確かに。
在日コリアンには、ダブルスタンダードな生き方を選ばざるをえないのかもしれない。
本書の内容、自伝の部分は多少ドラマチックな切り方があるかも知れないけれど、赤裸々な葛藤の真実だと思います。
どうしても韓国人の気質として「火病」と言われるような、ヒステリックなイメージがつきまとう。
あながちステロタイプとも言えないように感じます。
一方姜尚中は、テレビでしか見たことはないけれど必要以上にトーンが低く、ウィスパーボイスとも言える、感情の起伏を見せない、常に論理的な語り口と佇まいです。
意識してそうしているのでしょうか。
この自伝の中では、秘めたるマグマのような静かな熱さを感じます。
事実、学生時代は運動家でもあったとのこと。
先ほどのダブルスタンダード、ネットなどでは「二枚舌」とも書かれています。
日本国内での本書のような発言と、韓国マスコミに向けた発言内容との差があまりにも激しすぎるせいでしょう。
しかし、テレビで美術・絵画の解説を穏やかにしている姜尚中が本来の彼であり、本人も望む自分自身であるような気がします。
だが現在、未だそれはつかの間のことであり、許されないことなのか。
在日の「作られ方」、生き方。
諦念にも似た、「在日とはなにか」をまとめた本かと思います。
好きなのですが、シンパシィは今ひとつ得られない。