
先日、ヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」を観て、キャスティング及び演技陣の素晴らしさや映画のできに感動しました。
中でもほとんどセリフのない寡黙な役ながら、なぜか印象に残ったヤン・イクチュンが気になり、その監督・主演映画で好評を得たという本作を観てみました。
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なるほどいいね
あれ、この人だっけ。
という感じで、かなり違う印象です。
これはやはり演技の確かさということでしょう。
ひたすら粗暴で狂犬のような主人公です。債権取立て屋。
「ヤクザ」という表現も用いられていましたが、途中から言い回しが「チンピラ」に変わります。
確かに、共同で高利貸しを営んでいるので、ギャングとは違います。
そもそも韓国ではこの手のギャングはどのような存在なのでしょうか。
ギャングやアウトローはどの国にもいると思いますが、共通項は犯罪者であり、犯罪者集団であるということです。
なので、日本のように「ボクたちは犯罪者です」よ、◯◯組と看板を上げてる国というのはないらしいのですよね。
シシリアンマフィアでも、公然と存在はするけれども、看板はあげてませんから。
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既視感・・・
この映画を観て、まず「竜二」を想起し、もうすぐ読み終わる長編小説「血と骨」も思いだしました。
前者はプロットとして、後者は粗暴さの放つ同国のメンタリティ的な類似として。
ネットで読んだインタビュー内で、ヤン・イクチュン監督は、日本は感情の表現がおとなしい、そして殴る演技(多分喧嘩とかに特定するのではなく)が遠慮がちであるというような事を言ってました。
邦画への出演も結構多く、度々来日しているので、素直な感想なのでしょう。
感情表現については、良く分かりません。「クサイ」ということとは別なのでしょうか。
歌舞伎を一つの源流としている日本の演劇は、結構オーバーアクトな場合も多く、洋画出演などでも指摘されるようなことも多く聞くのですが。意味的に違うのかな。
2つ目は、本作の中で主人公の女子高生が不良の弟と喧嘩する演技で納得しました。
多分、あんな演技(?)は日本ではないでしょう。
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やはり似て非なる国
韓国へは行ったことないのですが。多分、リアルな韓国を見ることができる映画なのだと思います。
主人公の取り立て屋が訪れるのは、返済期限の過ぎてる切羽詰まった低所得者の家。
住宅の雰囲気などは日本に近く、親近感を覚えますが、やはり何かが違う。
スラムではないのですが、あまり富裕層でない住宅街。
何が違うのかを考えた時、単純に道が舗装されていないことに気付きました。
日本では個人の土地でない限り、道路は基本的に舗装されています。時代劇に対する嫌がらせのように。
ハイキングコースであっても、アスファルト。
そんなところに異国情緒があるのですね。
「ナニワ金融道」「ヤミ金ウシジマ君」などで、非道な高利貸しは描かれますが、あまり直接殴ったり蹴ったりはないですよね。
恫喝はともかく、殴ったって殺したって一文にもなりませんし。
この主人公は債務者をボカスカ殴ってますが、取り立てもしっかりできてる。どういうカラクリなのか、その点は気になります。
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2時間以上の長い映画で、韓国の抱える、家族・貧困などの問題が沢山詰め込まれています。
あと、ヤン・イクチュンは出演シーンの80%以上が喫煙シーンのようなイメージ。「かぞくのくに」でもそうでした。どんだけヘビースモーカーやねんというか、そのメッセージ的なものが不明。
その周りの人(チンピラ)もかなり吸い続けてるので、アウトサイダー表現でしょうかね。
そして、パチンコにものめり込んでます。韓国ではかなり前にパチンコは全廃されたはずですが、これは違法パチンコなんですかね。
主人公の女子高生。かなりいい演技してます。
基本的にストーリーに類することはあまり書きませんので、観てください。オススメではあります。
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