月別アーカイブ: 2013年1月

読書レビュー:週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編


最強コンビ結成!編

まったく、最強です。

全盛期のブロディ・ハンセン組くらい最強。

現在日本の「知」の代表選手である佐藤優をあえてバカボンパパのバカ田大学の後輩のように描いてるサイバラの「愛」もスゴイが、サイバラを疑うことのない「天才」とダイレクトに評している佐藤さんもスゴイ。

一つのお題を与えられ、右のページを佐藤優のエッセイ。右のページのサイバラの漫画という構成である。

当然、交互に読んでいくのだが、文章を書いているのが佐藤さんではなく、途中まで西原さんのような錯覚を覚えることがしばしばだった。

なぜなんだろう。

どっか、根っこの部分でつながってるということなのかな。

呉智英さん大好きなんだが、ひところ小林よしのりのシンパ的になってて(そんなことないのかも知れないが)ゲンナリしてました。

どうせつるむなら、サイバラとつるんでほしかった。

オソロしいことをさらっと書いてしまってる佐藤さんの文章。さすがのリアリティですんで、読んでみてください。

あと、双方ともスポーツ絡みのお題になるとお手上げで話を逸らしているのが親近感。

読書レビュー:王の闇 (文春文庫)


沢木耕太郎さんの本は初めて読みました。

「深夜特急」を読みたいなとは思ってたのですが。

本書を読んでみたきっかけはどこかで読んだ前溝 隆男さんのこと。

国際プロレスのレフェリーだった人です。

国際プロレスはかつて日本のプロレスが3つしか団体のなかったころのマイナー団体。

あまりテレビがつかず、ほとんど観ることができませんでした。

試合自体も近所に来た記憶がない。

ただ、昭和のプロレスファンは馬場派猪木派に分かれてはいても、決してないがしろにできない団体であります。

現在、ある意味プロレスラーの代表みたいに扱われているアニマル浜口も「国際」のレスラーでした。

あと、有名どころではラッシャー木村やストロング小林(金剛)も。

外国人では、カール・ゴッチ、アンドレ・ザ・ジャイアント、ビル・ロビンソンも国際のスター選手でした。

レフェリーも非常に濃い人達を揃えていたと思います。揃えていたわけではないでしょうが、結果的に個性的だったと。

その中にあっては、地味な存在として前溝隆夫さんの名前は記憶に残っていました。

でも、ほとんど忘れられた存在で、今ググってもほとんど情報は出て来ません。

ところが、実はスゴイ人なんですよね。

この人に、ほぼ唯一スポットライトを当てたのが、この中編集に入っている「ガリヴァー漂流」という一編。

もしかしたら、国際プロレスの中でも最もスゴイ経歴の持ち主かも知れません。

戦争中のトンガ王国に日本人とのハーフに生まれたのですが、外見的には縄文人の見本のようで、どこから見ても日本人です。

和歌山県で育ち、中学卒業と同時に大相撲に入門します。

割りと順調な番付の上がり方をするのですが、大した理由もなく若くして引退。

その後、ほとんど経験のないプロ野球に挑戦し、続いてプロボクサーになります。

大相撲力士からプロボクサー。

こんな経歴を持った人、日本のスポーツマンにいるでしょうか。

しかも、ボクシングでもかなりの強さを誇り、ミドル級の日本王者に上り詰めます。

「はじめの一歩」は前溝さんをモデルにしたのではないかと思うほど、気が優しかったようです。

もっと貪欲であれば、その当時の日本ボクシング界に力があれば、竹原慎二以前に世界ミドル級のチャンピオンになれたのかも知れません。

最終的には国際プロレスのレフェリーになるのですが、その時々のエピソードがかなり面白く描かれます。

そして、今回ボクは前溝隆夫さんを描いた小説であることを知っていたのですが、その名前がでてくるのは物語の半分を過ぎてからです。

ほとんど感情移入できないままここまで引っ張ってこれる力のある小説(モノローグ)ではあると思いました。

その他の作品としては最後の表題作「王の闇」。

ジョー・フレイジャーの没落した侘しさを彷彿とさせる佳作です。

「深夜特急・ボクサー編」という感じです。

街の中の樹


歩いていると樹になにか張り紙がありました。

道頓堀川の川沿いです。

こんな感じで
こんな感じで

自生しているんだから・・・自生でしょ。所有者ってなんちゅう上から?

自分で生きてるんだ。
アスファルトを押しのけて。

見えないけど、後ろのフェンスも呑み込んで生きてます。

撤去ってなによ。

せっかく生きてるのに。

頑張って生きてる
頑張って生きてる

そっとしておいてあげてよ。

ここに今更なにをしようというの。

※後から気づいたのですが、張り紙に小さく
「オニ」と書いてあります。

ボクと同じ気持の人がいたのね・・・。

読書レビュー:伊藤Pのモヤモヤ仕事術 (集英社新書)


ボクはあまりテレビを観ません。

多分、高校生を卒業したあたりからちゃんと観ていないと思います。

特にドラマ、連続しているのはほぼ分かりません。

もちろん、ヒット作はパロディになったり、主題歌が大ヒットしたりしてるので、タイトルくらいは分かります。

なんで観てないのか。観なくなったのか。分かりません。

確かなのは、観るだけの魅力を感じなかったからでしょう。それがドラマで連続してたりすると、そんな根気は全然ない。

劇場映画はそれなりに観ているので、観るとなればそれなりの気合は入れて観ます。

そうだ。

常に気合を入れて観るので、ボーっと観るということができないのでしょう。

そんな中、たまに観ている番組というのが、なぜかテレビ東京制作の番組ばかり。

なんでも鑑定団

アド街ック天国

ワールドビジネスサテライト

そして、

モヤモヤさま〜ず2

今、毎回観ているテレビ番組はこの「モヤさま」だけなのです。

これにハマっている。

さま〜ずの三村・大竹と大江アナウンサー。
モヤさまについて書くと、長くなるので割愛。

で、この「モヤさま」にたまに出てくるのが、番組プロデューサーである本書の著者「伊藤P」です。

ヤル気の感じられない(芸風の)さま〜ずに加えて、それに輪をかけて盛り上げる気の全く感じられない伊藤P。

熾烈なテレビ業界、しかも日曜日のゴールデンタイムにおいては考えられないこのテンション。

そんなわけないのですが、一切全く楽屋裏を感じさせないプロ意識が非常に非常に好ましい。

そしてまったり癒されつつ笑える。いや笑わされてしまう。

負けた感などまったくない、至福のときを過ごさせてくれます。

そんな伊藤Pが本出してるなんて知らなかったし、その「仕事術」って一体どんなだろうと、興味津々です。

本書も「モヤさま」と同じで全く奇を衒ったところはありません。

ほんとかよ。っていう感じのド直球。

まぁ、嘘はないんでしょうけどね。

テレビ東京や、伊藤プロデューサーの手がけた番組に興味がなければ、あまりおもしろい本ではないかもしれません。

かくいうボクも「モヤさま」以外は知らないわけで・・・。

伊藤Pの周りをとりまく人たちが、その人を評して、そのアンサーとして又、伊藤Pが書いていく。なんかそんな感じの構成のようです。

テレビ東京という万年最下位放送局なればこそ醸し出す、テレビの好ましいあり方・・・かな。

伊藤Pは伊藤Pのままで。同じ伊藤でも、間違ってもテリーの方向には行かないように願います。

大江アナは3人めのさま〜ずと言われていますが、どうも4人目が伊藤Pという感じがしますね。

読書レビュー:フレッド・ブラッシー自伝


最近はテレビのゴールデンからも消えて久しく、youtubeでみるくらいしかしていないプロレス。

ボクの最古のプロレスの記憶は・・・

日本プロレスのテレビ中継。

ブルート・バーナード、スカルマーフィ組対吉村道明、アントニオ猪木組だと思う。

薄ぼんやりとした記憶なので、バーナード以外は合ってるか自信はない。

試合は乱戦の中、間違ってブルートがマーフィをスリーパーにとらえて夢中で締め上げる。

と、途中でその禿頭(マーフィは全身無毛の怪奇レスラー、バーナードもスキンヘッド。ツルピカコンビ)の手触り・・・ツルツルの撫で上げ感で、オーバーに間違いに気付いてオノレのアタマを抱えるブルート。

マーフィは怒ってやり返すでもなく、腕を組んで膨れて戦いをボイコット。

会場は爆笑の渦と・・・。そのあたりが抜群にうまい!

ほとんど大阪プロレスの世界。

こんなのからプロレスファンになったんだから、ちょっとやそっとでは見捨てないよー( ゚∀゚ )

で、それ以前の大スターとして、ネームバリュー抜群なのが、このフレッド・ブラッシー。

今は極端にグロい路線に走っているプロレスもあるが、あれは頂けない。
プロレスの中の反則攻撃ではなく、プロレスの体裁を借りた残酷ショーだ。

これだけHIVや感染症の危険性が言われているのに、大丈夫なんでしょうかねぇ。

それはともかく、ブラッシーの噛みつき攻撃(もちろん反則ですが)って、冷静に考えるとすごいことですね。
相手に噛み付いて大流血させるなんて。
もっとも、本当に皮膚を噛み破ってるわけではないでしょうが。

まだ力道山の頃はプロレスがかなり純粋な競技であるという大方の認識だったわけで。

力道山のプロモーターとしての判断もかなりバクチだったんじゃないでしょうか。

このクラッシー・フレディー・ブラッシーというのは、ボクもリアルに知っているわけではなく、すでに、マネージャーに転身して、猪木vsアリ戦の時にアリ側についていた元レスラーでした。

あと、奥さんが日本人で、実は親日家だということ。

そして何よりもヒールではあるが、プロ中のプロであるという評判。

力道山が非業の死を遂げた時にも、哀悼の意を表さず「地獄で待ってろ!」と言い放ち、あまつさえ力道山は地獄ではなく天国にいますと言ったインタビュアーに、さらに「いや、奴は俺と同じ地獄行きさ!」と言い返したとか。もちろん馬鹿なんじゃなくて、その時の日本における力道山の重要性も十分に認識した上で、徹底的にヒールを演じたということ…は聞いていた。

客の比較的おとなしい日本だけでそうなのではなく、本書によるとやはりヒートアップしたアメリカの観客に刺されたりなどということは日常茶飯事だったらしい。
投げつけられた卵のせいで、実は片目は殆ど失明状態でもあったとのこと。

今ではさすがにないだろうが、ブラッシーより何世代も後のテリーゴディ辺りもカーニバルレスラーだったらしい。
そしてブラッシーもアスリートとは程遠い、そのような見世物小屋的な世界からの叩き上げだ。

本書はその辺りも詳細にしかしコンパクトにまとめ上げている。

しかも、ブラッシーはアメリカ人レスラーの中にあってはかなり小兵の部類に入る。

にもかかわらず、錚々たるシューターの名前も多く出てくるし、十分に渡り合ったのだろう。

自分以前に全米レスラーのアイコンであり、自分もその路線にあることを認めているゴージャス•ジョージを最大限に讃えてはいるが、ご存知の通りジョージには人間力ともいうべきものが大きく欠落しており、カール•ゴッチ、ビル•ミラーのセメントブラザーズにボコボコにしばかれてしまったりしている。

その点、ブラッシーは最終章のビンス•マクマホンの言葉によると、マクマホン•シニアからビンスがWWFの全権を移譲する際の条件の一つとして、クラッシー・フレディー・ブラッシーを生涯雇用し「ファイトマネー」を支払い続ける、というものだったらしい。

それほどWWFとアメリカプロレス界に大きな功績を残したということか。

あまり親しくはしたくないな〜というようなエピソードも多々あるのだが。

このちょっといい話的なオチの付け方が良い一冊ではあります。

本書のタイトルは、本場では有名なブラッシーの決まり文句です。