読書レビュー:暴力団 (新潮新書) 溝口敦


タブーに挑み続ける溝口敦さんの暴力団に関する最新刊且つ集大成であると自ら書いておられる。

確かにこの新書一冊で、実に多角的な「暴力団」の解説書になっていると思う。

さて、圧力に屈せず、沢山の告発をされてこられたノンフィクションライターである。

その一方、言わずもがなではあるが、多くの映画・漫画等の原作にもなっている。つまり、エンターテインメントであるし、それらはヒットし、多額の収入を原作者にもたらしているはずである。

本書のなかでも、暴力団廃絶を訴えている。にも拘らず、言い方は悪いがその暴力団が飯の種。このジレンマをどう解釈すれば良いのか、今のところ分からないが、この場では措いておきたい。

現実に五代目山口組組長渡辺芳則についての出版を強行した時には、その数カ月後に刺されたとのこと。

公に書かれていない駆け引きもあったのか、詳細はわからないが、命がけであることには違いない。

現在の暴対法・暴排法によって、従来の暴力団は弱体化し、羽振りの良さも格好良さもなくなり後進はほとんど育たなくなっているらしい。

変わって台頭してきたものが、組織力やかつての秩序をもたない小規模集団ギャングもしくは個人達で、筆者はそれらを「半グレ集団」と呼んでいます。

本書の要約をしても仕方がないので、端折りますが、暴対法・暴排法はそれなりに機能していると。

暴力団と呼ばれる犯罪者集団は早晩消滅するであろうと予測しています。

暴力団は「必要悪」と呼ばれることもありました。

実際、ボク個人は彼らは自身のシマを守るためではあるけれども、一種自警団的な機能もあるのではないか。中国マフィアや不良外国人に対する抑止力にはなっているのではないかと思っていました。

本書ではシチリアマフィア(マフィアというのはイタリアの犯罪集団ギャングのことではない)、香港マフィア、台湾・中国流氓(リュウマン)、南米のコカインカルテルなどの説明もされています。やはり怖いのは台湾と南米のようですね。中国は案外ヘタレらしい。いや、その方がいいけど。

で、それらが野放図に日本に入ってきた時に、暴力装置である警察が対応できるのか、という不安は抱いていました。

この件に関する明確な答えはなかったように思いますが、暴力団そのものが消滅しても、結構大丈夫だという見解は書かれています。

清水次郎長や幡随院長兵衛の昔から(もっと昔だけど)そういった治安のための公権力と密接に結びついてバランスをとっていたヤクザ〜暴力団の消滅がどういう日本を作り出すのか。本書を参考に考えていきたいと思います。

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