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映画レビュー:新・仁義なき戦い


著者 :
東映ビデオ
発売日 : 2001-08-10
「仁義なき戦い」シリーズは大好きなので、何回も観ています。DVDのボックスを持っているので。

オリジナルの後に新シリーズがあり、そこまでは深作欣二が監督です。

その後「その後」が作られ、ここまでは70年代。

本作は阪本順治監督によって2000年に作られました。

時代は現代。

「その後の仁義なき戦い」からはコンテンポラリーな設定となります。

戦後すぐのカオスからなにより実話に基いているので、モデルになった人物や団体からのクレームなどもリアルにやばかったオリジナルシリーズとは、全く別物。

なんで「仁義なき戦い」の名を冠するのか。

ストーリーとしてのつながりなどもないのに。

2003年には現時点でのシリーズ(?)最終作「新仁義なき戦い 謀殺」が作られますが、本作とともに舞台は大阪。

ちょっと大阪から離れてほしい。東京じゃ陳腐になりがち?神戸も近いし、展開が楽なんでしょうか。

主演は奈良出身の豊川悦司なので、関西弁は無問題。

もう一人の主役、布袋寅泰もそれなり頑張ってます。

しかし、トヨエツ・布袋・親分に岸部一徳・トヨエツの相棒に松重豊って、全員アラウンド190センチ。巨人すぎ。

岩尾正隆・野口貴司・曽根晴美・志賀勝・福本清三といったオリジナルメンバーの起用は嬉し楽しいです。

オリジナルでは若くチンピラだった人たちが、本作では親分級になっているという。ファンサービスですかね。

本作のバックボーンとして、オリジナルではあまり描かれなかった在日コリアンの問題があります。

戦後の闇社会ではやはり避けて通れないものです。

「仁義なき」の人気を受けて作られたその他の映画。

「京阪神殺しの軍団」などでは、その辺りをメインフレームに据えて作られてます。

「アウトレイジ ビヨンド」でもイイカンジで生かされてましたね。たけし流韓流。

☆   ☆

豊川悦司。

ヤクザにはどうなんだろうと思ってましたが、やっぱ無理があるかな。

布袋寅泰の方が違和感ないですね。一応、ヤクザではない設定ですが。

これは役を入れ替わっても良かったように思います。

オリジナルの千葉真一と北大路欣也のように。

北大路欣也も育ちの良さが見え隠れしなくもないですが、個人的には結構好きです。

一方、豊川悦司は何をするにしてもスタイリッシュ過ぎて、違和感を感じます。

激高してもいまいち怖くない。

俳優としては好きなんですけどね。

もっと荒唐無稽なヒーロー(時代劇とか)ならば良かったのでしょうが、リアリティを要求されるこの手の映画と演出ではちょっと浮く。

一方布袋寅泰は持って生まれたナチュラルな目つきの悪さを遺憾なく発揮!

演技力はそこそこ及第点か。

特に印象に残る演技はありません。

☆   ☆

哀川翔・小沢仁志という当代きってのヤクザ俳優がバイプレイヤーとして出演しますが、分をわかっているというか、主役を食わないように控えめな演技という感じを受けます。
イケてるのが元ボクサーの大和武士。これまで演じたVシネとかの学芸会みたいな感じから何枚か剥けてます。

最近出ませんが、この手の映画には是非シーザー武志に出ていただきたいですね。「王将」とかではコメディリリーフ的でしたが、もう一度「ケンカの花道」の時の鬼気迫る演技が観てみたい。

☆   ☆

しかし、布袋寅泰のテーマ曲。すっかりキル・ビルのテーマ扱いされてます。タランティーノはこの映画自体はどう観たのでしょうか。

☆   ☆

阪本順治監督としては何がしたかったのか。「仁義なき」の名前を引き継いた以上、その疑問は残ります。

映画レビュー:イップ・マン 葉問


著者 :
Happinet(SB)(D)
発売日 : 2011-06-02
「イップ・マン 序章」の続編。

正編の方にサブタイトルが付いているというのは、息子の名前がありきのバカボンパパとかムーミンママみたいです。

「イップ・マン 序章」のレビューを読み返すと、記憶が蘇ります。
自分で続編観たくないと明記してますが、観てしまいました。

主演のドニー・イェンはやっと林与一に見えなくなってきましたね。

ネタバレさせると思いますが、はっきり言って、あまり影響ない映画だと思います。

日本では80年代までのプロットかと思います。

もちろん、最近の日本映画でおバカな内容のものは沢山ありますが、これだけ大上段に振りかぶって制作することはできないでしょう。

ネタバレ嫌やな人はここから先読まないほうがいいです。

☆   ☆

一言で書くと「ロッキー2」です。

ライバルのサモハン(アポロ)が敵役の試合で殴り殺され、その復讐をするドニー・イェン(ロッキー)。

敵役がイギリスのボクシングチャンピオンで、試合はボクシングリングで行われるので、より一層既視感が・・・。

☆   ☆

前作では敵役は大日本帝国でした。

今回は大英帝国です。

前半では「日)本人め!!」
後半は「西洋人め!!」の連呼。

物凄くダイレクトです。わかりやすい。さすが世界の中心の国。

前作通り、カメラワークやフィルターの使い方、効果がアメリカ映画の影響を強く受けています。

なので、白人だけが映るシーンなどはほとんどハリウッド映画みたい。

セットなどが物凄く緻密で、フィルターのダークな感じがより一層そのリアル感を盛り上げます。その反面、格闘シーンの香港ノリがちょっと説得力に欠けます。

最後は完全にロッキー。観ててちょっとこっぱずかしいです。

☆   ☆

前作から引き続き、イップ・マン@ドニー・イェンが完全無欠の良い人なんですが、あちらではそういう扱いなんでしょうか。

劇中傲岸不遜なボクシングチャンピオンに対するドニーのセリフ。

「中国人は謙虚を美徳とするのだ。」

それはまあ、儒教の思想に基づけばそうなんでしょうが。

最近の中国の報道を見ていると、彼の国が儒教発祥の地であることを忘れてしまいます。
もちろん、面白半分の報道も多々あるので、鵜呑みにするわけではありませんが、自分の少ない中国人との関係により感じたことも併せると・・・。

これもまた説得力のなさすぎなセリフです。

しかし、そういう価値観を認める国民性であるからこそのシナリオでありセリフなんでしょうから、さらにわからなくなります。

香港映画ですが、中国本土でも公開されているでしょうし。

ヒットしたので、もう一本作られています。

スターウォーズシリーズに倣って、遡るパターン。

イップ・マンの若い時らしい。「イップ・マン 誕生」

なので、ドニーは降りています。

☆   ☆

はっきり言って、ストーリーそのものは陳腐この上ありません。

しかしまじめに丁寧に作っているので、十分鑑賞には耐えうると思います。

それと、最後の最後でちょっとしたサプライズ。

ファンならばひと目で誰か分かります。

映画レビュー:アウトレイジ・ビヨンド


著者 :
バンダイビジュアル
発売日 : 2013-04-12
前作「アウトレイジ」は映画館で鑑賞できたのですが、今回は観られなかったので、遅ればせながら。

今回は関東対関西。というか、大阪だそうです。配役が豪華です。

関西の組の名前が「花菱組」というので、てっきり神戸かと思ってたんですが、そうではないようで。

その関西チームの主要メンバーが、会長に神山繁・若頭に西田敏行・幹部に塩見三省。

塩見三省のみ京都府出身なのですが、思いの外関西弁が?でした。

西田敏行も長年「探偵局長」をやってるんですが、やはり関西弁はちょっとアレかと感じました。

神山繁(ずっと「かみやま」と思ってましたが「こうやま」なんですね)は、とりあえず高齢(83)なのにすばらしいです。関西弁はともかく。

「仁義なき」では三代目役の丹波哲郎の関西弁もひどかったですからね。

いろいろと思惑はあったでしょうが、北野映画の常連で関西ベースといえば、大杉漣・岸部一徳・國村隼とかいっぱいいるのですが。

國村隼は前作で死んでますが、そこは「仁義」魂で気にせず復活させるとか。松方・北大路・梅宮ばりに。

関西弁については昔は東映京都が元気いっぱいで、主役級が撮影所近辺に沢山住んで悪いことばっかりしてたみたいで、自然とピロートークで関西弁もうまくなったのでしょう。

それはともかく、やっぱそりゃ日本映画の金字塔「仁義なき戦い」とは比較してしまいますよね。ボクはそういう比較はキライなんですが、こればかりはどうしても。

この映画「A・B」も非常に良かったのですが、さりとて、何回も観直せるかと言われると(´ε`;)ウーン…です。

「仁義なき」みたいにシリーズをボックスで買ってヘビロテするようなことはできない。

好きなもの同士、セリフを覚えてそれで会話するてなこともできない。まぁ、それはちょっと病気ですが。

☆   ☆

昔の映画やテレビドラマはピストルの音と言えば「ズキューン」「バキューン」でしたわね。

なんかウェットで、アイドルがハートを撃ちぬかれてもズキューンでした。

最近はアメリカに習っているのか、「パン」とか「バン」とかですね。「バーン」でも「バンッ!」でもなく。

ドライでソリッドでよりリアル(なのかどうか知りませんが)に。

拳銃のコワさを強調してていいのではないでしょうか。

それに加えて、本作では特に大型のオートマチックなので、アスファルトに落ちてはじける薬莢の音がさらにリアル。

下が砂地でリボルバーの西部劇ではこうはならない。

先述したように、銃がでかい。アメリカンサイズなんでしょうか。かなり殺傷力ありそうです。

その銃をカッコよく使ってけしからんのが、高橋克典の殺し屋。

最初似てるなーと思ってたら、やっぱり本人でした。

この銃のコワさは「仁義なき」を凌駕しています。

☆   ☆

監督に気に入られているのかどうなのか、今回、中野英雄が大活躍します。前作では結構ひどい扱いでしたが。

で、たけしがちょっと格好良い鶴田浩二路線ていうか。

☆   ☆

これだけは書いておきたいのが、監督の人の使い方の妙。

関東(山王会)・関西(花菱組)のどちらも手が出せない大物フィクサーとして登場する在日コリアンのラスボスチックな方。

白龍を従えて、物静かにたけしの面倒をみるのですが、迫力が半端じゃない。

たけしの引き立てる演技もうまいのですが、マジで怖い。

誰これ???とずっと気になって仕方がない。

ドン・コルレオーネよりリアルに怖いです。

あとで調べましたが、北野監督の個人的な知人で実業家の素人さんらしいです。

ほんとに感心しました。そこそこセリフはあるのですが、素人なのかどうなのか判別のつきにくい素の迫力というか。

前作の北村総一朗の大親分もかすみます。

あんまり使えない反則ギリギリだとは思いますけど。

☆   ☆

前作のレビューで、たけしがはじけるには年齢的につらい、と書いた記憶があります。

やはり本人もそう思っているのでしょうか。今回は引退したがります。

しかし、もし三作目があるならば今度は関東対広島でどうでしょう。

まあ、登場人物あらかた死んじゃったけどね。

映画レビュー:009 RE:CYBORG


著者 :
バップ
発売日 : 2013-05-21
アニメというのをあまり観ないので、そのレビューもどう書いていいのか。

本や映画の備忘録として書いてるので、書ける範囲で。

「攻殻機動隊」とかの監督らしいんですが、それも知らないし。

もちろん009は知ってる。

「009」のいろいろな前提があって、再結集というお話なんですが、例えば海外に持っていった場合、通じるのかな。

もしかしたら、ボクなんかより海外の好事家の方が余程詳しかったりするんだろうか。

最初は♪赤いマフラー だったんですが、いつのまにか黄色いマフラーになっちゃって、それが定着してるようですね。

一言で言うと、またもやボクの「トレーラーを越える本編は存在しない」理論が証明されたかな、という感じです。

何を書いてもネタバレすぎるので、難しい。

確実に観客として子供は対象外です。

難しすぎるよ。

ラストも結局なに?

ミルチア・エリアーデまで引き合いにだして何なのよ、その哲学っぽい展開は。

せめて9人揃えてよ。トレーラーでは揃ってたやん。

004アルベルト・ハインリヒの格好良さだけは、トレーラーどおり。

あまり長くなかったから何とか観終わったけど、自分としては頑張りました。

CGIも超絶こだわりのアニメーションも凄いとは思いますが、そちらに依存しすぎじゃないですか。

映画レビュー:色ごと師春団治


この掛け合いが小気味よい
この掛け合いが小気味よい

何度か松竹新喜劇の舞台で観ています。

この映画と同じく藤山寛美主演で。

上方落語の爆笑王・横紙破りとして有名な初代桂春団治の物語。しかし、実は初代ではなく、二代目なのですが、その名を大看板にしたということで、初代といわれているらしいです。

当代は三代目ですね。
初代とは逆の端正で上品な芸で、かなり好きな落語家さんです。

知らなかったのですが、この原作は本作よりも前に森繁久彌主演で映画化されているようです。こちらも観てみたい。

☆   ☆

さて、岡千秋と都はるみの大ヒットデュエットでも知られる通りの「芸人バカ一代」記

どこまでが史実かは知りませんが。春団治の元祖だめんず物語(w。

劇中には小文枝・染丸など、代替わりをして実在する落語家が出てくるのでややこしいです。

映画冒頭のキャストには《藤山寛美 松竹新喜劇》と書かれているので、追い出される前でしょう。
しかし、松竹勢は出ていないような感じです。

東映専属俳優と吉本新喜劇の俳優がワキを固めます。

藤山直美によると寛美は吉本新喜劇が大好きで、自宅ではモノマネまでしていたそうなので、寛美自身の御名指しかもしれませんね。

藤山寛美と平参平のからみというのも貴重かと思います。

☆   ☆

このお芝居は春団治とお抱え車夫の掛け合い(友情)がかなり見せ場になっています。

舞台では千葉蝶三郎の車夫が有名かもしれません。

ボクの年代では現在もテレビ・映画でも活躍している曾我廼家文童の車夫役が記憶にあります。

春団治とは主従関係で気の弱い役どころですが、この映画では一昨年亡くなった長門裕之が演じています。

いい男ですね。二枚目だ。

春団治の最初のヨメはん役が長門裕之の奥さん南田洋子なので、微妙な空気です。実際は長門裕之自身がだめんずだったようで。

長門裕之演じる「リキ」は春団治に対してはすごく従順なのですが、それは男として認めて惚れているからであって、立場は全くの互角です。

ヘタしたら春団治に手を上げます。

観ていて思ったのですが、どうもデフォルトでアクの強い春団治役の寛美がそれほど目立たないのですね。

途中まで長門裕之の「リキ」が持って行ってます。

シャイなお芝居がホントにかっこいいです。

☆   ☆

ご両人
ご両人

生誕百年の織田作之助原作で辰巳柳太郎主演の名画「わが町」でも、明るく可憐な大阪娘を演じていた南田洋子ですが、本作では一皮むけた姉(ねえ)さんを演じています。

で、可憐さは初々しい富司純子が担当。

田中春男の劇場主ははまり役。ほんと、この人ミスター大阪ですね。若い時の写真を見るとめっちゃ男前なんですけど。今回、役名「エビス」なので大きな耳たぶをつけてます。

東映京都作品なので、ネイティブ俳優には事欠かない。

京都に住んでいる富司純子のご近所さんのおかみさんは一言だけのセリフですが、微妙に京都弁。

あと、遠藤太津朗・山城新伍の京都勢もイイカンジです。

☆   ☆

しかし。

結果、このストーリーってこんなにひどかったかな、という印象です。

もお、クズとしか言い様がない。

遊びは芸の肥やしとは言いますが、やってることがちょっとひどすぎて看過できません。
それを諌めるのが長門裕之の「リキ」でラストはあの有名なシーンなのですが、全然バチが当たったとかないし。

それなりに幸せな一生で、周りの女子供が辛酸を舐めまくる。

「憎めない」的な感想の人もいるみたいですが、結構シャレにならない所業ですよ。

どうも、釈然としませんね。

それとラストシーン。

上記のように舞台と一緒。

演出が舞台用そのままなのですが、もう少し映画用に練った方が良かったように思います。

映画レビュー:SUCK


著者 :
発売元:CURIOUSCOPE/販売代理:アルドゥール
発売日 : 2011-03-22
SUCK:吸う。もしくはサイテー。

Iggy Popが出演してます。なので観ました。
Iggyの曲もバッチリ使われてました。「Success」
ヤツがくたばった後に w

あとAlice Cooperも出てました。違和感なさすぎで。

ROCKとVampireはなんでこう親和性が高いのでしょうか。

☆   ☆

いかにもよくあるフィジカル弱そうな売れないバンドが、吸血鬼に魂を売ることによってビッグになっちゃう。

けど、やっぱり吸血鬼は吸血鬼なんで、いろいろと不都合があるという、特に目新しいものはない大筋です。

Vampireは「吸血鬼」というよりは「食人鬼」に近いですね。

リアルなバラバラ死体が出てくるかとおもいきや、バンドのメンバーみんなでグルーピーの女の子を食べるシーンは食べるふりだけとか、こだわりがよくわかりません。

別にグロ映画でもホラーでもないんで、結構笑って観られました。

うん、かなり面白い。楽しめます。

いろんなロックがらみのパロディも出てきますし。

☆   ☆

吸血鬼と言えば、天敵ヘルシング教授。

今回演じるのはマルコム・マクダウェル。

「時計じかけのオレンジ」というよりは、自分にとっては「カリギュラ」がトラウマです。

シブい爺さんでかっこいい。

☆   ☆

日本に置き換えても出来る映画なんですが、さて、ここに出てもらえる大御所のロックスターは・・・と考えると、思いつかないんですよねえ。

多分、ジョー山中とか桑名正博とかなんでしょうけど、あっちがわに行っちゃってるからなあ。

映画レビュー:強盗放火殺人囚


著者 :
東映ビデオ
発売日 : 1988-04-08
しかし、このタイトルはもうちょっと何とかならなかったのでしょうか。

「強盗」で「放火」で「殺人」の「囚人」です。

ただの人間のクズでしかないですよね。

こんな映画の主役なんか誰がやる?

はい、松方弘樹です w

松方弘樹主演の東映脱獄路線(そんなのがあるかどうか知りませんが)。

『脱獄広島殺人囚』 『暴動島根刑務所』に続く3作目です。

前二作と較べても、無駄にキャスティングが豪華な気がします。

演技陣を書き出すだけでもお腹いっぱいになります。

その分、ストーリーの迷走ぶりがスゴイ。

これぞ70年代東映プログラムピクチャの醍醐味!

☆ ☆

今はカタギになり、飲食店をやっていたのですが、何の間違いか刑務所に入ってしまった松方弘樹。

シャバでは異常に色っぽくてキレイな妻ジャネット八田が待っています。

模範囚なので、仮釈放の内定が入り、それを面会にきたジャネットと楽しそうに語らう松方。

その隣ではなぜか聾唖者の囚人@蓑和田良太と手話で面会しているこれまた聾唖者の志賀勝。

必要なのか?このシチュエーションは?

その手話を見て、看守@小島三児が「規則だから、筆談しなさい!」って、ギャグっぽいんですが。

その他にも放送禁止用語満載なので、DVD化は難しいかも知れません。その前にニーズがないかも。

このようにこの3作目は前作と比較してかなりコメディ要素が高いです。

まあ、コメディというよりは正確に言うと単発ギャグなんですが。

演者の濃さと、シリアス(?)とギャグの波状攻撃が作品をより一層カオスな状態に発酵させていきます。

☆  ☆

もうすぐ仮釈放なのですが、仲間に頼まれた松方弘樹は刑務所内で印刷されている、難関医学大学の入試問題(゜o゜; を塀の外へと投げ出します。

拾ったのは、その問題の横流しで大儲けを企むヤクザ。

松方弘樹にそれを依頼する仲間というのは、上記ヤクザの内通者:岩尾正隆。

なんというか、囚人の中でもいじめ役とか特に悪い囚人演らせたら、世界中で右に出る人はいませんね。岩尾さん。

☆  ☆

特にこの辺りの映画前半に出てくる俳優陣が”特濃”です。

松方弘樹の周りにいるのが、殿山泰司・石橋蓮司・前田吟・川谷拓三・・・

前田吟は初っ端から印刷機を操作してるので、どうしても違う映画シリーズを連想してしまう。しかも、川谷拓三と義兄弟の在日コリアンという設定。呼び名は当然の如く「アリラン」拓ボンと二人で朝鮮語でのやり取りを頑張ってますが、どう聞いても朝鮮語には聞こえない。残念。

そしてさらにスゴイのが看守や所長の皆さん。

小松方正・菅貫太郎・沼田曜一・西田良・阿波地大輔・・・

しかもこの人達(前3人)がほとんど端役扱い。

菅貫太郎だけはヒットラーそっくりの謎なメイクで頑張ります。いわゆる怪演(ノリノリ)。

松方弘樹を拷問するからヒットラーなのかな。

一方、小松方正が珍しくおとなしい淡々としたセリフ。

沼田曜一に至っては、セリフが二言三言のみで、本日閉店。

なんか、たまたまスタジオに遊びに来てたのか?みたいな感じです。

かえっていつもはインパクトだけであまり目立たない西田良・阿波地大輔が大活躍。

ほんとにこれだけでお好きな人は大満足でしょう。

☆  ☆

さて、仮釈放で松方弘樹に出所されては、極悪アルバイトに支障が出て困る岩尾正隆は、裏から手を回して、出られなくします。

それが分かってキレた松方弘樹は岩尾正隆をボコる。

さらにその仕返しをするために岩尾が懐柔したのが、「怪物」然とした・・・

はい、満を持して若山富三郎登場。

前科何犯かわからないけど、ほぼ一生出られないであろう、漫画のような化け物囚人。

大好物の酒一杯で松方を殺しそうになり、二人で別の刑務所に移送されます。

それを襲撃したのが、試験問題横流し黒幕:遠藤太津朗の配下。

辛くもその襲撃を逃れた二人ですが、なぜか急に男の友情が強く芽生えます。

「夜の大捜査線」のような、葛藤の描写とか一切なし。

東映的ご都合主義で、若山先生もさっきまでの怪物ぶりから一転して、いつもの憎めない島村清吉や熊虎親分になってしまいます。

☆  ☆

なんせ、ほとんどヤクザと警察関係と被害者しか出てこない、条件の限定されたお芝居です。

それから、もうこれでもかというくらいの場面転換があり、着地点が見えないままラストに向かって行きます。

好きな人や深夜の3本立てで寝たい人には良いでしょうが、普通の観客は多分置いて行かれるでしょう。

☆  ☆

印象に残ったシーン。

◎エロ&バイオレンス

お色気担当はジャネット八田・春川ますみ、あともう一人、遠藤太津朗の娘・森田めぐみ(知らない)

松方弘樹がハッスルハッスル!

正司照枝も出てますが、もちろん、お色気は担当してない。

◎遠藤太津朗の名演

松方弘樹に娘を人質にとられた遠藤太津朗が、その脅迫電話で流す脂汗。

ウソみたいに途中からダラダラ流します。これが演技だとしたら凄いです。四六のガマです。さすが遠藤太津朗!

◎念願の柔道対決

警察官の宴席に暴れこんだ若山先生。警官とは知らず、酒肴を蹴倒します。

上座でご機嫌だったのが、大前均。

若山先生vs大前均。有りそうでなかったマッチメイク。

両者ともにガチで柔道有段者。

さすがにゴツい若山先生も大前均と対峙すると分が悪い。

登場時の怪物性が消え失せてる若山先生は、ストーリー上、大前均の腰投げ二発で松方弘樹がタオル投入。

実際は大前均はびびってたんじゃないかなあと想像されます。

でも、いいもん観られました( ゚∀゚ )

☆  ☆

最後はまあ、東映らしい終わり方。

最後に松方弘樹がジャネット八田に「女には一生わからんわい!」と言い捨てますが。

いや、男でも分かりません。かなり特殊な価値観だと思います。

映画レビュー:新 仁義なき戦い 組長最後の日


著者 :
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
発売日 : 2013-05-31

かなり前に観たけど、再度観てみました。

いろいろと思いだします。

新・仁義なき戦いの前作と今作は本編の広島から舞台あ九州に変わります。

東映の意向で無理やり作った感もなきにしもあらずですが、この最終話は監督の深作欣二と菅原文太が本当に作りたかった映画らしい。

全体的にユルい感じもしますが、よくできていると思います。

九州・筑豊側がメインで、主人公の菅原文太がこちらです。そして、バトルの構図とししては神戸対福岡です。

そうなんですが、神戸の組長を(モデルの親分は今年生誕100年らしい)殺(と)るのがキモなので、舞台は関西が多くなります。

筑豊の親分組合「七人会」の一人、多々良純から全幅の信頼を得ているのが若頭:菅原文太。

そしてその妹の亭主(つまり義弟)である和田浩治が大阪に流れてくるので、そのカラミもあります。

和田浩治は「仁義なき」準主役の渡瀬恒彦に見た目ちょっと似てる感じなんですが、いかんせん迫力不足の感は否めません。比べる相手が悪いw。

ここは渡瀬でいってほしかった。

☆ ☆

何と言っても本作での白眉は和田浩治の親分、藤岡琢也とチンピラ桜木健一のリアルネイティブ関西弁。

桜木健一は前シリーズでもイイカンジではじけていましたが、今回はより一層アイドルからの脱皮を図っているようです。

どチンピラなんですが、このセリフ回しはネイティブでないとムリです。

ここに書き写すことも無意味でしょう。ていうか、できません。

それを上回るのが藤岡琢也のハジケっぷり。

やたら怒号するだけのアウトレイジがギャグに見えてきます。

「堂に入った」という表現がぴったりでしょう。

この人、じゃりン子チエの「堅気屋」の社長を見る度に藤岡琢也を思い出します。

どちらかというと、おっとりしたイメージの役柄が多いだけに、そのギャップが面白い。

ちくのうを患ってて、しょっちゅう点鼻薬をシュコシュコやってる役作りとか誠に秀逸。

打算計算の近代ヤクザばかりの中で、見事にアブナイキレっキレ武闘派ヤクザを演じています。

これもネイティブしか演じ得ないセリフ回し。

☆ ☆

郷鍈治の元韓国軍人の殺し屋が無意味にカッコイイ。

けど、結構間抜けで、結果大変なことになっちゃうんですが。

あと、梅津栄の聾唖ヤクザ。

こういう役を演らせたら天下一品。

何気ない役なんですが、映画に深みをもたせるというか。

任侠映画にもよくあるような設定です。

☆ ☆

この映画自体、パーツパーツにモデルはありますが、ストーリーとしては実録とは言えません。

ラストの伊丹空港での立ち回りも、無許可のゲリラ撮影なんだろうなあ。めっちゃ迷惑。

映画レビュー:「のぼうの城」


著者 :
Happinet(SB)(D)
発売日 : 2013-05-01
原作を読んで、その面白さに映画公開を待ち望んでいた矢先に東日本大震災が起こり、そのカタストロフィ描写(物語の舞台、忍城に対する大規模な水攻め)のあまりの相似性に公開延期になり、見そこねていた映画です。

件の一連のシーンは、福島から遠く離れた関西に住む自分でさえ、胸の苦しくなるリアルな映像でした。

今回DVDで鑑賞しましたが、失敗です。これはやはり映画館の大画面で観るべきです。少なくとも初回は。

2時間半に近い長さですが、まったく冗長さは感じさせません。原作の良さを活かしたテンポの良さ。

ストーリー展開も知っているのに、引きこまれます。

しかし、原作にはないエグい戦闘シーンもあるので、子供は大丈夫かなという感じもしないでもない。

よく似たシーンは「もののけ姫」でもありましたが。

☆  ☆

さて、圧倒的な不利な状況での戦い・・・ということでは、思い起こすのが「300 スリーハンドレッド」。

どちらも史実なので、パクリ的なものはない。

まもなく続編も公開されるようですが。

「300」と比較しても、負けていません。

いや、勝っています。独断で。

「300」は『どうよ、このCGI≒CG、スゴイでしょ!』的な感じなのですが、「のぼう」はどこまでがCG?という感じ。

理想の特殊撮影です。

最近は、どこからがCGなんだ?と、つい無意識に観てしまう悪い癖がついていますが、途中からその作業が無意味なことに気付き、意識しなくなってきます。

スケールがすごい。

これが冒頭に書いた大スクリーン所望という理由です。

☆  ☆

原作では、のぼう様はウドの大木を絵に描いたような大男ということになっています。

映画ではご存知野村萬斎。

結果的に大成功のキャスティングでしょう。

エンタテインメントに徹しているので、野村萬斎の狂言舞台で鍛えた発声とオーバーアクトがピタリとはまっています。

あと、変にプロレスラーとか使わない、ぐっさんの豪傑:和泉守もケレン味たっぷりで好感度大。

佐藤浩市は渋過ぎのはまり役。

主役級三人組が好演してます。

敵組?と言っていいか。

石田三成の上地雄輔も予想以上の出来栄え。いい男ですね。

原作が先か、映画が先か。

基本、ボクは原作を最初にやっつけたい派なんですが、この作品に関してはどちらでも良いと思います。

昨今、ブラック企業が問題になっていますが(参院選にもねぇ)、人を動かすということがどういうことなのか。

この映画を観て欲しいです。

あと、やはり日本は田んぼだよ。なんだかんだ言っても。TPPも慎重に。

映画レビュー:実録外伝 大阪電撃作戦(1976)


著者 :
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
発売日 : 2010-12-03
何を観ようかなあと探してると、あ、これは。

「京阪神殺しの軍団」はむかーしに観た記憶があるけど、これ観たっけ?

多分観てないお思うのでチョイスしました。

『実録外伝 大阪電撃作戦』

いきなり、大阪市大正区から始まります。

ケンミンショーでなくとも、映画などで大阪を描く場合、象徴として中央区(道頓堀)とか浪速区(通天閣)をとりあえずもってくるんですが、そうでないところがリアル。ちょーリアル(w

といっても実録なので、モデルの抗争事件があったのだから仕方がない。

前編、大阪とその近辺が出てくるので、ジモティは楽しさ倍増です。

実際その地に住んでる人たちはたまらんかったでしょうが。

監督は中島貞夫。

いい仕事してますねえ。

「仁義なき戦い」から始まる実録路線を、他の監督たちもその路線を踏襲しています。

その中の佳作。

エグさグロさでは「仁義」を凌駕してます。

「アウトレイジ」と比べても、エグい。

「アウトレイジ」の取ってつけたような真性サド的な暴力ではなくて、身の回りのもので効果的に生理的に嫌なことをしてる感じで。゚(゚´Д`゚)゚。

なんか、まだ「アウトレイジ」の方に品を感じてしまいます。

☆☆

で、「仁義なき—」の俳優達が総出演。

出てないのは、菅原文太・金子信雄・千葉真一・北大路欣也とか。

今回の主役は松方弘樹です。

そして、(個人的に)目玉は松方・目黒の兄弟共演。

目黒祐樹が思いの外素晴らしい!

片目を白濁させて兄を食うくらいの迫力を見せています。

そしてラストでは待望の兄弟対決。

同じくらい特筆すべきは渡瀬恒彦のハジケっぷりキレっぷり。

東映ステゴロNo.1とか言われますが、単にアブナイ人だったんじゃないの?という感じです。

兄・渡哲也を常に意識して、しかし俳優としては越えられない。

そんな鬱屈したエネルギーが、そうさせるのでしょうか。こちらも又、兄弟の見えない対決か。

☆☆

ピラニア軍団その他大部屋の皆さん。

東映常連のヤクザなみなさん、総出演。

特に、志賀勝の髪型が秀逸!これは文章にしても伝わらない何かがあります。

モデルがいたのでしょうか。なんか病気の犬(病犬=やまいぬ)的なわけわからんコワさを醸し出しています。

我らが福本先生も大活躍。無口な目黒祐樹よりセリフが多いw。

その上、渡瀬恒彦をボッコンボッコンの半殺しにしています。

☆☆

今回は「仁義なき—」でいうところの山守さんの役を、これまた常連の小心者:織本順吉が同じ山守カラーで演じています。

田岡組長(モデル)はもちろん丹波哲郎。

丹波さんは多分、これらの一連の映画をほとんど自分でも区別できてないでしょうね。

そしてしびれる敵役(ていうか全員ワルですが)に成田三樹夫。ミッキーファンは堪能できます。

当然ですが、大阪・神戸が舞台なので、ほぼ全員関西弁です。

そつなくこなす小林旭は山健役で、相変わらずの貫禄。

丹波哲郎は相変わらず関西弁ヘタですが。

「アウトレイジ」のコピーが「全員悪人」でしたが、それをいうなら、こちらでしょう。

全く誰にも感情移入できない、清々しいまでに悪というかクズを描いた、ある意味暴力団排除的意味合いの強い内容かと思います。

でも、楽しいんですよね〜。なんででしょう。