月別アーカイブ: 2019年2月

読書レビュー:「徹底研究!! GAFA」 見事に囲い込まれている状況をどうするか


なかなかに読み応えのある本でした。
当代随一の書き手が様々な角度からGAFAについて解説し、今後の展望を語ります。

世界を支配する4大プラットフォーマーである4社。
Google=検索
Apple=デバイス
Facebook=SNS
Amazon=EC
そして現在4社を総括するとAIとなるかと思われます。
もちろん、そんな単純なものではなく、お互い牽制しあいつつ、補完しあっている関係です。
(デバイス→検索→広告 のように)

ここにMicrosoftやその他の巨大企業が入ってこないというのは、ある意味、現在がバブルなのかもしれません。

現時点でEUのGDRPが対抗策を打ち出しているように、GAFAが脅威であるとの認識も強くあります。

自分自身でもこれらのプラットフォーマーに対して、十分に囲い込まれている、「茹でガエル」であるという認識は常々持っています。
GAFAのなかで個人的にはFacebookのみ、かなり前に使用を辞めました。
自分にとってメリットがないと感じたので。
しかし、4社の中では最もリアルに個人情報を持っているのがFacebookなのかもしれません。

バブルである以上、近い将来終わりがきます。

ポストGAFAはあるのでしょうか。

中国のBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)が有力視されていますが、私はそうは思いません。
現在、スマフォの売上では中国勢が大勢を占めていますが、結局、開発しビジネスモデルを作ったのはアメリカです。
紙や印刷技術を発明したChinaは現在なく、巨大な結果は出しているものの、それは全部後追いです。それで首位に立った時、次のイノベーションが起こせるのでしょうか。

ITに限って言えば、プログラミングはベースがアルファベットであり英語です。
中国語によるプログラム言語を開発し、中国国内だけで完結するケースも想定されているようですが、どうなのか。

今後、GAFAはどこに行くのでしょうか。
個人としては、Google先生におんぶにだっこ状態で、アマゾンプライム会員としてその便利さを享受しまくり、さらにそれらにアクセスするのはApple製品なので、とても気になります。

ただ、AIスピーカーの類は今の所まだピンときていない状態です。

※ほぼ書評にはなっていません。

映画レビュー:「金子文子と朴烈」 自国に自信があるならば観るべき。


金子文子と朴烈
オフィシャルサイトより加工転載

大正期の日本を描いた韓国映画。

植民地化された朝鮮半島の恨みと主張。
先日の「ヴィクトリア女王 最後の秘密」と好対照。

実在のアナキストである朝鮮人、朴烈と日本人金子文子が主人公。

安重根は知っていましたが、この朴烈及び金子文子については全く知りませんでした。
安重根同様、韓国では英雄のようです。

そして、朴烈と金子文子も皇太子時代の昭和天皇を殺害を企てたテロリストとして、大逆罪に問われます。


かなり厳しい映画です。スパイスが効きまくりというか。
特にいま現在(2019年2月)。
天皇代替わりが間もなく行われる時でもあります。
そして徴用工問題がまだくすぶり、韓国国会議長が慰安婦問題について天皇への謝罪を要求するなど、超きな臭い昨今です。
そこにもってきてこの映画はかなりキツイ。

主に関東大震災後の朝鮮人虐殺を再確認していきます。
見ていて非常に辛い内容です。

件の虐殺が時の法務大臣水野 錬太郎個人の悪魔的策略であったという。
水野の描かれ方があまりにプロトタイプの悪役過ぎて、にわかには信じられません。

しかし、観る価値は大。

韓国ヒーローの反日映画と見てしまうのは早計です。

ここまで丁寧に日本を描いているのは、日本での公開を想定してのことでしょうね。
でないと説得力ないですから。
比較するのもなんですが、「ドラゴン怒りの鉄拳」のようなトンチンカンな描写では、日本の観客に問題提起できずに適当にスルーされますし。

アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画「太陽」でイッセー尾形が演じた昭和天皇は、その洋装を米兵にチャップリン呼ばわりされます。
普段、天皇及び天皇制に必ずしも賛同していない自分ですが、この描写にはムカついた記憶があります。

本作も朴烈・金子文子が執拗に天皇・皇太子をディスりまくるので、見ていてキツかった。

例えば韓国映画「力道山」であれば、メジャーな日本人俳優が多く出ていましたが、本作にはほぼ知った顔がありません。
少なくとも商業演劇に出ている俳優の出演は難しいでしょうね。

また、本作は丁寧に作られた佳作だと思いますが、日本での公開館が非常に少なく、関西でも京阪神でそれぞれ一館ずつです。
この内容では、少し腰が引けたのかもしれません。


しかし、思います。

日韓の問題は、お互いにヒステリックになりがち。
どちらもお互いが大嫌いで大好き。多分。

お互いを尊重して、お互いが自分を誇らしく思えればなと。
私は日本とそのあり方にはプライドを持ってい・・・ま・・・す。

★★★★☆

映画レビュー:「小さな独裁者」 史実に基づく稀代の詐欺師


小さな独裁者
オフィシャルサイトより加工転載

最近、ヒトラーを扱った映画が何本か公開されていました。
本作はナチスドイツを描いてはいますが、ヒトラーやその側近などは出てきません。

敗戦の色濃いナチスドイツの前線での残酷な身内同士の殺し合いなどが描かれています。
しかも本作は事実に基づいています。

「プライベート・ライアン」や「ランボー 最後の戦場」もそうでしたが、最近の戦争映画はとことんリアルに描写することで、反戦を主張してるんでしょうかね。エグいです。

トレーラーにある程度の内容をご紹介すると。

上記の通り、敗戦前夜のドイツです。
すでに民間人からも全く忌避されるナチスドイツの兵隊たち。
脱走兵が相次ぎ、敵国イギリスなどへの投降を恐れたナチスの上部は、彼らの捜索捕縛を強化しています。捕まればまず死あるのみ。

本作の主人公も脱走した上等兵の若者です。

命からがら追手から逃れ、偶然に途上で止まっていた軍用車から食料や将校(大尉)の軍服一式を盗み手に入れます。
この時点でどこまでの思惑があったのかはわかりませんが、彼はその立派な軍服を着込みます。立派なナチス将校の出来上がりです。
その後、大尉の軍服を着ているということで、途上で出会う兵隊たちから勘違いされ、彼らを部下にしていきます。

生まれながらに詐欺師の才能があるとしか思えない主人公は、別の部隊などと遭遇しながら、その都度うまく言い逃れ、本物のヒトラー総統直属の将校であると信じ込ませていきます。
最近は良くパワハラが問題視されますが、こういった軍隊というのは究極のパワハラで成り立っているのですね。

で、この主人公にはまったくもって人間的な魅力が感じられず、感情移入などできません。
なのに、なんどもバレそうな危機が訪れるたびにハラハラしてしまいます。

ナチスドイツがどうなっていくのか、私達は知っています。
今後、主人公がどのように危機を回避していっても、行き着く先は見えています。
さて、何きっかけでどうなるのか
驚き?の結末へ。

ついでにいうと、エンドロールでも結構楽しませてくれます。

★★★☆☆

映画レビュー :「ヴィクトリア女王 最期の秘密」 女王、名演だと思います。


ヴィクトリア女王 最期の秘密
オフィシャルサイトより加工転載

格式に囚われ周りに心を閉ざした頑固で高齢な女王が、純粋で明るい異邦人(低身分で被差別側)に心を開く。
基本プロットからしてそそられる映画です。

これが全くのフィクションならば、ちょっと観てられない展開なのですが、一応、史実をベースにしているということで。

英国女王と植民地化されたインドの青年という関係です。

植民地化されたインドの下層階級の青年が80歳を過ぎた英国女王に記念品を持ってくる大役を任されます。
その席でで女王はこの背の高いハンサムなインド人(アブドゥル)を痛く気に入ります。
極端に気に入り、周りの困惑も構わずどんどんと出世をさせ、自信の師としてヒンディー語を熱心に教わったりします。

それらの寵愛の数々ががあまりに極端で露骨なので、リアリティに欠ける嫌いがあったりもするのですが、そこがノンフィクションの強み。
ヴィクトリア女王はわがままな権力者であったのだと納得せざるを得なくなります。

それに答える如く、件のインド青年は益々女王に対する純朴な忠誠心をつのらせていきます。

インド人的にはOKなのでしょうか。

これがもし日中韓の関係であれば、ブーイングの嵐になりそうな気がするのですが。

いくら権力者の覚えめでたいポジションを手に入れたと言っても、双方は戦争により、多大な犠牲者を出しています。
まして、青年は女王の側近たちからは未開の野蛮人のように思われ、周りからは嫉妬と差別と憎しみをもって接せられているのです。


さて、最終的に女王はインド青年に「ナイト」の称号を与えようとします。
さすがに驚いた側近たちは、なんとか女王に思いとどまらせようとクーデターに近い行動を起こします。

ここからがクライマックス。

気になったのが「最期の秘密」というタイトル。
「最後」ではなく「最期」です。最晩年ということでしょう。
「秘密」とは何を表しているのか。
80歳を過ぎたヴィクトリア女王は、異邦人の青年アヴドゥルに恋をしていたのでしょうか。それはなくとも、異性に対しての好意は強くもっていたでしょう。
しかし、「最期の秘密」とはそれだけでもないように思います。

是非、映画を観て考えてみてください。

★★★☆☆