月別アーカイブ: 2014年6月

笑福亭三喬独演会レビュー


日時:2014.6.28

於:兵庫県立芸術文化センター

演者演目:

笑福亭喬若 へっつい盗人

笑福亭三喬 借家怪談

笑福亭鶴光 試し酒

仲入り

柳家喬太郎 母恋いくらげ

笑福亭三喬 三十石

今、上方では一番好きな笑福亭三喬さんの落語会に行ってきました。

「独演会」上方の独演会は独演会といいつつ、全く独演会ではありません。大体こんな構成です。お得なんで全然問題ないですが。

先日の談春さんの独演会はほんとに(少なくとも落語は)一人だったので、逆にヘンな感じがしました。

 

しかも、上記の演目も予告なしで、終わってからロビーに書きだされるという趣向。昔のUWF系の試合って、そんな感じだったような。

会場は三喬さんの地元の西宮。落語会には巨大なホール。めっちゃきれいなところです。しかし、上記の談春さんがフェスティバルホールだったので、ハコの大きさは感じません。フェスを少し小ぶりにしたような、オペラ的なホールの作りです。

今回も2階席でしたが、チケットを押さえたのが早かったせいか、ど真ん中で良い席でした。

口開けは笑福亭喬若さん。三喬さんのお弟子さんですが、こんな大きなホールで演る機会はあまりないと思います。良いチャンスですね。

「泥棒三喬」のお弟子さんらしく、泥棒話しでした。熱演でそつなくこなしたように思います。

二番手の三喬さんは少し珍しい話。借家怪談。今回は泥棒話は封印のようです。

まくらの地元ネタが最高におかしかった。この後、阪急今津線で帰ったのですが、今津線といえば、小説・映画の「阪急電車」。笑福亭版の「阪急電車」を聴かせてくれました。そして、それがネタにリンクしていくという見事な構成。いつも何気ない顔をしてやってくれます。

仲入り前の鶴光はん。久しぶりに観ましたが、相変わらず。三喬さんにとっては師匠の兄弟子ですが、遠目にはまったく変わらず若々しい。ネタは東京土産の江戸滑稽話。

中入り後

申し訳ないけど、三喬さんより期待度上かもしれない柳家喬太郎さん登場。

同じ喬の字がつく仲良しのようです。そして喬太郎さんの師匠の名前も「さん喬」。

いよいよ髪の毛真っ白になってます。感性や演出が非常に若々しいんだから、染めても良いじゃないの、と思うけど、プロとして考えがあるんでしょうね。もしくは全く考えてないか。

今回もくすぐりの速射砲健在。しかし、トリ前の立場を十分にわきまえてか、短い新作ネタでした。

江戸も上方も、どうも、新作の人は新作、古典の人は古典というこだわりがあるような気がします。喬太郎さんのように軽やかに両刀使いというのは難しいのでしょうか。

大満足でした。

さて、トリが三喬さんの「三十石」。袴をつけての登場です。上方を代表する大ネタであり、大師匠の六代目の得意ネタでもあります。

ほぼ、余計なクスグリを入れず、忠実に演じました。米朝さんは最後まで演じていたようですが、大師匠の演出どおり、途中で切って余韻を残してサゲへ。

貫禄を感じさせる舞台でした。

今度は是非、三喬・喬太郎二人会が観たい!

20140628poster

宣伝写真だから仕方ないんでしょうが。喬太郎さん、いつの写真よ。

映画レビュー:太秦ライムライト 福本清三センセイが主役だから探さなくて良い映画


太秦ライムライト
オフィシャルサイトより

ほんとに裏切られました。

良い方に。ツイッターとかに全然期待してないとか書いてしまったのですが、全力で謝罪します。

この中途半端(?)なキャスティングと、「探偵ナイトスクープ」を始め、様々な特番などでいじられ尽くした感のある福本センセイなので、そんなノリだろうと。

トレーラー以上の感動はないであろうと高を括っていたのですが、ボクの期待を軽く超えていった。
(何度か書いている トレーラーを越える本編はない という持論はちょっと引っ込めます)

昨日が関西先行ロードショーで、京都のTジョイでは舞台挨拶があったようですが、それには行けなかったので、本日観てきました。

シネコンでワールドカップのパブリックビューも同時にあったようで、逆に空いてていいかなと思ったら、案の定良い感じに空いていました。もちろんヒットはしてほしいのですが。


 

福本清三初主演映画。

しかし、主演であって主演ではない、不思議な感覚です。

主演だからといって、セリフが多いわけでもない。抑えた「ラストサムライ」で演じたサイレントサムライそのままの演技でした。

何を書いてもネタバレになりそうなので難しいですが、映画としても本当に良く出来ています。

ボクのように時代劇が好きで東映が好きで福本センセイが好きでなくても十分に楽しめるでしょう。

映像も衒いなく丁寧な凝り方で、音楽も素晴らしい。

撮影の舞台はいかにも埃っぽい、あの太秦撮影所。

そしえ出演者も東映臭がプンプン。

なのに、映像は非常にスタイリッシュな中に好感度も高い。

時代劇=チャンバラではないのですが、東映(本作の中では日映)太秦で量産されていたのは、ほぼエンターテインメントに徹したチャンバラ映画。

勧善懲悪をベースとした時代劇と、本作の大筋となるカタルシスの重なり方が心憎い。

そして最後のセリフがしびれます。

親子二代でお世話になったスターさん(松方弘樹)がかける優しい言葉に福本センセイはなんと返したか。

映画館で観てください。

そんな感じですが、そこにちょっとベストキッド的なふりかけもかかっていると。

あと、切られ役仲間の峰蘭太郎さんも殺陣師役で出演。セリフ沢山で、すっごくかっこよくお芝居されてます。

非常に満足度の高い一本。オススメです。

★★★★★

談春 大阪二夜 『もとのその一』


談春大阪二夜

プラチナチケットと言われる、立川談春の独演会に行ってきました。
今、東で一番好きなのは柳家喬太郎なんですが、一番人気は談春ということで、一度は聴いておきたい。

しかも、今回は上方ネタをナニワのど真ん中のフェスティバルホールでかけるという、アドベンチャーに挑むという。

2日間の公演で、初日に行きました。
演目は「除夜の雪」と「らくだ」。特に「除夜の雪」はほぼ米朝さんしかやらないレアネタです。

まず、フェスティバルホールで落語を演ることについて。

山下達郎を始め、一流ミュージシャンが口を揃えて絶賛するのが「ハコ」としてのフェスティバルホール。
非常に高さがあり、音楽ライブやオペラには最高だと思います。
今回の私の席は3階席でした。

今回の独演会では、二席の間に談春さんと交流のある、さだまさしの長男長女のクラシック演奏がありました。この二人もプロの音楽家として、非常に嘱望されているらしいのですがそれはおいといて。
この長男のバイオリンの音が素晴らしい。さすがフェスティバルホールと、感じました。

一方、独断ですが、肝心の落語の言葉が聞き取りにくい。もちろん、当代一の落語家の語りが聞き取りにくいわけはない。やはり、一人の語りを聴かせる落語という芸能には、このホールは向いていないように思います。最も、談春さんもそのことは最初に触れていましたが。

それと・・・

3階席から見下ろすと、顔とかほとんど見えない。オペラグラスが必要です。ちなみにバルコニー席もあります。一度ここから観てみたい。

オペラならたくさんの演者がきらびやかな衣装で動き回るから良いのでしょうが、基本座ったままの落語ではきつい。
マジで、崖の上から谷底を見下ろすような感じですから。
これだけの急角度で落語家を見下ろすのは、初めての体験でした。

さて、噺としては。

さすがですね。

マクラに入った途端、すぐに客をつかんでしまいます。まあ、ここに集まったフルハウスの客は、最初から周波数をばっちり合わせてるんでしょうが。
逆に言えば、大阪のうるさい落語ファンからの期待のプレッシャーというのも半端じゃないでしょう。

「除夜の雪」という噺は大晦日の話で、特に舞台としての場所は限定されません。季節感は0ですが、寒さの描写では夏日を忘れさせてくれます。全体的にはそつなくまとめた感じでした。本人もそのようなことを言っていましたが、これからより洗練されていくのでしょう。

噺の間のフリートークの際、このネタを米朝師の前で演じ、ネタをかける認可をもらうくだりを説明するのですが、これが最高におかしい。
米朝一門以外でこれだけ人間国宝をいじれる噺家は他にいないと思います。米朝さんをドンコルレオーネ扱いしたりしてますし。
米團治さんはじめ、かなり仲良しなんでしょうね。

芸人さんが、ご当地のよいしょをするのは定石ですが、今回は特に上方ネタをかけるということで、かなりサービスしてるみたいです。フリートークがかなり脱線して時間超過気味でした。

二席目の「らくだ」は上方ネタをとはいえ、師匠の談志を始め、舞台を江戸に移してたくさんの東京の噺家さんも演じているので、新鮮味は感じません。
やはり、至高の六代目のそれと比較してしまいますし。

喬太郎さんが、どこまでいっても軽いのに比べ、談春さんは最後は真面目に締めようとする、文学青年的なところがあるようです。
十分に満足のできる内容でした。次は違う場所で聴いてみたい。