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映画レビュー:強盗放火殺人囚


著者 :
東映ビデオ
発売日 : 1988-04-08
しかし、このタイトルはもうちょっと何とかならなかったのでしょうか。

「強盗」で「放火」で「殺人」の「囚人」です。

ただの人間のクズでしかないですよね。

こんな映画の主役なんか誰がやる?

はい、松方弘樹です w

松方弘樹主演の東映脱獄路線(そんなのがあるかどうか知りませんが)。

『脱獄広島殺人囚』 『暴動島根刑務所』に続く3作目です。

前二作と較べても、無駄にキャスティングが豪華な気がします。

演技陣を書き出すだけでもお腹いっぱいになります。

その分、ストーリーの迷走ぶりがスゴイ。

これぞ70年代東映プログラムピクチャの醍醐味!

☆ ☆

今はカタギになり、飲食店をやっていたのですが、何の間違いか刑務所に入ってしまった松方弘樹。

シャバでは異常に色っぽくてキレイな妻ジャネット八田が待っています。

模範囚なので、仮釈放の内定が入り、それを面会にきたジャネットと楽しそうに語らう松方。

その隣ではなぜか聾唖者の囚人@蓑和田良太と手話で面会しているこれまた聾唖者の志賀勝。

必要なのか?このシチュエーションは?

その手話を見て、看守@小島三児が「規則だから、筆談しなさい!」って、ギャグっぽいんですが。

その他にも放送禁止用語満載なので、DVD化は難しいかも知れません。その前にニーズがないかも。

このようにこの3作目は前作と比較してかなりコメディ要素が高いです。

まあ、コメディというよりは正確に言うと単発ギャグなんですが。

演者の濃さと、シリアス(?)とギャグの波状攻撃が作品をより一層カオスな状態に発酵させていきます。

☆  ☆

もうすぐ仮釈放なのですが、仲間に頼まれた松方弘樹は刑務所内で印刷されている、難関医学大学の入試問題(゜o゜; を塀の外へと投げ出します。

拾ったのは、その問題の横流しで大儲けを企むヤクザ。

松方弘樹にそれを依頼する仲間というのは、上記ヤクザの内通者:岩尾正隆。

なんというか、囚人の中でもいじめ役とか特に悪い囚人演らせたら、世界中で右に出る人はいませんね。岩尾さん。

☆  ☆

特にこの辺りの映画前半に出てくる俳優陣が”特濃”です。

松方弘樹の周りにいるのが、殿山泰司・石橋蓮司・前田吟・川谷拓三・・・

前田吟は初っ端から印刷機を操作してるので、どうしても違う映画シリーズを連想してしまう。しかも、川谷拓三と義兄弟の在日コリアンという設定。呼び名は当然の如く「アリラン」拓ボンと二人で朝鮮語でのやり取りを頑張ってますが、どう聞いても朝鮮語には聞こえない。残念。

そしてさらにスゴイのが看守や所長の皆さん。

小松方正・菅貫太郎・沼田曜一・西田良・阿波地大輔・・・

しかもこの人達(前3人)がほとんど端役扱い。

菅貫太郎だけはヒットラーそっくりの謎なメイクで頑張ります。いわゆる怪演(ノリノリ)。

松方弘樹を拷問するからヒットラーなのかな。

一方、小松方正が珍しくおとなしい淡々としたセリフ。

沼田曜一に至っては、セリフが二言三言のみで、本日閉店。

なんか、たまたまスタジオに遊びに来てたのか?みたいな感じです。

かえっていつもはインパクトだけであまり目立たない西田良・阿波地大輔が大活躍。

ほんとにこれだけでお好きな人は大満足でしょう。

☆  ☆

さて、仮釈放で松方弘樹に出所されては、極悪アルバイトに支障が出て困る岩尾正隆は、裏から手を回して、出られなくします。

それが分かってキレた松方弘樹は岩尾正隆をボコる。

さらにその仕返しをするために岩尾が懐柔したのが、「怪物」然とした・・・

はい、満を持して若山富三郎登場。

前科何犯かわからないけど、ほぼ一生出られないであろう、漫画のような化け物囚人。

大好物の酒一杯で松方を殺しそうになり、二人で別の刑務所に移送されます。

それを襲撃したのが、試験問題横流し黒幕:遠藤太津朗の配下。

辛くもその襲撃を逃れた二人ですが、なぜか急に男の友情が強く芽生えます。

「夜の大捜査線」のような、葛藤の描写とか一切なし。

東映的ご都合主義で、若山先生もさっきまでの怪物ぶりから一転して、いつもの憎めない島村清吉や熊虎親分になってしまいます。

☆  ☆

なんせ、ほとんどヤクザと警察関係と被害者しか出てこない、条件の限定されたお芝居です。

それから、もうこれでもかというくらいの場面転換があり、着地点が見えないままラストに向かって行きます。

好きな人や深夜の3本立てで寝たい人には良いでしょうが、普通の観客は多分置いて行かれるでしょう。

☆  ☆

印象に残ったシーン。

◎エロ&バイオレンス

お色気担当はジャネット八田・春川ますみ、あともう一人、遠藤太津朗の娘・森田めぐみ(知らない)

松方弘樹がハッスルハッスル!

正司照枝も出てますが、もちろん、お色気は担当してない。

◎遠藤太津朗の名演

松方弘樹に娘を人質にとられた遠藤太津朗が、その脅迫電話で流す脂汗。

ウソみたいに途中からダラダラ流します。これが演技だとしたら凄いです。四六のガマです。さすが遠藤太津朗!

◎念願の柔道対決

警察官の宴席に暴れこんだ若山先生。警官とは知らず、酒肴を蹴倒します。

上座でご機嫌だったのが、大前均。

若山先生vs大前均。有りそうでなかったマッチメイク。

両者ともにガチで柔道有段者。

さすがにゴツい若山先生も大前均と対峙すると分が悪い。

登場時の怪物性が消え失せてる若山先生は、ストーリー上、大前均の腰投げ二発で松方弘樹がタオル投入。

実際は大前均はびびってたんじゃないかなあと想像されます。

でも、いいもん観られました( ゚∀゚ )

☆  ☆

最後はまあ、東映らしい終わり方。

最後に松方弘樹がジャネット八田に「女には一生わからんわい!」と言い捨てますが。

いや、男でも分かりません。かなり特殊な価値観だと思います。

映画レビュー:新 仁義なき戦い 組長最後の日


著者 :
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
発売日 : 2013-05-31

かなり前に観たけど、再度観てみました。

いろいろと思いだします。

新・仁義なき戦いの前作と今作は本編の広島から舞台あ九州に変わります。

東映の意向で無理やり作った感もなきにしもあらずですが、この最終話は監督の深作欣二と菅原文太が本当に作りたかった映画らしい。

全体的にユルい感じもしますが、よくできていると思います。

九州・筑豊側がメインで、主人公の菅原文太がこちらです。そして、バトルの構図とししては神戸対福岡です。

そうなんですが、神戸の組長を(モデルの親分は今年生誕100年らしい)殺(と)るのがキモなので、舞台は関西が多くなります。

筑豊の親分組合「七人会」の一人、多々良純から全幅の信頼を得ているのが若頭:菅原文太。

そしてその妹の亭主(つまり義弟)である和田浩治が大阪に流れてくるので、そのカラミもあります。

和田浩治は「仁義なき」準主役の渡瀬恒彦に見た目ちょっと似てる感じなんですが、いかんせん迫力不足の感は否めません。比べる相手が悪いw。

ここは渡瀬でいってほしかった。

☆ ☆

何と言っても本作での白眉は和田浩治の親分、藤岡琢也とチンピラ桜木健一のリアルネイティブ関西弁。

桜木健一は前シリーズでもイイカンジではじけていましたが、今回はより一層アイドルからの脱皮を図っているようです。

どチンピラなんですが、このセリフ回しはネイティブでないとムリです。

ここに書き写すことも無意味でしょう。ていうか、できません。

それを上回るのが藤岡琢也のハジケっぷり。

やたら怒号するだけのアウトレイジがギャグに見えてきます。

「堂に入った」という表現がぴったりでしょう。

この人、じゃりン子チエの「堅気屋」の社長を見る度に藤岡琢也を思い出します。

どちらかというと、おっとりしたイメージの役柄が多いだけに、そのギャップが面白い。

ちくのうを患ってて、しょっちゅう点鼻薬をシュコシュコやってる役作りとか誠に秀逸。

打算計算の近代ヤクザばかりの中で、見事にアブナイキレっキレ武闘派ヤクザを演じています。

これもネイティブしか演じ得ないセリフ回し。

☆ ☆

郷鍈治の元韓国軍人の殺し屋が無意味にカッコイイ。

けど、結構間抜けで、結果大変なことになっちゃうんですが。

あと、梅津栄の聾唖ヤクザ。

こういう役を演らせたら天下一品。

何気ない役なんですが、映画に深みをもたせるというか。

任侠映画にもよくあるような設定です。

☆ ☆

この映画自体、パーツパーツにモデルはありますが、ストーリーとしては実録とは言えません。

ラストの伊丹空港での立ち回りも、無許可のゲリラ撮影なんだろうなあ。めっちゃ迷惑。

映画レビュー:「のぼうの城」


著者 :
Happinet(SB)(D)
発売日 : 2013-05-01
原作を読んで、その面白さに映画公開を待ち望んでいた矢先に東日本大震災が起こり、そのカタストロフィ描写(物語の舞台、忍城に対する大規模な水攻め)のあまりの相似性に公開延期になり、見そこねていた映画です。

件の一連のシーンは、福島から遠く離れた関西に住む自分でさえ、胸の苦しくなるリアルな映像でした。

今回DVDで鑑賞しましたが、失敗です。これはやはり映画館の大画面で観るべきです。少なくとも初回は。

2時間半に近い長さですが、まったく冗長さは感じさせません。原作の良さを活かしたテンポの良さ。

ストーリー展開も知っているのに、引きこまれます。

しかし、原作にはないエグい戦闘シーンもあるので、子供は大丈夫かなという感じもしないでもない。

よく似たシーンは「もののけ姫」でもありましたが。

☆  ☆

さて、圧倒的な不利な状況での戦い・・・ということでは、思い起こすのが「300 スリーハンドレッド」。

どちらも史実なので、パクリ的なものはない。

まもなく続編も公開されるようですが。

「300」と比較しても、負けていません。

いや、勝っています。独断で。

「300」は『どうよ、このCGI≒CG、スゴイでしょ!』的な感じなのですが、「のぼう」はどこまでがCG?という感じ。

理想の特殊撮影です。

最近は、どこからがCGなんだ?と、つい無意識に観てしまう悪い癖がついていますが、途中からその作業が無意味なことに気付き、意識しなくなってきます。

スケールがすごい。

これが冒頭に書いた大スクリーン所望という理由です。

☆  ☆

原作では、のぼう様はウドの大木を絵に描いたような大男ということになっています。

映画ではご存知野村萬斎。

結果的に大成功のキャスティングでしょう。

エンタテインメントに徹しているので、野村萬斎の狂言舞台で鍛えた発声とオーバーアクトがピタリとはまっています。

あと、変にプロレスラーとか使わない、ぐっさんの豪傑:和泉守もケレン味たっぷりで好感度大。

佐藤浩市は渋過ぎのはまり役。

主役級三人組が好演してます。

敵組?と言っていいか。

石田三成の上地雄輔も予想以上の出来栄え。いい男ですね。

原作が先か、映画が先か。

基本、ボクは原作を最初にやっつけたい派なんですが、この作品に関してはどちらでも良いと思います。

昨今、ブラック企業が問題になっていますが(参院選にもねぇ)、人を動かすということがどういうことなのか。

この映画を観て欲しいです。

あと、やはり日本は田んぼだよ。なんだかんだ言っても。TPPも慎重に。

映画レビュー:実録外伝 大阪電撃作戦(1976)


著者 :
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
発売日 : 2010-12-03
何を観ようかなあと探してると、あ、これは。

「京阪神殺しの軍団」はむかーしに観た記憶があるけど、これ観たっけ?

多分観てないお思うのでチョイスしました。

『実録外伝 大阪電撃作戦』

いきなり、大阪市大正区から始まります。

ケンミンショーでなくとも、映画などで大阪を描く場合、象徴として中央区(道頓堀)とか浪速区(通天閣)をとりあえずもってくるんですが、そうでないところがリアル。ちょーリアル(w

といっても実録なので、モデルの抗争事件があったのだから仕方がない。

前編、大阪とその近辺が出てくるので、ジモティは楽しさ倍増です。

実際その地に住んでる人たちはたまらんかったでしょうが。

監督は中島貞夫。

いい仕事してますねえ。

「仁義なき戦い」から始まる実録路線を、他の監督たちもその路線を踏襲しています。

その中の佳作。

エグさグロさでは「仁義」を凌駕してます。

「アウトレイジ」と比べても、エグい。

「アウトレイジ」の取ってつけたような真性サド的な暴力ではなくて、身の回りのもので効果的に生理的に嫌なことをしてる感じで。゚(゚´Д`゚)゚。

なんか、まだ「アウトレイジ」の方に品を感じてしまいます。

☆☆

で、「仁義なき—」の俳優達が総出演。

出てないのは、菅原文太・金子信雄・千葉真一・北大路欣也とか。

今回の主役は松方弘樹です。

そして、(個人的に)目玉は松方・目黒の兄弟共演。

目黒祐樹が思いの外素晴らしい!

片目を白濁させて兄を食うくらいの迫力を見せています。

そしてラストでは待望の兄弟対決。

同じくらい特筆すべきは渡瀬恒彦のハジケっぷりキレっぷり。

東映ステゴロNo.1とか言われますが、単にアブナイ人だったんじゃないの?という感じです。

兄・渡哲也を常に意識して、しかし俳優としては越えられない。

そんな鬱屈したエネルギーが、そうさせるのでしょうか。こちらも又、兄弟の見えない対決か。

☆☆

ピラニア軍団その他大部屋の皆さん。

東映常連のヤクザなみなさん、総出演。

特に、志賀勝の髪型が秀逸!これは文章にしても伝わらない何かがあります。

モデルがいたのでしょうか。なんか病気の犬(病犬=やまいぬ)的なわけわからんコワさを醸し出しています。

我らが福本先生も大活躍。無口な目黒祐樹よりセリフが多いw。

その上、渡瀬恒彦をボッコンボッコンの半殺しにしています。

☆☆

今回は「仁義なき—」でいうところの山守さんの役を、これまた常連の小心者:織本順吉が同じ山守カラーで演じています。

田岡組長(モデル)はもちろん丹波哲郎。

丹波さんは多分、これらの一連の映画をほとんど自分でも区別できてないでしょうね。

そしてしびれる敵役(ていうか全員ワルですが)に成田三樹夫。ミッキーファンは堪能できます。

当然ですが、大阪・神戸が舞台なので、ほぼ全員関西弁です。

そつなくこなす小林旭は山健役で、相変わらずの貫禄。

丹波哲郎は相変わらず関西弁ヘタですが。

「アウトレイジ」のコピーが「全員悪人」でしたが、それをいうなら、こちらでしょう。

全く誰にも感情移入できない、清々しいまでに悪というかクズを描いた、ある意味暴力団排除的意味合いの強い内容かと思います。

でも、楽しいんですよね〜。なんででしょう。

映画レビュー:三等兵親分(1966:東映)


こんなオトコマエな遠藤さんはちょっと観られない!
こんなオトコマエな遠藤さんはちょっと観られない!

このところGyaO動画(映画)を重宝しています。

なにせ、ソフト化されていない映画が結局ラインナップされているのです。

この映画も「名画座以外で鑑賞することは難しいだろうなあ」と思ってから、かなり年月が経ちました。

思いがけず出会うことができて、即、購入しました。ややこしい契約くではなくて、一本ずつ購入できるのがいいですね。

画面のサイズとか画質はだめですが。

モノクロ映画は比較的解像度が低くても気にならないのでありがたい。

なぜ、この映画が観たかったかというと、昨年亡くなった遠藤太津朗さんが唯一主役の作品(シリーズ)であること。ファンなので。

詳しいい内容や共演者も知らないのですが、それだけの理由でどうしても観たかった。

実際に鑑賞して、主役というには物足りない感じでした。

最も、ご本人は脇役ばかりやってきて、拘束時間の長い主役が嫌で仕方なかったそうです。

本当の主役は江原真二郎。こちらも又、主役としては弱い感が否めません。

その代わり、というか、他の配役はかなり豪華です。少なくとも邦画好きとしては。

浅草笑芸人が大勢出演しています。

映画の舞台は大阪なんですけど。

最弱と言われたらしい、大阪第4師団は現在の大阪城敷地内におかれたらしいです。本作での設定はわかりませんが。

映画の冒頭に「鷹田遊郭」というテロップが出て始まります。これは「飛田遊郭」のことでしょう。
鳶と鷹のシャレですかね。

なぜか三遊亭歌奴(現・三遊亭圓歌)が遠藤太津朗演ずる親分の右腕子分で出演。本人は江戸っ子なのに、かなり達者な大阪弁を喋っています。この人は(京都弁の)市川右太衛門の大ファンですが、結構大阪ノリがキライな人だと思うんですけどね。

その他、南利明・由利徹・関敬六・佐山俊二・谷啓・田中邦衛・玉川良一などなどが助演(もしくはちょい役)でワキを固めているので、それだけでも飽きません。
この時代の人たちは、やはり軍人を演じていて違和感がありませんね。

ノンクレジットで小林稔侍も出ています。

遠藤太津朗のサブに山城新伍が出ているのも珍しい。
同郷(京都)だし、共演も多いので、山城新伍も気持ちよく演じている感じがします。

プロットとしては、前年にヒットした大映の「兵隊ヤクザ」に対抗したものかなと思います。

勝新太郎演じる荒くれ者の兵隊ヤクザと、田村高廣演じる非力だけど頭が良く、勝新から慕われる兵隊というパターン。

関係ないですが数年後に作られた若山富三郎の「極道シリーズ」の第三作も「兵隊極道」です。

これは顔が同じなんで、あまりにも勝新とかぶるだろうという感じを受けました。

☆☆

先述のように、思ったほど遠藤太津朗の出番がないのですが、さわりではめずらしく長台詞の啖呵をきってくれます。

脚本も結構面白く、キャスティングが芸達者揃いの濃いメンツばかりなので、ホントに楽しい映画でした。

遠藤太津朗の意に相違して、好評だったらしく、同年に続編が作られたようです。

そちらも観てみたいと思います。

ポンジュースの炭酸。個人的にはノーマルが好き。
ポンジュースの炭酸。個人的にはノーマルが好き。

映画レビュー:激突!合気道


貴重なツーショット、どうみても左が主役(w
貴重なツーショット、どうみても左が主役(w

東映空手映画路線(ほぼ千葉真一のためのジャンル)で、このような一本があったのを最近知り、探していたらGyaOで見つけました。

GyaOは画面が小さくてイマイチなんですが、割りと濃い映画を揃えているので妥協せざるを得ません。多分この映画はソフト化されていないみたいなので。

合気道開祖・植芝盛平の若いころを描いてるのですが、あくまでもモデルにしているということで、「この物語は史実を素材とした、創作である」との但し書きがあります。

グラップラー刃牙等で有名になった塩田剛三の養神館とは別のメジャー系合気会がバックアップしてるんですが、この映画の内容ではさすがに現在では広告にもできないでしょう。

映画そのものがだめなのではなく、あまりにも合気道の技術からは乖離してしまってるので。この頃の「カラテ」ブームの中にあっては仕方ないと思われます。

極真のマス大山を演じ、少林寺拳法創始者・宗道臣を演じ、さすがにネタ切れになってきたのでしょうか。

今回、主役の植芝盛平を演じるのは千葉真一の実弟千葉治郎(矢吹二朗)です。
仮面ライダーの相棒的存在のFBI捜査官(!)滝和也でおなじみです。

千葉治郎は、この映画からしばらくして引退してしまったようですが、残念です。

結構イイカンジだったんですけどねえ。この映画でも。

しかもお化け番組「仮面ライダー」のレギュラー共演者ですから、認知度も相当なもんだったと思われます。

☆☆☆

今回の主役である植芝盛平は小柄なことで有名です。

さすがに筋トレガンガン派の千葉真一では無理がある。そんな感じで千葉治郎にお鉢が回ってきたのでしょうか。

でも、やっぱり千葉治郎だけでは弱いと思ったのか、ライバル役で千葉真一が出てくるんですよね。

そりゃあ、千葉真一が出てくれば、千葉治郎は霞んじゃいますわ。

ただでさえ、千葉真一アメリカンっていう感じなのに。

なんとかチバちゃんも弟に花を持たそうとは思ったんでしょうが、文字通り役者が違うので。

盛平達が北海道の開拓を行いながら、武道修行に励んでいるところから始まります。

最初の方で千葉治郎が弟子を相手に稽古をするのですが、なんとか関節決めて投げたり、合気道的なムーブは見せますが、それ以降はなんだかわからん、結局カラテ?みたいな感じになってきます。

最も、タイトルでは「合気道」となってますが、まだ肝心の「合気道」が確立されるまえのお話なので、仕方ないかな。あくまでも、モデルにしたフィクションですし。

しかし、ストーリー自体はこの手のプログラムピクチャーの中ではよくできてます。凝ってます。

あきらかなヒール対ベビーフェイスではなく、いろいろとどんでん返しが用意されてます。

最初はわからなかったのですが、なんか守銭奴の嫌なやつな空手の先生が出てきます。

これを演じるのが本当に大きな空手団体を率いる鈴木正文という人。

あまりの肥満短躯でわからなかったのですが、植芝盛平の師の武田惣角を演じていたのです。

本業は空手家(法律家でもあるらしい)なんですが、ネイティブの東北弁で、それはそれでふさわしい配役なのかも知れません。

その他にもライバルの薩摩の剣術家を演じている人も、本業は武道家です。

しかし、ふたりとも、俳優でもあるらしく、非常に達者な演技を見せてくれます。

あれ、東映にこんな俳優いたっけかな、と思わせるような。

あと、特筆すべきなのは、金田龍之介演じる大本教中興の祖、出口王仁三郎。

今はそれほどではないでしょうが、この時代の大本教と言えば隆盛を誇り、国家からもおそれらた宗教団体。

決して出口王仁三郎に金田龍之介が似ているわけではないのですが、よくぞ演じたキャスティングした、という感じです。

金田龍之介、本作ではちょいと出ですが、存在感はさすがです。

若い植芝盛平の精神的支柱という役柄が非常に説得力あります。

そして、東映悪役に欠かせない汐路章。

オーバーアクト気味の演技で入れ歯外して老け役チャレンジ。孫娘の志穂美悦子を引き連れて。

仁義なき戦いの広能の恩師役より老けてます。

その正体は・・・・・・・。どっちみち、悦っちゃん同様、ストーリーにはそれほど絡みません。

さらにその志穂美悦子に至っては、とりあえず出しとけみたいな感じですね。

このジャンルで悦っちゃん出しとかないとおさまらんだろう、みたいな。

ラストは当然、治郎・真一の兄弟対決。

映画の最初で治郎は兄にボコられてるので、さて、どれくらい修行の成果が出たか。

相変わらず、合気道は出て来ませんが、仮面ライダーのお約束採石場みたいな所でラストの立ち回り。

当然主役なんで治郎は勝たないといけません。さてどうやって無理なく勝たそうか。

兄貴は強いぞー。

映画レビュー:その後の仁義なき戦い


「仁義なき戦い」と冠した映画はかなり沢山あります。「新・仁義なき戦い」に至っては、二通り(・⇒ナカグロがあったりなかったり)あるので一層ややこしい。

最初のシリーズが終わって、まだ終らない人気に東映が捨てておくわけもなく、深作欣二が撮ったシリーズは面白いと思います。
脚本が笠原和夫によるものではないので、どうしても弱い感は拭えまえせんが。

それらも終わって、まだやるか的な一本

今の仮面ライダーやウルトラマンのシリーズも、特に仮面ライダーやウルトラマンである必然性はないと思うのですが、やっぱ、看板が大きいんでしょうね。

東映実録路線は、スティーブン・セガールの映画が軒並み「沈黙の・・・」になってるのとは違って、それぞれに独自性は持ってたんですが、なんでこれが「仁義なき」なのかよく分かりません。テイストも全然ちがうんですけどね。群像劇という枠組みだけなら「神戸国際ギャング」とかのほうがよっぽど「仁義」です。

音楽が柳ジョージとレイニーウッド。なんだかなあ。

そんなにイメージの刷新をするなら、なんで「仁義なき〜」にするのか。意図がわからん。

宇崎竜童⇒軽すぎ。

松崎しげる⇒TVサイズ。

根津甚八⇒頑張ってます。一番輝いてる時か。

という主人公3人組なんですが、なんで友情出演でショーケンを出したのか。

完全に全部持っていかれてるやん。

常連、成田三樹夫が山守組長的なポジションで、出番多数なので、ボクを含めたファンはそれだけで嬉しいかも知れません。

花紀京に期待してたのに、セリフもないあまりにもちょい役(比較したら失礼かも知れませんが、出番とセリフでは福本清三先生の方がはるかに多かった。これはこれで嬉しい)な扱いにがっかり。どういういきさつでキャスティングしたのでしょうか。

とりあえず、花紀京は俳優として過小評価されすぎだと思います。

映画レビュー:空気人形


バンダイビジュアル
発売日:2010-03-26

原作は天才・業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形」です。

オムニバス形式のこの作品も大好きです。

主役のダッチワイフ(せっかく空気人形と言ってるのに敢えて)を演じるのが、「グエムル 漢江の怪物」で家族の中で一番頼りになりそうなロビンフッド役のペ・ドゥナ。

なぜ?

と思っていたのですが、人間ではない役を演じるのに、(部分的に)交わらない文化的パラレルを内包した隣国のペ・ドゥナがまさに適役はまり役でした。

そして、全く問題はないけれど完全ではない日本語がまた良いです。

しかし、原作は前述のようにオムニバスの中の一編なので、かなりふくらませてあります。二時間の作品にするには、かなり是枝監督のリメイクの力量が必要でしょう。

作品は静謐に淡々と進んでいきます。

都会に住む寂しい人達を淡々と。

カメラマンは台湾の李冰冰という人。

「ノルウェイの森」でも見せた、流れるような透明感のある映像です。

ペ・ドゥナが人形の可憐さ・はかなさを演じきって、これも憎いほどはまり役の板尾創路に軽く殺意を感じさせる。

その他のキャスティングも良いですね。うん、良い。

あえて言うと、オダギリ・ジョーがちょっと余計かも知れません。

好きな人なんだけど、なんだかなあ。

「深夜食堂」でも、好きなんだけど、この作品にいるか?みたいな違和感は感じてました。

しかし、またこれを書いている今、タイムリーに橋下氏の従軍慰安婦・風俗発言。

この映画の製作時、韓国人女優・ペ・ドゥナをこの役にキャスティングするとなった時、かなりナーバスになったであろうことは想像に難くありません。

底流に流れるメッセージには監督の意図もあるのでしょう。

もし、そうだったとしたら、この作品が描き出す「空気人形」の静かな悲しさ寂しさを、その問題とリンクさせるには、韓国の国民感情とは全く合致しない温度差を感じます。

映画レビュー:あなたへ


昨年、大ヒットしました。

そりゃぁ、健さんのロードムービーです。外れるわけがない。

しかし、映画館に観に行った近くのオバサンの感想は、非常に退屈だったと。

そうなのかな。ハズレなのかなと思ってましたが。

このオバサンはあまり映画好きじゃないのね。

そりゃ、人それぞれでいいのですが、一体どこを観ていたのか、と。
何を期待して行ったのかと。
久しぶりに小一時間、問い詰めたい。

オープニングのカメラワーク。すごいですね。引きつけられました。つかみはオッケー。

そして話題の竹田城跡。この絵は良く撮れましたねぇ。

これが撮れるのは黒澤明くらいかと思いました。


以下、ちょっとネタバレだよー。

この映画は勿論、健さんありきの映画なんですが。

今回に限っては、大滝秀治に全部もってかれた感が、どうしても。

先述のおばさん、この大滝秀治が観られただけで、もぉお腹いっぱいでしょ?

もう、秀治は死ぬ直前まで俳優として進化し続けましたね。

出番は少し、ほんの少しだけですが、完全に健さんかすんだというか。

ビートたけし・草薙君・佐藤浩市もいい線いってましたが、俳優としては格が違いました。


多分、みんな老境に入った健さんの元気な姿が観られるのはあとどれくらいか、というのが映画鑑賞のモチベーションだったのではないでしょうか。

晩年の馬場さん状態で。

画面に手の甲が写ったりすると、やはり年齢を感じさせますが、声や動きはとても80歳超えているとは思えません。

漁船に乗ってなびく髪の毛もおかしいくらいふさふさです。

次回作はどうなのでしょうか。

個人的には最後にもう一本、老境のヤクザ、老いた(とは言いたくないけど)花田秀次郎をみてみたい。

もいちど言いますが、この映画は大滝秀治の映画です。

映画レビュー:かずら


ポニーキャニオン
発売日:2010-06-16

もぉ、ね。

さまぁ〜ず、が好きなら最高の映画でしょうね。

さまぁ〜ずは大好きなのですが、テレビをほとんど観ないし、最近の所謂バラエティ番組が好きになれず、唯一「モヤモヤさまぁ〜ず」だけリアルタイムで観てます。

この映画の存在を知らず、遅ればせながら鑑賞しました。

三村の等身大の存在感はいつも通りに、役にピタリとハマります。

一方、大竹も又、高田純次よりもひとでなし的な持ち味がいるだけで面白い、謎な男を好演。

所謂「ハゲ」がテーマなんですが、ふたりとも今のところ髪に不自由はしてませんよね。

まあ、だから良いのでしょうが。

逆にフットの岩尾では生々しすぎるし。

さまぁ〜ず。永遠の中学男子。

ホントに中学男子のアホさを純粋に保ってていいですぇ〜。

「モヤさま」を観てても、本来ボケ役の大竹が何でもそつなくこなす役回りで、三村は「何も満足にできない・知らない」キャラクターです。
なので、大竹が逆にツッコミます。

しかし、三村が漏らした感想などは、大竹は決して(完全な間違いで且つ余程面白くない限り)突っ込みません。
どんなぬるい言葉でも復唱するだけで、すべてに同調します。とても良いリズムと間です。

普通、漫才コンビは実は仲が悪いなどといいますが、このコンビだけは本当に仲が良いのだろうなと思わせて、変な感想ですが癒されるのです。

ま、「モヤさま」に関しては、3人めのさまぁ〜ず大江ドンが抜けちゃったのがマジで痛いのですが。

*
*

ちなみに。

昔、永六輔の本で読んだのですが。

業界用語が一般化した「づら」という言葉。

これはカツラの事ではありません。

カツラよりもっとチープな俄とかに使うハリボテのカツラ「ボテ鬘」の略語です。

ま、いいですが。

ていうか、全く映画の感想文になってない(w

あ、最後に。

変わり果てた穂積ぺぺに気づいた自分はエライと思います。