなと思ったら、案の定良い感じに空いていました。もちろんヒットはしてほしいのですが。


 

福本清三初主演映画。

しかし、主演であって主演ではない、不思議な感覚です。

主演だからといって、セリフが多いわけでもない。抑えた「ラストサムライ」で演じたサイレントサムライそのままの演技でした。

何を書いてもネタバレになりそうなので難しいですが、映画としても本当に良く出来ています。

ボクのように時代劇が好きで東映が好きで福本センセイが好きでなくても十分に楽しめるでしょう。

映像も衒いなく丁寧な凝り方で、音楽も素晴らしい。

撮影の舞台はいかにも埃っぽい、あの太秦撮影所。

そしえ出演者も東映臭がプンプン。

なのに、映像は非常にスタイリッシュな中に好感度も高い。

時代劇=チャンバラではないのですが、東映(本作の中では日映)太秦で量産されていたのは、ほぼエンターテインメントに徹したチャンバラ映画。

勧善懲悪をベースとした時代劇と、本作の大筋となるカタルシスの重なり方が心憎い。

そして最後のセリフがしびれます。

親子二代でお世話になったスターさん(松方弘樹)がかける優しい言葉に福本センセイはなんと返したか。

映画館で観てください。

そんな感じですが、そこにちょっとベストキッド的なふりかけもかかっていると。

あと、切られ役仲間の峰蘭太郎さんも殺陣師役で出演。セリフ沢山で、すっごくかっこよくお芝居されてます。

非常に満足度の高い一本。オススメです。

★★★★★

談春 大阪二夜 『もとのその一』


談春大阪二夜

プラチナチケットと言われる、立川談春の独演会に行ってきました。
今、東で一番好きなのは柳家喬太郎なんですが、一番人気は談春ということで、一度は聴いておきたい。

しかも、今回は上方ネタをナニワのど真ん中のフェスティバルホールでかけるという、アドベンチャーに挑むという。

2日間の公演で、初日に行きました。
演目は「除夜の雪」と「らくだ」。特に「除夜の雪」はほぼ米朝さんしかやらないレアネタです。

まず、フェスティバルホールで落語を演ることについて。

山下達郎を始め、一流ミュージシャンが口を揃えて絶賛するのが「ハコ」としてのフェスティバルホール。
非常に高さがあり、音楽ライブやオペラには最高だと思います。
今回の私の席は3階席でした。

今回の独演会では、二席の間に談春さんと交流のある、さだまさしの長男長女のクラシック演奏がありました。この二人もプロの音楽家として、非常に嘱望されているらしいのですがそれはおいといて。
この長男のバイオリンの音が素晴らしい。さすがフェスティバルホールと、感じました。

一方、独断ですが、肝心の落語の言葉が聞き取りにくい。もちろん、当代一の落語家の語りが聞き取りにくいわけはない。やはり、一人の語りを聴かせる落語という芸能には、このホールは向いていないように思います。最も、談春さんもそのことは最初に触れていましたが。

それと・・・

3階席から見下ろすと、顔とかほとんど見えない。オペラグラスが必要です。ちなみにバルコニー席もあります。一度ここから観てみたい。

オペラならたくさんの演者がきらびやかな衣装で動き回るから良いのでしょうが、基本座ったままの落語ではきつい。
マジで、崖の上から谷底を見下ろすような感じですから。
これだけの急角度で落語家を見下ろすのは、初めての体験でした。

さて、噺としては。

さすがですね。

マクラに入った途端、すぐに客をつかんでしまいます。まあ、ここに集まったフルハウスの客は、最初から周波数をばっちり合わせてるんでしょうが。
逆に言えば、大阪のうるさい落語ファンからの期待のプレッシャーというのも半端じゃないでしょう。

「除夜の雪」という噺は大晦日の話で、特に舞台としての場所は限定されません。季節感は0ですが、寒さの描写では夏日を忘れさせてくれます。全体的にはそつなくまとめた感じでした。本人もそのようなことを言っていましたが、これからより洗練されていくのでしょう。

噺の間のフリートークの際、このネタを米朝師の前で演じ、ネタをかける認可をもらうくだりを説明するのですが、これが最高におかしい。
米朝一門以外でこれだけ人間国宝をいじれる噺家は他にいないと思います。米朝さんをドンコルレオーネ扱いしたりしてますし。
米團治さんはじめ、かなり仲良しなんでしょうね。

芸人さんが、ご当地のよいしょをするのは定石ですが、今回は特に上方ネタをかけるということで、かなりサービスしてるみたいです。フリートークがかなり脱線して時間超過気味でした。

二席目の「らくだ」は上方ネタをとはいえ、師匠の談志を始め、舞台を江戸に移してたくさんの東京の噺家さんも演じているので、新鮮味は感じません。
やはり、至高の六代目のそれと比較してしまいますし。

喬太郎さんが、どこまでいっても軽いのに比べ、談春さんは最後は真面目に締めようとする、文学青年的なところがあるようです。
十分に満足のできる内容でした。次は違う場所で聴いてみたい。

読書レビュー:あかんやつら 東映京都撮影所血風録


力作です。10年以上の取材に基づき、日本映画愛・時代劇愛・東映愛にあふれています。
清濁併せのむというか、ほとんど濁ってる感の東映映画ですが、松竹はじめ、他社もえげつない歴史があったようですね。
「東映京都撮影所血風録」という副題はえらい大げさだなあと思っていたのですが、読みすすめると決して大げさではないと思えてきます。

大川博、岡田茂と言った東映の歴史を作っていった人たちは、とかくダーティなイメージを持ちがちだったのですが、特に岡田茂にという人については、新たな認識を持つことができました。

スター達の伝説については、これまでにあちこちでエピソードが語られてきているのですが、わりと初見のものもあり新鮮でした。
そして、スターの影に隠れることの多かった裏方たちの、それに優るとも劣らない武勇伝の数々も飽きさせません。

牧野省三から始まる東映という会社の流れが、今ひとつ分からなかったのですが、本書では非常にわかりやすく赤裸々に描かれます。

素晴らしい創造も多々ある中、昨今の中韓をパクリだなんだと言ってる人たちにも認識してほしい、どこも一緒だよというようなパクリ体質。バイタリティの発露と一言で片付けられない赤面事。薄々気付いてはいましたが、ここまでだったとは。
「宇宙からのメッセージ」とか、今見てもかなり恥ずかしい映画です。

私は昔一度だけエキストラとして東映京都撮影所に行ったことがあります。
俳優会館で衣装をもらって、ロケバスで京都の山の中に連れて行かれました。
その件の詳細は割愛しますが、その当時は当然時代劇も任侠路線・実録路線も過去の栄光であり、テレビ時代劇がそこそこ作られていた時代です。

しかし、あの独特の雰囲気は忘れられず、はまってしまったら抜け出せない麻薬のような空気を感じたことは覚えています。

東映と言えば、あの泥臭さしかイメージできない世代としては、昨今の良く言えば洗練された、悪く言えばボツ個性的な「相棒」シリーズとかは違和感しか感じません。とても「温泉みみず芸者」を作っていた同じ会社とは・・・。

映画好きはぜひ一読を。電子書籍化と望みます。