「正直観たもの読んだもの」カテゴリーアーカイブ

森村泰昌展 自画像の美術史 「私」と「わたし」が出会うとき


国立国際美術館は最も良く行く美術館です。

この日は天気がよく、梅田から歩いて行くと汗ばむ陽気でした。

昼時の中之島はランチタイムのリーマンやOLでいっぱいです。

ランチタイムが終わる頃に美術館に到着。天気は良いけれど、ウイークデーの美術館はかなり空いています。
新聞等にしつこく本展覧会の広告が掲載されているわりには、少し寂しい。

森村泰昌の一般的な認知というのはどうなんでしょうか。

これまでやはり若干イロモノ的な見方をしていたことは事実です。
しかし、改めて展示を観る限り、その印象は払拭されました。

有名作品になりきる手法も、伊達や酔狂で何十年もやれるものではありません。

それ以外には様々な切り口の作品をまとめて観ることができて満足でした。

オブジェもありますが、基本的には作者自身をベースとした写真作品です。

女装した作品が印象的です。森村泰昌が中性的な男性であるので、これだけの変身が可能なのでしょう。
すでに還暦を過ぎていますが、おそらく節制されているであろうことが見て取れます。
また、ほりが深く鼻梁の高いことも無国籍なメリットがあります。

展示の最後にスペシャルサンクス的に書かれていたのが、資生堂商品とメイクスタッフ・Nikonの紹介。
考えればそうですね。ある程度は可能でしょうが、自分自身ではあれだけのメイク(?)はできませんもんね。

それと、本展示は全て撮影OK。どんどんとInstagramなどで発信してください、とのことでした。

とは言っても、観ることが主なので、iPhoneでカシャカシャなどする気にはなりませんでした。

第二展示として、映像作品もあったのですが、70分という長さでしたので、次の予定もあり、少しだけ観ただけにとどまりました。
劇場に入ったところが終わり5分前くらいだったので。

併せて、この日は「田中一光 ポスター展」も開催されており、こちらもかなり見応えがありました。

森村泰昌
1枚だけ撮った作品写真
ゼー六
その後堺筋本町に移動して、久しぶりに食べたゼー六のアイスモナカ

読書レビュー:バーのある人生


本書は『バー』という対象の中で、主にバーテンダーとカクテルに絞って書かれている。
ある意味それらがバーというもののほとんどと感じるかもしれないが、ボクなどはバーに行ってもカクテルはあまりオーダーしない。名前は知っていても、レシピまではそれほどわからない。

ただ、たとえば書くことを『ドイツのジン』やボクのフィールドとも言える『アイラモルト』などに限ったとしても、十分に一冊の本にはなる世界でもあるので、かなりざっくりとしたエッセイと言えるだろう。

本当にざっくりとした構成で、あまりまとまった感はないのだが、気軽に読めて面白いとも言える。

代表的なカクテルについてページを割いているが、単なるレシピでは記憶に残らない事もいわく因縁故事来歴も端的に記載しているのでわかりやすい。

最後の方には、こんなバーは嫌だ的な覚書のような箇所があり、頷けてしまう。実際には同じくらい問題ありの客がいるのだが。
それはバーの格式(料金)に比例して少なくなっていく傾向にはあるようです。

映画レビュー:ランゴ RANGO


著者 :
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
発売日 : 2012-11-09
個人的には洋画などで、ストーリーについていけない時がままあります。
外国の習慣で、その説明がなされていない事によるものであったりするのです。
ただ、大筋には影響しないので、訳がわからなくなるようなことはあまりないのですが、今回もそうでした。
書くとネタバレになりますので書きませんが。
細かい事を気にしなければ十分に楽しくことができます。

アニメーション作品でよくある擬人化ですが、このレベルが高いですね。
それぞれの動物の特徴を良くデフォルメして、記号的によくありがちな擬人化がなされています。
カラスのネイティブアメリカンや、ガラガラヘビの悪漢、リクガメの町長など。
ほんとに昔からよくありがちなのに、それでも愉快です。

デフォルメといえば、動物達のデザイン・所作をを極端に描いています。
E・Tの造形など、初見の感想は大体みな一様に「キモ!」だったはずです。
しかし、映画の半ばまでくると、何故かそれがキュートに変わってくるのです。
あれはやはり、造形の妙なのでしょうか。
本作のヒロイントカゲも、最初はなんとブサイクなデザイン、と思ったのですが見慣れると非常に可愛らしく感じてきます。
最も主人公ののカメレオン@ジョニー・デップは最後まで今ひとつだったりもしますが・・・。
なんで、首が折れ曲がってるのか、気になって仕方がない。

全体的に「荒野の用心棒」をイメージして、小動物達に置き換えた大人の鑑賞にも耐えるアニメーションです。

映画レビュー:本日休診(1952)


著者 :
松竹ホームビデオ
発売日 : 2008-06-27
井伏鱒二の原作はかなり以前に読んだ記憶があるのですが、映画を観ても全く思い出せません。
同じ文庫本に収められている「遥拝隊長」の方はそれなりに記憶あるのですが。

本作で主人公の人情医師をにこやかに演じるのは柳永二郎。あまり主役を張る俳優ではありません。
この地味な主人公の周りを固めるのが、派手でアクの強い俳優陣。オールスターといっても過言ではない。
にも関わらず、決して周りに持っていかれることなく、地味なまま主人公たる柳永二郎は、けだし名優というべきでしょう。

舞台は終戦直後の東京。みんながみんな極端に貧乏です。
そして戦争の傷跡も生々しく残っています。

そんな中で初老の医師・柳永二郎は診察料も殆ど請求せずに診療します。
あまつさえ「本日休診」にも関わらず、次々と来訪する患者の対応に追われ、往診までこなしすのです。

色っぽい姐さんを演じる淡島千景。
(本作と関係有りませんが、いつも扇千景と淡路恵子の三人の名前がごっちゃになります)
小津作品にも良く出ますが、若いころはすごく可愛い美人ですね。和装も洋装もすごくいい。

その情夫役が鶴田浩二。東映に流れ着くついてスーパー任侠に定着するまでは人形のような二枚目時代もありました。
本作でもやくざの役ですが、少し滑稽な役回り。

淡島千景の兄を演じるのが、人はいいけど仕事をしないろくでなし。演じるのが中村伸郎。こういう役は珍しいですね。

医院の看護婦を演じるのが岸恵子。まだ花開く前の初々しく可憐な雰囲気です。

そして、インパクト大で、なんで?と言う感じなのが、三國連太郎。
戦争で怪我をしたのか、正気を失っています。映画の中ではダイレクトに気違いと言われてますが。
この偉丈夫で男前が、自分を軍隊の指揮官と思い込み、誰かれ構わず命令しまくってトラブルを引き起こします。
確か、「独立愚連隊」か何かで三船敏郎も狂った上官をコミカルに演じていました。
こういう普段スキのないような二枚目が狂人を演じることで戦争の悲惨さを描こうという狙いなのでしょうか。
一見無駄とも思えるキャスティングです。

レイプされた娘を親切に面倒をみるゴミ拾いのおばさんも、自分の息子(佐田啓二)の嫁にという展開となると、即座に拒否するという展開が有ります。
このようなシビアな問題提起も織り込まれ、安直な人情喜劇映画ではないところを感じさせます。

しかし全体的には、観終わって晴れ晴れとした気分にさせてくれる佳作と言えるでしょう。

映画レビュー:パンズラビリンス


著者 :
CKエンタテインメント
発売日 : 2008-03-26
ギレルモ・デル・トロは凄いですね。いいですね。
パシフィック・リムもなかなかでした。

ダークファンタジーと銘打ってますが・・・
PG12指定なのですが、私の印象ではR15+が妥当なのではないかと思います。
主役の少女が何歳なのかは知りませんが、心配になってきます。
必要以上にグロくコワイ。
と、同時に同じくらい魅力的。

「ペイルマン」の造形と描き方がすばらしい。
水木しげる@鳥山石燕描くところの、妖怪「手の目」からインスパイアされてるのでしょう。
あんな不快なビジュアル化はなかなかできません。

リアルな内戦の描かれ方と、パラレルで描かれる異世界のなんとも言えない違和感がいいです。

7~80年前のヘイトスピーチ(メッセージ)まとめ


近頃ネットで目立つのが中韓を貶めるヒステリックな内容の記事・書き込み。

それらをまとめたサイトまでありますが。

大手のニュース記事の反応でも脊髄反射的、何が楽しいのか、親の敵(かたき)なのかという醜悪なFacebookエントリーなどがあります。
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読書レビュー:古都


一応、郷土の超有名人なので常に意識はしていましたが、これまでに読んだのは
「伊豆の踊子」「雪国」くらいのもので、それもはるか昔のことでした。 続きを読む 読書レビュー:古都

映画レビュー:終戦のエンペラー


終戦記念日に観る。思いの外よくまとまっており、出演陣も魅力的。

米国内では、昭和天皇賛美ということで、非難も大きかったらしい。まあ、そう言われても仕方ないのない展開かとも思います。肝心な部分は史実に基いているとは思います。
良くも悪くも「天皇」がいかに日本人の精神的支柱であるかが、多少は分かってもらえるか。
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映画レビュー:百円の恋  一押しの安藤サクラ


100円の恋

映画とは関係ないですが、本作の主人公は安藤サクラ演じる役名を斉藤一子(いちこ)と言います。

年明けにボクに一つの訃報が入りました。もう、25年は会っていなかった昔の仲間が自ら命を絶ったというしらせでした。昨年末になくなったということです。
大変に温厚な人でしたが、いかにも幸薄そうな人でもありました。
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映画レビュー 「新幹線大爆破」 追悼 高倉健


生ける伝説は本当の伝説になりました。

各メディアは争って追悼特集を行い、その日は新聞各社も衆議院解散よりも大きなスペースを取って報道していました。

テレビは追悼特別番組として、ノーカットを売りにヒット主演作を放映しています。いずれも「幸福の黄色いハンカチ」以降のヒューマンな作品や、大作をピックアップする中、テレビ東京系だけは「網走番外地」シリーズをチョイスし、さすがテレ東と思わせてくれます。

ボクも個人的にこの未見であった「新幹線大爆破」をやっと観ました。

名作だというのは分かっていたのですが、なかなか観ることができず、今日まで。

「スピード」の元ネタだなんだと言われていますが、ボクとしてはジェイソン・ステイサムの「アドレナリン」の元ネタかなと思っております。
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健さんの数少ないピカレスク巨編。

有名なので書きますが、世界一のスピードで世界一の安全を誇る新幹線超特急に爆弾を仕掛け、時速が80kmを下回ると爆発するという前代未聞のパニック映画。

東映オールスターで描きます。

最初から出てくる俳優みんなが東映スター。

それだけで引きこまれて、忘れた頃に真っ赤な文字のタイトルが現れます。

2時間半超の長い映画ですが、何層にも重なるストーリーが飽きさせません。

チバちゃんの運転士がいつもどおり暑苦しすぎるのですが、この極限状況を表すにはやはり最適なキャスティングと演技だったと思います。

熱いチバちゃんとクールな健さんの対比も面白い。

そして、それ以上に熱いのがチバちゃんの上司の宇津井健。結構東映の中にあっても宇津井健です。そのまま。この人は犯人役がもっともできなさそう。


 

東映の大部屋さんや悪役商会さんが新幹線の一般乗客なんですが、パニックになって竜雷太の鉄道警察に詰め寄ったりするところがどう見ても一般人には見えない。

無駄に乗客のキャラクターがそれぞれ立っているので、ストーリーに集中できない嫌いもあったり。結局なんだったんだ、みたいな。


 

この映画が当時の国鉄の協力を得られずに作られたというのは驚きです。

どうやって撮ったのか分からないシーンもあります。東映お得意のゲリラ撮影もあったのでしょうが。

ミニチュアの特撮も結構イカしています。違和感もなく、それと気づかせないし。

それよりも特筆すべきは、実際に走るSLの貨車をを爆破させてしまうところ。良く撮りましたね。どう見てもミニチュアではないのですが。これも国鉄の協力なく、どうやって撮影したのでしょう。

ましてやこの時代にCGIなどあるわけもなく。コンピュータ処理が嫌いなわけでは決してないのですが、今となってはCGIでないというが一つのバリューと言えると思います。


 

長い映画でころころと視点が変わるので、結局だれが主役なのかわからなくなります。

もちろん、主役は健さんですが、それが「高倉」なのか「宇津井」なのか・・・。

どちらも悪いうわさを聞いたことのない、大スターでした。

宇津井健
健さんと・・・
高倉健
健さん