月別アーカイブ: 2017年2月

読書レビュー:京都ぎらい


著者 : 井上章一
朝日新聞出版
発売日 : 2015-09-11
著者のことは比較的古くから知っていました。ブレイクする前から。
これほどの有名人になるとは思いませんでしたが。

様々なフィールドに造詣の深い人でありますが、ボクが知ったのはプロレス者(もの)としてでした。
まだ、プロレスが日陰者の存在であったころからですね。大方30年くらい前でしょうか。

兵庫県西宮市に鹿砦社という出版社があり、その会社が出していいたのが、知る人ぞ知る「プロレス・ファン」という冊子でした。

多分、創刊の原動力となったのは、当時まさに日本プロレスのエポックであった旧UWFであったと思われ、毎号の表紙には藤原喜明や佐山サトルのイラストが載っていたことを記憶しています。

そこによく寄稿をされていたのが井上章一先生。その頃はプロレスネタについて硬派に理論武装した人は、週刊ファイトの井上(I)編集長くらいしか存在しなかったように思いますが、京大出身のプロレス論客として、その名を心に刻んだのであります。
尤も書かれていた内容は、ほぼ何も覚えていませんが・・・

本書にも少しだけプロレスに関することが出てきます。それも、株式上場を狙っている新日本プロレスなどではない、ドマイナー団体のある選手の事で、いかにも井上先生らしいです。詳細は本書でどうぞ。

井上先生自身はボク達「外部」の人間からすると、嵯峨に生まれ現在は宇治に住まわれるド京都人なのですが、本書を読むとそれが100%否定されます。

端的に言うと、洛外に生まれ育ったものは京都人とは自他共認められないということだそうです。この「他」というのは、つまり「洛中」に生まれ育った都人(みやこびと)のことです。

この洛中洛外の人達の間だけで認識される感性に基づくもので、ボクも含めた都以外の人たちからすれば理解しがたいヒエラルキーがあるらしいのです。

大阪人のボクも薄々は「洛外のお人は京の人間やおへん。」という、京都人の言外の態度は知っていましたが、ここまでとは思いませんでした。

前の戦争というのが一般的にはWW2を指すのに対し、その戦災を免れた京都人は応仁の乱の事を言う、というのはジョークだと思っていたのですが、あながちそうでもないようです。

そんなトンデモ常識がまかり通っている(いた)京都の特殊な状況を冷静に面白くまとめた佳作です。

といっても、井上先生の視点も結構イケズで京都人の資格は十分にあると思うんですけどねえ。対外的に京都人と言われることに真剣に怒っておられる井上先生です。

※本書ではここに記載したような内容ではなく、しっかりとした知識と資料に基づいた表現が用いられ、この駄文はボク一流の表現であることを付記します。

読書レビュー:知の仕事術


著者 : 池澤夏樹
集英社インターナショナル
発売日 : 2017-01-12
敬愛する(といってもまだまだ良く知らないニワカですが)池澤夏樹さんの仕事術公開本。

SNSの話から始まりますが、ご本人は自身の事を語るなど、こっ恥ずかしくてできないそう。少し前からFacebookをROMっている私も同様です。

ただ、自己の記録として、WordPressによるブログのみは続けて行こうと思っています。それと、そこそこのフォロワーのいるツイッターは。

こういう知的生産の技術書というのは、昔から有名な書籍が何冊も出ています。知の先達たちが後輩のために親切にノウハウを公開してくれているのですね。

でも、わかっちゃいるけどついてけねー。というのが本音のところ。
それができれば苦労はない。継続は(天才)力である・・・と自己弁護で解釈しています。

それでも良いから、格好だけで良いからついていきたい。というので、同様な本にまたもや手を出してしまいます。

そしてもう一つ。基本は実践者の脳髄に帰結するのでしょうが、その時に応じたツールが出てきます。
本書は発行日が読書日と1ヶ月ほどしか違いません。まさに湯気の出ている新刊書でしょうか。なので、現在進行系のツールの解説も適切に行われています。
特筆すべき事として、著者は最初にワープロ原稿で芥川賞を受賞した人。創作のIT化に最初期に取り組んだ人でもあります。現在使用しているデバイスもiPhone6sPlusだったりして、ボクとおんなじ。

でも、あまり具体的に手取り足取りという紹介はありません。執筆にどんなソフトを使っているかとか。まあ、Wordのネタとかは出てきますが。

仮にアプリケーション名を挙げたところで、すぐに淘汰されてしまう(ドッグイヤー)運命ですから。私達自身がそこはさがしていくところでしょう。

最新の技術状況を踏まえつつ、外堀の埋め方をレクチャーしてくれます。
古典の読み方。紙の本と電子書籍の使い分け。等々。

フィールドワークのノウハウはまるでハンティングに行くよう。
で、シンプルイズベストですね。

日々身を削るように仕上げる執筆作業が目に浮かぶようです。膨大な資料を選択し、読破し、必要な部分を抽出し、作品に仕上げていく。産みの苦しみ。

そして脱稿した暁の爽快感・カタルシスは癖になると語っています。

私も掌編で良い(とはなんだ!)ので、創作チャレンジしてみようと思わせてくれる一冊です。

 

胃がん その9 腸閉塞発症


胃がんの術後、可能性として腸閉塞がおこることがありますと聞いていました。

胃切除術後に超同士が癒着しようとする現象らしい。

先日、お腹の具合も良いので、調子に乗って焼き鳥を食べに行きました。例の全国チェーンの280円の店。

よせば良いのに、やたらうまくてモリモリと。

そしたら、案の定、食後30分後くらいで猛烈な激痛が腹部を襲います。
ほんと、カミサマごめんなさい、申しませんと言ってみても後の祭りです。

お守りのようにもっているロキソニンも全然効かず、その夜を明かしました。

朝目覚めて、まだ痛みはあったのですが少し我慢をしていると楽になってきました。

いつものダンピング症候群と判断し、食後の薬をの怠ければならないので、軽くお粥を食べて服薬、

で、しばらくすると、また猛烈な痛みが襲ってきました。

この辺でようやく、いつもの痛みではないと思い、主治医のいる市立豊中病院に電話連絡して救急外来で診てもらうことにしました。

救急外来は専門外の若い医師が担当しているので、見た目に頼りない気は拭えませんが、それは仕方ない。
結果、この若い医師がGood Jobだったと思います。

前回、同様に救急で診てもらったときには問診触診だけだったのですが、状況を見て取り急ぎレントゲンとCTスキャンにまわしてくれました。

結果、腸が腫れているので緊急入院ということになり、その日の手術が終わった担当医も来てくれました。

腸閉塞もしくは腸閉塞のなりかけというのが見立てだったと思います。

まず、1週間ほど点滴を行って改善を見る。
それでもだめであれば手術を行う。

ということだったのですが、翌日もレントゲンとCTスキャンを撮って、予断を許さない状況と判断されたらしく、入院の翌日には手術と相成りました。

で、手術は一応成功したので、このような記録も書けてるわけです。

この腸閉塞は今後も発生する可能性があり、予防法もないとのことなのでげんなりですが、下手したら死ぬヤツなので、今回は良かったと思っておきます。

おかげで予定していたお風呂も旅行もキャンセルですけどね。仕方なし。

術後記録特別版でした。

映画レビュー:沈黙 サイレンス


沈黙 サイレンス
オフィシャルサイトより加工転載

沈黙 サイレンス ※ネタバレあるかも・・・

かなりヒットしているようです。

2週間ほど前に観ました。

その前に公開されると聞き、原作小説を読んでみました。

私の中学時代には、「どくとるマンボウ」派と「狐狸庵先生」派がいたように思います。

といっても、北杜夫については、中学生時分なので「白きたおやかな峰」や「楡家の人びと」などの純文学は手が届きませんでした。
読んでいたのは、もっぱらどくとるマンボウシリーズその他の滑稽小説。

狐狸庵先生・遠藤周作はネスカフェのCMの印象しかなく、映画化された「海と毒薬」などは気になっていたのですが、全く未読の状態でした。

で、今回始めて狐狸庵先生ではない、遠藤周作の代表作とも言うべき「沈黙」を読んで、打ちのめされたわけです。
はい、こんなに凄い小説家だったんだ。

隠れキリシタンへの迫害については、「青い空」などその他の作品に多数出てきます。

胸のムカつく所業の数々。

為政者にとって、「宗教」は諸刃の剣。コントロール不可能に陥れば、己と己の築きあるいは護るべき既得権が脅かされる存在です。

それは分かるのですが、ローマ皇帝ネロの時代から、なぜここまでキリスト教のみが迫害されるのでしょうか。迫害体質?
キリスト教同志の内紛もありましたが。

大体日本人の宗教観はファジーです。
神と仏をごちゃ混ぜにして、怪しまない。適当。
だからそれほど問題も起きない。
坊主がキャバクラに行っていようと、あまり咎める人もいない。

そこに一神教たる(シャレの通じない)キリスト教が入ってきたもんだから、当然のごとく排斥されるわけです。

この物語の舞台は長崎県。そして五島列島。

行ったことないけど、キリスト教徒の多い土地柄みたいですね。

寅さんが五島に行ったときも、教会が出てきたし。

この映画は原作を読んでから観たほうがいいやつだと思いました。

結構小説を忠実に再現しており、緻密な臭うような描写の原作を体験した方が映画がわかりやすいと思います。

迫害されて食うや食わずの日本人キリシタンは、メイクなどでリアルに汚している部分は多いのですが、なかでも凄いのが塚本晋也の大減量。
アメリカで栄養士についてもらって痩せたそうです。
監督の副業かとも思っていた塚本晋也ですが、俳優としても命削って挑んでます。
映画に掛ける情熱を考えればそれもむべなるかな。
最近、「シンゴジラ」といい、俳優として大活躍ですね。

主役はスパイダーマンのピーター・パーカーを演じたアンドリュー・ガーフィールド。マッチョじゃない派のハリウッドスター。

キーパーソンだけど、あまり出番のないのがリーアム・ニーソン。長い間日本にいて日本名もあるのに、日本語のセリフは一切なしというのもどうなのか。

ほぼ主役に近いポジションにキチジローという貧しい漁師(?)がいます。転びまくっている信者で、演じるのは窪塚洋介。

存在としては、鬼太郎のねずみ男にそっくりです。

原作を読んだイメージとしては、キチジローはもっと貧相で小柄なブ男かと思っていたので、窪塚洋介ってどうよと思ったのですが案外はまっていました。

一瞬しか映らない中村嘉葎雄。エンドロールでやっぱりそうだったかと確認。

それいるか?という帝王・高山善廣。

中村嘉葎雄にセリフがなく、一言だけとは言えセリフのあった高山。

しっかりとした俳優にはセリフがなくても演技をまかせられるということでしょうか。

当然ちゃあ当然なのですが、ヘンな日本描写はない。日本人スタッフの頑張りもすごい。

一箇所だけ気になったシーン。

ハリウッド映画で剣(特に日本刀)を鞘から抜く時。
刀同志を合わせる時はともかく、抜刀・納刀の際にも”シュリーン”という効果音が入ります。
明らかに金属同士がこすれる音。鞘は木製なので、そんな音がなるのはおかしい。
というか、多分無音でしょう。
どうしても効果音を入れたいのでしょうね。一箇所そんなシーンがありました。
・・・よ、マーティン。

アメリカも日本も出演俳優が凄く良いです。

二時間半、まったくダレずに観ることができました。

★★★★★