月別アーカイブ: 2016年7月

映画レビュー:エクスマキナ


エクスマキナ
エクスマキナ公式サイトより部分転載

突然時間が空き、映画を観に行こうかと思った時、なぜか頭に閃いたのがこの映画でした。
なんか、トレーラーが印象に残っていた感じです。

開始からしばらく、こんなに眠くなったのは初めてかもしれない。

つかみもなく、抑揚もない展開に耐え切れず(体調の悪さも多少はあるけれど)何度か眠ってしまった瞬間のある自分にこの映画をとやかく言う資格はないかもしれない。
逆に言えば眠らせたのはこの映画でもあるんだけど。
いろんな賞も獲ったりノミネートされたりしてるし、映像は超キレイだし、佳作であるとは思います。

テーマは非常にわかりやすく、「2001年宇宙の旅」を彷彿とさせます。

登場人物が極端に少ない映画でもあり、メインに登場するのは3人だけ。

そのうちの一人、巨大検索エンジンシステム「ブルーブック」の創業社長ネイサン。ブルーブックは明らかにGoogleがモデルであろうけれど、この社長はラリー・ペイジでもセルゲイ・ブリンでもない、と思う。
彼の暮らすのはものすごく広大な大自然の中。スマフォの圏外。業務を考えると若干矛盾してなくもない。

そしてもう一人の「人間」がブルーブックで働くプログラマであるケイレブ。多くの社員の中から特に選ばれて、ネイサンの隠棲の場所に招かれます。

と、モウヒトリ、ネイサンの作り上げたアンドロイドの女子エイヴァ。エイヴァはつまり創世記のイブのことなんでしょうね。

世界中の情報を統合するシステムを作り上げたネイサンがその次に着手したのが、AIの開発。
そのAIを組み込まれたのがエイヴァをはじめとするアンドロイド達。(そういえばGoogleのキャラクターはドロイド君ですね)

巨大強力になった検索エンジンの危険性は日頃Googleに依存してしまっている自分も、常に心の何処かにはありました。
このところ話題になっている(まったくどんなもんか知らないけど)ポケモンGOもGoogleのデータに依存しているそうな。
中国などはめちゃめちゃビビっているみたいなので、この映画は非常にタイムリーであります。

世界中の情報をクラックしてさらにそれをAIに組み込むところがSFのSFたるところ。
クラッキングだけであればビジュアル的に面白みにかけるかもしれない。

そう、ビジュアルは一見の価値あり。

あと、これはやはりDVDでは多分すぐに挫折していたと思います。
BGMというか音響がすごい。これも「2001年宇宙の旅」へのオマージュなのかも知れません。

ちなみに「エクスマキナ」の意味はこちらを御覧ください。

★★★★☆

胃がんその後3


ジーベンロックナガクビガメ
もうすぐ里親に出してお別れ予定のジーベンロックナガクビガメ

抗癌剤治療が始まって、服薬の1クールが見えてきました。

TS-1という薬。妙に甘いのが癪に障る。

飲みやすいんだけど、副作用が結構きつい。
副作用の出る人と出ない人。その程度の差も激しいらしいけど。

ボクはそこそこ出てます。吐き気・だるさ・激しい下痢。

体重もどんどんと落ちて、本日は56キロフラット。

倒れる前が63~4キロだったので、7~8キロは落ちました。
大体1割くらいは落ちるらしいので、もう何キロかは落ちそうですね。

ハダカになった時のガリガリぶりには暗澹たる気持ちになります。
特に太ももが細い。去年の秋には大阪マラソンに出ていたのに。
こんな足はボクの足ではない。

首も細くてキモチワルイとか娘に言われるし。

お尻の筋肉も脂肪もないので、風呂屋のタイルに直に座ると痛い。

旨い好物を食べて、一瞬だけ幸せな気持ちになるのもつかの間、少しだけ残った胃が
謀反を起こします。嚥下した途端にまるで
「こんなもん食いたくないわー」という感じで、ものすごい気持ち悪さととともに
本来の仕事を思い切りチンピラのような態度で拒否します。
胃の入り口がデングリ反ったような気持ち悪さ。くプププーという音がなり、食道を通った
食物を入れまいとするようです。

まったく、食べることと飲むことがこんなにつらいとは。

健康は無くしてみて、そのありがたさが分かるものですね。
多分これを言って誰かが頭では分かっていても、おそらく本当に分かるのは健康をなくして
からだと思います。

自分への戒めとしてここに記載しておきます。

抗癌剤TS-1は予定では1年間の服用。しかし、あんまり副作用がキツイと6ヶ月でやめるかも。
どちらの期間でもあまり効果に変わりはないというような検査結果もでているらしいし。

もう少し食えるようになったら、とりあえず山登りからはじめよう。
そして筋トレをしてもとよりかっちょいい体になってやるんだ。

読書レビュー:トイレの話をしよう 〜世界65億人が抱える大問題


昔、「トイレット博士」というマンガがありました。当時はありえない下品なマンガだと思っていたのですが・・・。今考えると、あそこまで糞便に向き合えるって凄いことだし、貴重なことですね。

さて、本書の著者は英国の女性ジャーナリストです。表紙折り返しの著者近影で見る限り、結構チャーミングな女性です。この人がこの内容を・・・。ジャーナリストってアドベンチャーですね。

ボクは小さい頃から祖母に大阪弁?で「かんしょやみ(癇性病み)」と言われていました。標準語では潔癖症と言えばいいのでしょうか。

今も治らず(というか、本人はそれが普通だと思っている)電車のつり革を持たない派です。

そんな自分ですが、最も忌むべき場所であるトイレ・便所から目を背けたくないという二律背反(どちらにも価値がある)した価値観を持っています。

まず最初の章に出てくるのが我が国日本のウォシュレット(TOTO)・ハイテクトイレ。この章を読んで、あれ、この本は日本向けなのかな、と思ってしまいました。

しかし、これは後の章に出てくる便所後進国?と対比させるためのトイレの技術としてのレポートです。

良くネット等では訪日外国人の感想として、日本ハイテクトイレが取り上げられますし、近年の中国人爆買いの目玉商品としてハイテク便座があります。
一方、ハイテクトイレがアメリカに受け入れられていないのは、アメリカ人がそれを必要を感じていないという、非常にシンプルな答えが書かれています。

しかし、どちらにしてもそれは下水処理の入り口でしかありません。その先に高度な下水処理の仕組みがあるのです。
その点まで思い至らない自分を発見しています。
それが第二章です。

筆者自ら英国の下水道に降りていきます。映画「第三の男」を始めとし、良く見かけるシーンです。タートルズも下水道に住んでたんだっけ。

良く、台風や大雨で冠水するとマンホールから水が吹き出たりして、下水が溢れます。昔は汲み取り式の便所が大半でもあり、それって汚いよなあと、漠然と思っていました。
しかし、この本によると、通常下水に含まれる屎尿の割合は全体の2%程度なのだそうです。つまり、大量の雨水が流れ込んでくると、その割合はさらに低くなります。
でないと、映画のワンシーンで下水の中をバシャバシャ走るなんて嫌ですよね。

それ以降の章ではトイレ未開発の地域に多く紙数を割いています。

インド・中国・アフリカ諸国

映画「スラムドッグ・ミリオネア」の冒頭のシーンで、スラムの少年が公衆便所に閉じ込められ、肥桶の中に飛び込んで便所から脱出するという見たくないシーンがありました。

しかし、現実にはトイレが「有る」という状態すら少ないのだそうです。

インドを始めアフリカ諸国には下水どころか(上水道もないんだから当然ですよね)トイレそのものがない。存在しない。つまり全員野糞。

これが感染症の温床となり、慢性的に病気を引き起こし、経済活動に大打撃を与えていると報告します。
人類の絶対数ががもっともっと少なかった時代にはこれでもよかったのです(多分)。お天道さんが乾かしてくれました。

これは日本でも同じです。汲み取り式にしろ、水洗式にしろ、古来よりなんらかの設備があったから生活が送れていたのです。
トイレは本当に不可欠なものであるということが再認識されます。

これは経済発展を遂げている中国にも未だにあることで、経済特区以外の内陸部などでは改善すべき場所が多々あるようです。

スカートを履いた女性の身でありながら、描写したくない状態で取材を続けている筆者を尊敬します。

伊達や酔狂でできることではありません。これは目を背けず、世界的問題として、もっとクローズアップされるべきジャンルだと思います。

かと言って、これを映像化できるかというと、あまりにも厳しい。お茶の間に届けるにも十分に配慮を要する話題でしょう。

この問題は小中学校で取り上げるべきで、この本はそのテキストに最適かと思います。