
90歳で主演した、ハリー・ディーン・スタントンは昨年亡くなりました。
昔、公開時観ようと思いつつ見逃した「パリ、テキサス」に出ていた人です。
サボテンだらけのアメリカの田舎町に住む主人公ラッキーは90歳の元海軍軍人。
毎朝起きてタバコに火を点け、牛乳とコーヒーを飲み、ちょっとだけヨガをする。
馴染みの店でクロスワードパズルをして、夜は禁煙のパブでブラッディメアリーを呑む。
それがルーティーン。
頑固で現実主義の唯物論者。なんだかとても親近感が湧く存在です。
なんか、ジーサンになるのも悪くないかなあと思わせてくれます。
そんなラッキーの友達を演じるのが映画監督のデヴィッド・リンチ。
エキセントリックな印象の強い監督ですが、「サイレント・ストーリー」で見せたようなホンワカした一面もあり、今回は演技者としてそれを見せてくれます。
ペットの亀に脱走されて、大泣きする紳士役。
くだんの亀もいい演技を披露してくれるのですが。
実はボクも一昨年15年以上飼った亀に逃げられてしまい、感情移入してしまいます。
そう、彼が言う通り、亀は100年生きるのですから!
それはともかく。
ラッキーはそんな愛すべき人たちに囲まれて、来し方行く末を思います。
結婚もせず天涯孤独で(多分)、悲惨な戦争も経験して来ました。
その上、無神論者の唯物論者。
齢はすでに90歳。
健康にも不安が出てきます。
でも、なぜかラッキーが羨ましくもある。
そんな映画です。
★★★★★